2017年5月30日火曜日

室内楽の傑作 ブラームスとドヴォルザークのピアノ五重奏曲


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こんにちは、MUCHOJIです。
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2017年5月14日

室内楽の傑作
ブラームスとドヴォルザークのピアノ五重奏曲
@コシチュシコ・ファンデーション 
The Kosciuszko Foundation 


久しぶりにコシチュシコ・ファンデーションで
リサイタルを聴きました。

East 65th Streetにあるコシチュシュコ・ファンデーションは、
ポーランド・リトアニア共和国の将軍にして政治家、
アメリカ合衆国の軍人で、
1794年の蜂起の指導者として
ポーランドとリトアニアでは国民的英雄だったという、
タデウシュ・コシチュシュコの名前を冠した協会。 


いかにも19世紀的なサロン風のホールで、
壁には主にポーランドの作家たちによる絵画が
ところ狭しと並び 美術館かギャラリーのようです。


写真は弦楽四重奏の公演時のもの。

本日はブラームスとドヴォルザークの
ピアノ五重奏の傑作2曲。
ニューヨークの若手演奏家たちによる演奏です。 

演奏者は若手とはいっても、プログラムは、
ブラームスのピアノ五重奏曲 作品34、
ドヴォルザークのピアノ五重奏曲 作品81と、
どちらも途方もない大作。

それをなんと無料で聴けるのです。



前半はブラームスのピアノ五重奏曲 作品34。

29歳のときに弦楽五重奏曲として構想したものの、
友人のヴァイオリニスト ヨーゼフ・ヨアヒムの
「男性的な力と活気に満ちているが・・・
しかし演奏は難しく、 弦楽五重奏では響きが不明瞭になってしまう」
という意見を受けて、2台のピアノソナタに改作。 

しかし、それを聴いたクララ・シューマンから今度は、
「作品の内容は素晴らしいけれども、
ピアノだけでは表現しきれない」
と言われてしまいます。

最終的に弦楽器とピアノの両方の良さを持つ
ピアノ五重奏として完成した
というエピソードを持っています。

ピアノ五重奏として初演されたのは、
構想から6年。 

それにしても、
どういう楽器で演奏するかが決まらないままに
音楽の構想だけがブラームスの頭に存在していた、
と考えるととても面白いです。



後半は、ドヴォルザークのピアノ五重奏曲 作品81。
第2楽章には「ドゥムカ」、
第3楽章には「フリアント」の名称がつけられていて、
どちらもスラヴ・ウクライナの民族舞曲に由来。

民族色溢れる曲を聴くと、
いつもドヴォルザークの
育った環境が思い浮かびます。

肉屋兼宿屋の息子に生まれ、
幼い頃から音楽好きの家族と
各地から訪れる旅人たちが歌う民謡に
囲まれて育ったドヴォルザーク。

室内楽にそうした民謡が入るのも、
室内楽にひときわ彼らしさが溢れているのも
そうした幼い頃の環境によるのでは、
と思わずにはいられません。

有名な第2楽章はこの作品の白眉といえるでしょう。
メランコリックな部分と情熱的な部分の交錯、
静と動の対比が秀逸。

ただしドヴォルザークは
本来の民族舞曲のドゥムカの特徴を
正確に用いているわけではなく、
むしろチェコ語で「瞑想」を意味する
ドゥムカを念頭に置いていたと言われています。



本日の演奏は、
知り合いのポーランド人ピアニスト
Malgorzata Goroszewskaさんと
彼女の演奏仲間によるもの。

ポーランド語の発音が難しいので
ガーシャと呼ばれていますが、
彼女はルノワールとかミュシャの絵から
飛び出してきたようなスラブ系色白美人。 
ショパンを彷彿とさせる 憂いを帯びた表情で
ピアノを弾く様子は絵のようです。

19世紀のサロンはこんな感じだったのかな
と親密な雰囲気を楽しみながら聴きました。
終演後は音楽でお腹いっぱい。



いろんなところで幾度となく書いていますが、
若い人の真剣な演奏を聴くのは大好きです。

ひたむきに音楽に向かう姿勢に惹かれるのはもちろん...
将来大きくなった彼らの演奏を聴いて、
「ああ、昔、あの人の若い頃の演奏を聴いたよ。」
と振り返る楽しみがやってくる...
そうして昔を振り返って聴くのも
音楽の楽しみ方のひとつだと思うからです。


それにしても、若手の演奏とはいえ、
こんな大作を無料で聴けるようなヴェニュが
方々に存在するニューヨークは
本当に恐ろしいところです。



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2017年5月14日
室内楽の傑作

@ The Kosciuszko Foundation

Malgorzata Goroszewska, Piano 
Sheng-Ching Hsu, Violin 
Patrick Yim, Violin 
Mujan Hosseinzadeh, Viola 
Benjamin Larsen, Cello


2017年5月18日木曜日

【日本の美に思わず涙ほろり】ソプラノ服部愛生さんによる“雅”な和の世界


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ソプラノ服部愛生リサイタル “雅 Miyabi” with ゲストアーティスト 

今年になってからご縁がありお会いしたアーティストさんの
リサイタルのお手伝いで、
ニューヨーク郊外のスカールスデールまでお供しました。

新緑が美しい閑静な高級住宅街にある
Greenville Community Churchで行われた
「雅 Miyabi」をテーマにしたリサイタル。

当日は雨模様でしたが、
美しいお庭のしっとり濡れた木々の葉や
ハナミズキの花は雰囲気たっぷり。

晴れの日のお庭の様子

リサイタルでは、ソプラノ服部愛生さんが、
ゲストアーティストのテノールSean Fallenさん、
ピアノ岩尾麻梨菜さん、
箏 木村伶香能さんとともに、
春の優雅な雰囲気に満ちた音楽を奏でました。


前半は百人一首をテーマにした作品を、
ピアノと箏とのアンサンブルで。

百人一首をテーマにした曲が聴かれる機会は多くありませんが、
当日は、信時潔、山田耕筰、貴志康一などの
珍しい作品を聴くことができました。




プログラム解説によれば、
山田耕筰(1887-1965)の『幽韻』は、
小倉百人一首からの女性の歌のみ5首選んで作曲された歌曲集。

この作品は山田耕筰のニューヨーク滞在中の危機をきっかけに
作られたそう。

1919年、カーネギーホールのリサイタルにおいて
スポンサーからの入金が滞りあわや中止か、
というところで資金援助を申し出てくれた
富豪夫人へのお礼に書かれたものです。

スクリャービンやドビュッシーを彷彿とさせる、
色彩豊かで調性の不安定な不思議な響きの中に、
箏曲や吟唱などの日本的な要素が挟まれて、
短いひとつひとつの曲の中に凝縮された美が
宝箱のように閉じ込められている作品でした。



信時潔(1887-1965)の歌曲集『小倉百人一首』は
『幽韻』と比べると、ずっと親しみやすい雰囲気。

淡く憂いを帯びた色調の音色に包まれて、
アメリカにいる日本人の聴き手にとっては
日本への郷愁の念を感じずにはいられませんでした。



貴志康一(1909-1931)による
百人一首からとられた2曲は、
緊張感のある、かつダイナミックな曲。

貴志は僅か28歳で夭折したとのこと。
春になると桜が一斉に見事な花を咲かせ、
瞬く間に散り去るように、
僅か数分の曲の中で一挙にあらゆるエネルギーを
放出させたような感があります。

彼の人生もそのようなものだったのかもしれません。 



服部愛生さんのソプラノは、
この教会の素晴らしい音響の効果もあるのでしょう、
透き通った声が 高く高く登り聴き手の上に降り注いで
ものすごい臨場感でした。


木村伶香能さんの心のこもった箏の音色とともに
歌われた百人一首は、出色。
日本人にしかなし得ない芸術に、
特にアメリカ人のお客様たちは
食い入るように聴き惚れていました。


また、ほぼ全編でピアノ伴奏を務められた
岩尾麻梨菜さんは、若手とは思えない
ベテランのような落ち着きと臨機応変な対応が印象的でした。
優しく丁寧に歌い手に寄り添うピアノが心地よかったです。



後半はオペラの有名アリアや歌曲によるプログラム。
春から初夏の花々がたくさん登場する
優雅な曲に包まれる「雅」な世界。



『蝶々夫人』のデュエットの最後では、
ご主人でテノールのSeanさんが
軽々と服部さんを担いでお姫様抱っこで退場。

ご夫婦で交わされる愛のデュエットは
親密でいて切なさに満ちており、思わず涙ほろり。



茶目っ気溢れるご本人が
「みんな感動して泣いちゃうよ」
とおっしゃる通り、服部愛生さんの声は、
しっとりと独特の緊張感のある歌声が
美しいソプラノでした。



さて、このリサイタルは
様々な点で和の心、日本のおもてなしの心に
溢れていたように感じます。


百人一首をテーマにした曲や
春の風情を感じさせるプログラムだけではありません。

たとえば、ドレスの上から振袖と帯を特別に着付けた衣装。
このような着付けの仕方は初めて見ましたが、
和と洋の組み合わせが目にも鮮やかで白い教会に映えました。



また、ロビーには和の雰囲気を感じさせる
会場装花や書があしらわれ、
百人一首や貝合わせ、
茶道のお釜や柄杓などのしつらえで
和の空間が作られていました。



さらに休憩時には「宝石のよう」と評される
ニューヨークで人気の和菓子店「もち凛」さんの桜餅を
お抹茶とともにお客様にお楽しみ頂く趣向。




音楽以外の要素とのコラボレーション企画は
様々な場所で行われていますし、
私も幾度となくそうした企画に携わってきましたが、
いつもバランスの難しさを感じます。

おもてなしというより、集客のために
コラボレーションに力を入れるあまり
メインの音楽がかすれていることもしばしば。

しかし、服部さんのリサイタルでは、
音楽はもちろん、すべてを「雅」な世界でアレンジし
お楽しみ頂こうという服部さんのおもてなしの心が
至るところに感じられ、
お客様もそれを心から楽しまれているようでした。

雨の日であっても、ニューヨークシティから離れていても
お客様が彼女の歌を聴きに訪れるわけです。

彼女の人間的な魅力・アーティストとしての魅力に
共感する方々によって構成されたサポートチームも
素晴らしかったです。


華道、書道、茶道など和の芸術の多くには
「道」という字が充てられますが、
私はいつもこの「道」の意味には、
形や技を重んじるのみならず、
誠心誠意、心をこめて物事を行う意味が含まれている
と思っています。

音楽の「道」を極める服部さんが、
心のこもった歌声で伝える日本の美。
彼女のサポートチームのプロフェッショナル
(メイク、ヘア、ネイル、着付け、会場装花、書、和菓子、茶など)の美。
マネジメントやお客様への気配りもさりげなくきちんと。

「道」を極めようとする様々な分野の方々が
集まって作られたリサイタルで、
現代の日本人が失いかけている
和の心や思いやりの心を再認識できた気がします。

このような機会に参加させて頂けたことに感謝。






※紹介させて頂いたお写真は服部さんの許可を得て、
ご本人のFacebookよりお借りしました。


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2017年5月13日
ソプラノ服部愛生リサイタル "雅 Miyabi" with ゲストアーティスト
@ Greenville Community Church

Manami Hattori (Soprano)
Sean Fallen (Tenor)
Marina Iwao (Piano)
Yoko Reikano Kimura (Koto)

信時潔:『小倉百人一首』より
山田耕筰:『幽韻』より
貴志康一:八重桜、天の原
シューマン:『詩人の恋』より"素晴らしく美しい五月"
メンデルスゾーン:歌の翼に
プッチーニ:『蝶々夫人』より "可愛がってくださいね"  ほか


● Link

2017年2月15日水曜日

【美しすぎて涙が止まらない... 】サヴァール&エスペリオンXXIによるヴェネツィアからの音楽の旅


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胸の奥から言いようのない感情が湧き出てきて、涙が止まらなくなる… 


ジョルジュ・サヴァールとエスペリオンXXIが演奏する、ジョン・ダウランド作曲:涙のパヴァーヌ(1604)を聴いて、そのあまりの美しさに、ぼろぼろ涙が溢れて舞台が霞んで大変なことになってしまいました。 

2月12日に開催された、古楽奏者の第一人者、ジョルディ・サヴァールと、彼のグループ、エスペリオンXXIのカーネギーホールの公演。 


美しい空間が心地よい、古楽にぴったりの大きさのZankel Hallで、忘れ去られたいにしえの音楽に耳を傾ける。贅沢なひととき。 




ヴェネツィアで発展した音楽が、ヨーロッパの各地に ヴェネツィアの音楽がヨーロッパへと与えた影響を100年にわたって俯瞰する素晴らしいプログラムでした。 

ヴェネツィアから始まってイタリア各地、イングランド、フランスの宮廷、フランスの地方、ドイツ、そして最後にサヴァールの出身であるイベリア半島までを巡る音楽の旅。 

クラシック音楽は真面目でハイソな音楽、と思っていらっしゃる方へ。

ルネサンスの音楽を聴いたら、なんて、自由で、おおらかで、洒落た音楽なんだろう、と驚かれるのではないでしょうか。

絶妙な掛け合いと間の取り方でコミカルにパーカッションが活躍する曲。
ギターがチャーミングな音色を奏でる曲。
ヴィオールが叙情的なロマンスを歌う曲…

口琴で笑いをとるアンコールまで、計算され尽くした完璧なプログラム。




さらに、コンサートの最後のサヴァールの挨拶が見事すぎて、再び涙。

要約すると、 

「今日、演奏した音楽はヴェネツィアから派生して、ヨーロッパの各地に伝播した音楽です。ヴェネツィアの音楽は音楽家たちが国を越えて各地に広がっていくことで、ヨーロッパ各地の音楽に影響を与えて、素晴らしい音楽を生み出していきました。現代でも、そして今日の演奏家たちも、様々な国から来ています。音楽にとって移住は問題ではないのです(Immigration is not a problem )。 」



最後のフレーズ  “Immigration is not a problem.”



D.トランプ反対派の多いニューヨークでこんなことをおっしゃるものだから…
会場が賛同の歓声に湧き、地響きのように聴こえました。 

悦びをもたらすだけが音楽ではない。音楽だからできる人類への貢献もあるはず。
と語るサヴァールが目指す、音楽を通した人類への貢献は可能に違いないと確信させられるような見事なスピーチでした。




最後に蛇足ですが、私がいつもしている古楽のコンサートの開演前の楽しみ方を紹介します。

私はだいたい開演の20分くらい前に到着するようにしています。その理由は、


【 楽器を見る】
古楽の楽器は木や動物の皮、内臓、毛などでできたものが多いので、急激な温度や湿度の変化に敏感です。
そのため、コンサートが始まる前から、舞台上に楽器が置いてあることが多いです。
聴き手にとってはじっくり楽器を見るチャンス。
ぜひコンサート前に舞台の近くで観察してみてください。
現代の楽器と異なる点がさまざま。
ヴィオラ・ダ・ガンバのネックの先に艶やかな女性の顔の彫り物があったり、側面に細かい幾何学紋様や植物の装飾があったり、ドラムの皮に紋様が描かれていたり…
一点一点装飾などが異なる世界に一つしかない楽器の数々を見比べてみてください。
もちろん、現代と全く異なる形の、弓の形にも注目。 


【使っている道具を見る】
楽器の近くに置いてある小物も見てみると楽しめます。
松やにを入れた小箱にも素敵な装飾があったり、小さな楽器(口琴など)を入れる楽器ケースにも、演奏家の細部に至るまでのこだわりがみられます。




バッハやモーツァルトといった、音楽室の壁にかかっている肖像画の作曲家たちよりも数百年昔の音楽は、学校教育では習いませんし、知られていないけれども魅力的な音楽に溢れています。

ルネサンスの音楽を聴くとき、いつも時間の流れる感覚が現代と異なる気がします。
というのも、やさしく語りかける音楽に夢見心地になって、時間がゆっくり流れているような錯覚にとらわれるからです。

ぜひ食わず嫌いにならずに、ゆったりと流れる心地よい時間を体験して頂ければ幸いです。

中世・ルネサンスの音楽は、私のクラシック音楽講座(不定期開催)の第1回、でも詳しく紹介していますので、もっと詳しく学んでみたい、という方はメッセージにてお問い合わせください。次回の開催日をご連絡いたします。


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2017年2月12日
ジョルディ・サヴァール& エスペリオンXXI
@Carnegie Hall, Zankel Hall


Jordi Savall, Director and Treble Viol
Philippe Pierlot, Alto and Bass Viols
Imke David, Tenor Viol
Lorenz Dufschmidt, Bass Viol
Xavier Diaz-Latorre, Theorbo and Guitar
David Mayoral, Percussion



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【知る人ぞ知る!?】 室内楽マニアが集うコンサート・ヴェニュー発見!


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知る人ぞ知る!? 新たなコンサート・ヴェニュー発見! 

夜な夜な複数の会場でクラシック音楽、オペラ、演劇、バレエなどが開催されているリンカーンセンター。 

じつはそのちょうど裏側にあたる場所に、格安で上質の室内楽が聴けるヴェニューがあることを発見しました!




そこはリンカーンセンターの裏側にある韓国系の教会。
Good Shepherd Presbyterian Church 





ジュピター・シンフォニー・チェンバー・プレイヤーズという名前で、アメリカ国内だけでなく、世界各地から一流の演奏家が集い、室内楽を演奏。

演奏メンバーは毎回異なります。
月に2〜3回コンサートが開催されていて、公演はすべて同日2回公演。
午後2時開演の部と午後7:30開演の部があります。 

メトロポリタン・オペラやニューヨークシティバレエのあるリンカーンセンターの華々しさに対して、それほど知られていないようですが、マニアックな室内楽ファンが通い詰めているコンサートシリーズです。

教えてくださったのは昔ニューヨークに住んでいた頃の知人ですが、送られてきたリンクをクリックして最初に目に飛び込んできた演奏家の名前は、日本のコンサートホールで企画制作として働いていたときに何度も来演してくださっていたヴァイオリニスト、チャン・ユジンさん。

彼女の先生のミリアム・フリード先生、そして他にも若手で優れた演奏家たちの名前がずらり。

from Yoo Jin Jang Official website

プログラムは、

 J.S.バッハ:インヴェンションより抜粋(2つのヴァイオリンのための)
モシュレス:幻想曲、変奏曲とフィナーレ Op.46
ファニー・メンデルスゾーン:弦楽四重奏曲 変ホ長調
ベートーヴェン:ピアノ三重奏曲 第6番 変ホ長調 O.70-2 





注目は、なかなか生演奏を聴けないファニー・メンデルスゾーンの弦楽四重奏曲。

450曲以上の作品を書いたと言われているファニー・メンデルスゾーン。
フェリックス・メンデルスゾーンの姉として生まれ、優れた音楽的才能を発揮します。

当時女性が作曲家・演奏家として活躍するのは簡単ではありませんでした。
実際ファニーの父も彼女が音楽家として活躍することに反対。

幸い、画家で女性の社会的な活躍に理解ある夫に恵まれたファニーは、家庭を切り盛りしたり、息子を育てたり、夫のビジネス業務を整理たり、日記をつけたりしながら、200名もの客が訪れるコンサートを企画・運営し、さらに作曲をしていました。

自分の父が1835年に亡くなると、日記をつけることをやめ、それ以降は彼女の作曲した作品が日記の代わりとなりました。 




メンデルスゾーン姉弟といえば、兄弟愛を超えているのではと疑われるほどの強い絆で結ばれていたことでも有名。

たとえば、1829年に姉のファニーは、弟のフェリックスに次のような手紙を送っています。


私はあなたの肖像画を前にしながら、愛しいあなたの名前を何度も呼び、私の傍にいるかのようにあなたのことを思っています。私は泣いています。私はこれからの生涯、毎朝、どの一瞬でも、心の底からあなたのことを愛します。そうしてもヘンゼル(夫)に悪いとは思いません。 

(ファニーからフェリックスへの手紙 1829年10月2日) 



じつは面白いことに、この日には表のリンカーンセンター Allice Tally Hallでは弟のフェリックス・メンデルスゾーンの弦楽四重奏曲第2番が演奏されていて、一方、まったく同じ時刻に教会では姉のファニー・メンデルスゾーンの弦楽四重奏曲が演奏されていました。

フェリックス・メンデルスゾーンの弦楽四重奏曲第2番といえば、フェリックスが18歳のときに書いた、姉へのラブレターの意味も込められた作品。

さすがは恋人同士より仲がいいと言われていた姉弟。
お互いが共鳴しあっているみたいですね。




演奏は見事で、特にチャン・ユジンさんと彼女の先生、ミリアム・フリード先生の音色の表現は信じられないほど幅広く、色とりどりの音色のパレットを自在に操る様は、とても一挺のヴァイオリンで弾いているとは思えないほどでした。 

第3楽章Romanzeはとろけそうに叙情的で美しく、終楽章では、弟フェリック・メンデルスゾーンの最後の弦楽四重奏曲第6番にも通ずる激しさが...




チャン・ユジンさんは2016年、第6回仙台国際音楽コンクールで優勝しているので、日本にもファンが多いと思います。

ユジンさんの 魅力は、ふんわりした愛らしい見た目を裏切る、決してお客様に媚びない選曲と、マイナーな室内楽にも真摯に取り組む超本格派であること。 

おまけに性格もとっても良い❤

演奏後、She is superb! (彼女は最高!)とお客様が口々につぶやいていました。




少し前になりますが、ユジンさんの2015年の映像を紹介します。
ステージから舞台裏に戻ってきたときのユジンさんが見られる、ちょっとほっこりするビデオです。 張り詰めた空気が一瞬だけ緩む瞬間。





Good Shepherd Presbyterian Churchの会場の客席数は100〜120程度。
集客見込みによって多少変えているようです。

室内楽を聴くなら100席程度の会場が好みなのですが、ここも演奏家との距離が近く、 とても贅沢な気分になれます。

終演後には演奏家と話をして帰られるお客様も。



チケット価格も$10から$25まで。
ニューヨークは基本的にすべての物価が日本より高いですが、コンサートチケットだけは日本より安いです。

素晴らしいアーティストたちが世界中から集まって熾烈な競争が行われている ことと、パトロン&サポーターが多いからでしょう。

聴き手にとっては大変ありがたい街です。 

Jupiter Symphony Chamber Players

スケジュールを見てみると、ときどきびっくりするくらい有名なアーティストさんの名前も見られますし、マイナーな室内楽を聴ける貴重な機会が盛りだくさん。

今後も楽しみです。


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2017年2月6日
ジュピター・シンフォニー・チェンバー・プレイヤーズ
@Good Shepherd Presbyterian Church, NY 

Fanny’s Belrin Salon 

Roman Rabinovich piano 
Miriam Fried violin 
Yoo Jin Jang violin 
Dimitri Murrath viola 
Mihai Marica cello 
Vadim Lando clarinet  

J.S.バッハ:インヴェンションより抜粋(2台ヴァイオリン) 
モシュレス:幻想曲、変奏曲とフィナーレ Op.46 
ファニー・メンデルスゾーン:弦楽四重奏曲 変ホ長調 
ベートーヴェン:ピアノ三重奏曲 第6番 変ホ長調 O.70-2


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2017年1月24日火曜日

【1年先まで予約不可!?】 スタインウェイ ピアノ工場ツアー


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スタインウェイ ファクトリーツアー

昨年の今頃、アストリアにあるスタインウェイピアノの工場見学に申し込もうとしたらその年の12月まですべて予約済み!という衝撃の競争率に驚愕したのですが、ウェイティングリストに登録しておいたら忘れた頃に連絡をいただき...

ようやく1年後に見学することができました!
でも条件は一人のみ... と。

なお、実は裏技もあって、スタインウェイのお店で、ピアノ教師としての登録をしておくと、この正規の方法で応募しなくても、別の時期にピアノの購買意欲のある生徒さんを連れて見学をすることができます。

ピアノ教師の方はぜひこの方法を!




スタインウェイ&サンズ社は、1853年にドイツから移住したヘンリー・エンゲルハート・スタインウェイによって、マンハッタンのヴァリック通りに創立されたピアノ会社。 

その後の30年間で、ヘンリーとその息子たち、C.F.セオドア、チャ―ルス、ヘンリー・ジュニア、ウィリアム、そしてアルバートが、近代ピアノ製造における基礎を築き上げます。

ハンブルクに工場があるので、よくドイツの会社と間違われますが、アメリカ生まれの会社です。

現在はクイーンズ、アストリアの地下鉄の終点Ditmars Blvd駅から徒歩20分。
クイーンズの北端に工場はあります。

周辺は完全に工場地帯。
でもその中でスタインウェイの工場は工場というよりは工房といった趣。 

サイズがこじんまりしているから、というよりも、楽器作りの工房がいずれもそうであるように、高度な専門技術を持ったごく少人数のマイスターたちが、それぞれ自分の特技を最大限に発揮しながら作っている、という雰囲気がそう感じさせるのだと思います。

働いている方々の表情を見るだけで、彼らがものすごいプライドと自信を持って楽器作りに専念していることが直ちにわかります。

工場内は撮影禁止なので、写真はChris Payneさんが撮影した美しい写真を下記のウェブサイトでお楽しみください。
Chris Payne: Steinway



Photo from: Chris Payne website


2時間半に渡って案内してくれたのは超ベテランのボブさん。
20年間に渡って工場ツアーのガイドを務め、ご案内したお客様は何千・何万とも。

19世紀のピアノについてなど、かなりマニアックな質問をしても即座に返事が返ってくる、ピアノマニアです。

セーフティーゴーグルを装着して、いざ工場へ!



現在は毎年2000台ほどがニューヨークの工場で、1000台ほどがハンブルク工場で製造されているそう。 

1台のピアノを作るためには12000ほどの部品が必要。しかも完成までに1年かかります。

気が遠くなるほどの部品と工程が必要ですが、製造は驚くほど少人数の技術者によってなされています。

工場の中央には1868年に建てられた最初の工場部分が今も残っていて、驚くべきことに今もピアノの修復工房として稼働しています。

スチームが動力になって暖房やスプリンクラーが稼働している19世紀の工場の隣には、人間の労力を極限まで減らすために最先端の機械が導入された21世紀の工場が増築されています。

廊下を抜けるだけで19世紀と21世紀を一気に渡っているよう。 





修復セクションは非常に大きく、 個性的で魅力的なピアノに溢れていました。
写真でお見せできないのが残念なほど。

最近のピアノを中古ピアノとして再び市場に出すために修復しているのだと思っていたのですが、19世紀の古いピアノがたくさん置いてあることに驚きました。

そこはまるでピアノの美術館。
鮮やかな絵画が描かれたピアノ、パルテルカラーのピアノ。人の手によって丁寧に掘られた細工を持つピアノ。どれもため息が出るほど美しいです。





どの工程も見ていて飽きない面白さがありましたが、圧倒的に印象深かったのは、グランドピアノのあの美しい曲線を描く、リムを作る過程。 

ピアノが描く滑らかなカーブ。今ではどのグランドピアノも持っていますが、あの曲線美は実はスタインウェイが最初に創ったそう。 

このリムを作る過程。特に薄い板を張り合わせた一枚の合板を、一気にあの曲線に仕上げてしまう工程は見とれてしまいます。

5人の技術者が薄い板に接着剤を塗って貼り合わせていきます。ピアノの大きさにより異なりますが、薄い板は15枚から19枚を張り合わせ、さらに糊付けされたリムをグランドピアノの形に成型します。




これは接着剤が乾くまでの20分以内に行わなければならない、という時間との勝負。見ている方がハラハラします。

カーブを描く部分は入念に接着剤をつけたり、成型部分では5人の阿吽の呼吸が必要だったり、と様々な部分で緊張が走ります。(基本的に技術者の方々は無言で作業なさっています。)

そのほか、一人の人間が1分でグランドピアノをひっくり返せる機械など、「おおっ」と驚くような機械もたくさんあり、良いものを見せていただきました。 

コンサートホールでのステマネ時代、日々ピアノを移動させる中で、台車に乗せてですらフルコンサートピアノを動かすのは一人では無理でした。それを簡単にひっくり返せる機械があるなんてびっくり。





ブリッジを彫っていく作業も息を飲むほど美しいです。


Photo from: Chris Payne website


おみやげにハンマーを頂きました。



アストリアのスタインウェイ ピアノ工場見学は毎週火曜日の9:30〜12:00。
事前予約が必要です。

人気が高いので、ご予約はくれぐれもお早めに。
ピアノの仕組みに興味のある 方、楽器作りに興味のある方はぜひ。





いつもクラシック音楽の楽しみ方を紹介していますが、こうした工場ツアーも、クラシック音楽が好きになるきっかけになるのではないでしょうか。




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2017年1月16日月曜日

一年間の鑑賞をすべて記録したら... !?!? なことが...


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こんにちは、MUCHOJIです。
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一年間の鑑賞をすべて記録したら... !?!?






ニューヨークの新年はとても静かでした。
クラシック音楽をゆったり鑑賞するには最適の条件♪

遅ればせながら、新年明けましておめでとうございます。






新年の最初に行うことといえば…


ここ3年くらい続けている、1年間の鑑賞レビュー。




これは、クラシック音楽はもちろん、
ポップス、ジャズ、邦楽、民族音楽といったすべての音楽。

加えてミュージカル、お芝居、歌舞伎、お能といった舞台芸術まで、
1年間に鑑賞したぜーんぶの公演について、記載したレビューです。

条件は簡単で、たった2つだけ。
(ただし実行するのは意外に難しい…)





1. 一年間に鑑賞した公演を
(音楽, ミュージカル・演劇,歌舞伎・能,ダンス・バレエ,落語,映画etc.)
 すべて記入すること♪

2. 公演時間の半分以上を客席で鑑賞したもの
(もちろん起きて聴いていた・・・)に限ること♪






2016年鑑賞レビューの一部を紹介するとこんな感じ。



公演場所、公演名、ジャンル、出演者情報に加えて、
レビューも70文字以内で書きます。



この鑑賞レビューは、
もともとは素晴らしい運営方法で有名なホールさんの企画に
私が参加させていただいたことが始まり。

その年の1年間に個人的に鑑賞した公演すべてのレビューを、
ホールスタッフの視点から書かせていただきました。





そのあとホールさんの許可をいただいて、
自分が勤めていたホールのお客様を対象に、
1年間に聴いたコンサートのレビュー&感想を書きませんか?
という趣旨でレビューを応募。

結果、たくさんのお客様からレビューをいただき、
お客様とのよいコミュニケーションツールとなりました。






鑑賞したものは、自分の趣味で鑑賞したものから、
友人に誘われて、仕事で、偶然に、お付き合いで…
といった公演選択の内容に関わらず、
ぜーんぶを書くのが条件。

という点では、公開するのは若干恥ずかしいところもあります。

友人や知り合いの演奏家さんもいるので、文面にも気を遣います。


でも公開してしまいます。






下記リンクが私の2016年の鑑賞レビュー 一覧。
(クリックするとPDFファイルが開きます。)

 ★2016年鑑賞レビュー 






2016年はニューヨークに引っ越してきて1年目。

留学していたときの経験から、
ニューヨークの土地勘や聴くべきコンサートを見つける嗅覚、
というのは持っていると思っていますが、
それでも鑑賞対象を見つけるのは、
はじめは少しずつ手探りで。

新しいヴェニュやシリーズを開拓したり、
安く良い公演を鑑賞できる場所を発掘したりして、
お気に入りの場所を少しずつ増やしていきました。 




2016年は鑑賞数も43回と多くありませんが、
結果まとめてみると、
日本にいたときは違うジャンルも聴きに(観に)
行くようになったことが判明!

たとえば、日本にいたときは圧倒的に
室内楽・弦楽四重奏の鑑賞数が多かったのですが、
鑑賞数ゼロだったミュージカルを観に行くようになったとか…

日本にいたときには勤めていたホールの趣旨の影響もあり、
ほとんど聴かなかったジャズを、
渡米してから聴きに行くようになったりとか…

これには、とても魅力的なお人柄のジャズ作曲家さんに
ニューヨークで出会った! 
という経緯もあります。

このあたりの変化は、ミュージカルやジャズのメッカ
ニューヨークという土地柄もあるでしょう。





ついでにランキングもつけてみました!


ニューヨークでの自分がつけたランキングを見て気づいたこと...



公演の良し悪しだけでなく、
その会場の雰囲気をまるごと含めて
素晴らしかった!
と、いえるものが上位に。

とくに、ほかのどこでも体験できない、
ニューヨークらしい空間で鑑賞した特別な公演は、
この先何十年も自分の心の中に残り続けると思います。




世の中ストリーミングやYoutubeなど
さまざまなメディアで芸術を楽しめる時代になりましたが、
やはり生で体験する醍醐味というのは、
その場にいることによって、生み出される相乗効果。

演奏空間が素晴らしすぎて演奏家がハイになってしまって...
普段の200パーセントくらいの素晴らしい演奏をする...

というのを目の当たりにしたら、
観客だって興奮・感動するでしょう!



もちろんこれは超個人的なランキング&レビューであることは
ご了承ください。

友人の出演した公演などで、個人的にはとても素晴らしいと思ったけど、
理由があってランキングには入らなかった公演もあります。

そういう場合は、すでに個人的に、
いかに自分が公演を楽しませていただいたか、
素晴らしかったことをお伝えしています。



みなさんは昨年、どのようなコンサートを聴きましたか? 
楽しかった!感動した!コンサートのランキングと共に、
レビューや感想を書いてみませんか? 

書くために思い返せばそのコンサートの感動がよみがえってくる…
それもコンサートの楽しみの方の一つではないでしょうか。

書いてみるととてもワクワクし 、
何年か経ってから見直すとまた楽しい。
鑑賞レビュー、ぜひ今年、一緒にやってみませんか?




♪♪♪おまけ♪♪♪

実は、この鑑賞レビューの派生系で、
2014年と2015年はこれに加えて、
自分が勤めていたコンサートホールの表事情&裏事情
というのも密かに作成しました。

こちらは制作スタッフ・舞台スタッフだけが知っている
裏事情も山盛りあり(笑) ですが、
絶対に公開できない私だけの秘密のレビューです。






このように、鑑賞レビューの作り方・楽しみ方は人それぞれ。
ぜひご自分にあった方法で楽しんでみてください!




【Soka University のコンサートホールがすごい!】

♪--------------------♪--------------------♪ こんにちは、MUCHOJIです。 初めて当ブログをご訪問の方は、 「 はじめに 」をお読みください。 -----------♪------------------♪---...