2016年2月9日火曜日

NYで研鑽を積む若き才能 キム・ボムソリ Kim Bomsoriヴァイオリンリサイタル


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こんにちは、MUCHOJIです。
初めて当ブログをご訪問の方は、「はじめに」をお読みください。
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2016年2月8日
キム・ボムソリ ヴァイオリンリサイタル 
ジュリアード音楽院 Paul Recital Hall





韓国出身のキム・ボムソリさん。
ARDミュンヘン国際音楽コンクールで最高賞(1位なしの2位, 2013)
チャイコフスキー国際コンクール(5位, 2015)
ヨーゼフ・ヨアヒム国際ヴァイオリンコンクール(5位, 2012)
中国国際ヴァイオリンコンクール(チンタオ)(1位, 2011)など
主要なコンクールでも入賞を重ねており
一部では「コンクール荒らし」との噂も流れるほど。
国際コンクールの常連です。 

2010年第4回仙台国際音楽コンクールのヴァイオリン部門で
最年少入賞、聴衆賞を受賞、
続く2013年の第5回コンクールでも入賞、聴衆賞を受賞したことから、
日本でも人気があります。 
性格が良くて、柔らかい雰囲気で、小柄な容姿も
その人気に一役買っています。

若い頃から活躍しているのでキャリアは長いですが、現在26歳。
いまはジュリアード音楽院でシルヴィア・ローゼンバーグ氏のもとで
学んでいます。

2月8日にジュリアード音楽院内のホールで開催された
彼女のリサイタルへ。

彼女がまだ学生として研鑽を積んでいるおかげで、
修士課程のプログラムの一環として行われる今日のリサイタルは
学内で行われ、無料で聴けるというわけ。

現在1774年製G.B.グァダニーニのヴァイオリンを使用。 

前半は、モーツァルトのK.304のソナタ、
イザイの「バラード」を演奏して、
プログラムには掲載されていなかった、
パガニーニの「24の奇想曲」からの1曲が追加されました。

後半はフォーレのヴァイオリンソナタ 第1番と
ヴィエニャフスキの華麗なるポロネーズ 第1番。
高度なテクニックを要求する曲がこれでもかと並びます。

コンサートの1曲目は、モーツァルトが残したヴァイオリンソナタの中で
唯一の短調の曲。K.304のソナタ。曲全体を覆う哀しみには、
天才としてもてはやされて育ったモーツァルトにとっての挫折… 
職探しの失敗、母の客死、の両方が関わっているといわれます。

冒頭の演奏者自身によるMCによると、
キム・ボムソリさん自身も親類を亡くしたばかりだそう。
涙ぐみながら、亡き人に演奏を捧げると話していました。 

モーツァルトはシンプルな演奏スタイルを採用する演奏家も
少なくありませんが、彼女の演奏は、
人間の深い感情の襞を捉えて離さない
非常に叙情的なモーツァルト。
エレジー(悲歌)を聴いているかのようでした。

2曲目はベルギーに生まれた名ヴァイオリニスト、イザイの
無伴奏ヴァイオリンソナタより第3番「バラード」。
彼の代表作の6曲の無伴奏ソナタは1924年の作品。
一曲ずつにそれを捧げた若き演奏家の性格を巧みに表した、
個性的、独創的なソナタ集。

第3番「バラード」はルーマニアの傑出した作曲家・ヴァイオリニスト
であったジョルジュ・エネスコに捧げられた曲。
続けて演奏されたパガニーニの「24の奇想曲」からの抜粋のとともに、
超絶技巧で会場を沸かせます。

プログラム後半の第1曲は、フォーレのヴァイオリンソナタ第1番。
大きく流れるような美しい旋律、次々に移ろっていく調性、
随所に現れる半音階的な進行は紛れも無いフォーレの音楽的特徴。

第2楽章のヴァイオリンとピアノの優雅なため息とためらいがちな会話
第4楽章の息の長いフレーズ(キム・ボムソリさんの息は本当に長い!)
が特に印象に残りました。 

最後はヴィエニャフスキの華麗なるポロネーズ第1番。
ポーランドに生まれたヴィエニャフスキは、
パガニーニやサラサーテと同様、
ヴィルトゥオーゾ・ヴァイオリニストとして名を成しただけあって
これでもかというほどの華美な技巧をまとって登場する曲。 

もちろん、キム・ボムソリさんがこの難曲を難なく
弾きこなす技術も素晴らしいのですが、
むしろ彼女が、ヴィエニャフスキがこの曲に織り込んだ
ポーランドの栄光と哀しみを象徴するような
ヴァイオリンの表情豊かな音色をうまく引き出していたことに
感銘を受けました。 

今日のプログラムは全体的に技巧的な曲が多かったのですが、
キム・ボムソリさんはロマンティックで悲哀に満ちた曲を
演奏するときに、彼女の個性が最も発揮されると思いました。

ヴァイオリンは粘着質の音色を奏で、
高音は細く鋭い線で触れたら切れそうな強さを持っています。 

アンコールに「とても仲の良い友達を紹介したいと思います」
というから誰かと思ったら、なんとリチャード・リンさんが友情出演!
仙台国際ヴァイオリンコンクールで第1位を受賞し、
いま大人気の台湾系アメリカ人のリチャード・リンさん。
そういえば彼もジュリアード音楽院でした。 


といういきさつで、豪華な顔ぶれでの
2台ヴァイオリンのアンコールで締めくくられました。 

若い演奏家の"いま"を聴くことほど楽しいことはありません。
将来「あの人の若い頃の演奏を聴いたよ、こんな風になったんだね」
と振り返る楽しみが必ずやってくるから。

今日も、若い演奏家のコンサートの中から「これは!」というのを
見つけて期待を膨らませている管理人です。



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2016年2月8日  @ジュリアード音楽院 Paul Recital Hall
キム・ボムソリ ヴァイオリンリサイタル 

モーツァルト: ピアノとヴァイオリンのためのソナタ ホ短調 K.304
イザイ: ヴァイオリンソナタ ニ短調 「バラード」
パガニーニ:24の奇想曲 より 第24番
フォーレ: ヴァイオリンソナタ 第1番 イ長調 作品13
ヴィエニャフスキ: 華麗なるポロネーズ 第1番 ニ長調 作品4





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