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こんにちは、MUCHOJIです。
初めて当ブログをご訪問の方は、「はじめに」をお読みください。
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こんにちは、MUCHOJIです。
初めて当ブログをご訪問の方は、「はじめに」をお読みください。
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先週ニューヨーク日本人理系勉強会さんで発表させていただきました。
テーマは数学と音楽との関係について。
JASS ニューヨーク日本人理系勉強会
ニューヨークに来て以来、いつも感じていたのは、
私の研究は音楽研究者の方と話している時よりも、
理系の研究者の方と話している時の方が、
興味を持って頂きやすいということ。
数学を応用した音楽理論を、理系研究者の方々が
どのように感じてくださるのか興味があったので、
発表の機会を頂けたことに感謝です。
導入でピュタゴラス音律の話をしたあと、
十二音技法とピッチクラス集合論について説明させていただきました。
そして音楽を数学的に作曲したり、分析したりする例を紹介しました。
後半ではピッチクラス集合論の問題点とその解決方法を提案しました。
先週発表した内容は、私の博士論文以外ではほとんど公開していないので、
そのエッセンスだけ、このブログで紹介しようと思います。
ここから先の内容は、口頭発表以外では、
今のところほぼこのブログでだけで公開するお話しです。
ピッチクラス集合論は、数学の集合論を応用し、
音を数字に変換し、数字の組み合わせによって音楽を分析します。
ドは0、ド#は1、レは2…といった形ですね。
その利点は、作品が持つ様々なコンテクストを考慮に入れることよりも、
音程そのものに内在する意味の解読に重きを置くことより、
伝統的な音楽分析の慣習に捉われない方法で
作品の構造を明らかにできることです。
この特性により、調性音楽で書かれていない音楽(無調音楽)をも
分析することができます。
無調音楽は、調性音楽に存在する調の中心が曖昧であったり、
存在しなかったりすることから、
それまでの伝統的な分析方法では分析することが困難です。
こうした無調音楽を分析するには、新しい方法が必要でしたが、
そのひとつとして登場したのがピッチクラス集合論です。
しかし、ピッチクラス集合論や変換理論、
といった数学を応用した音楽理論の問題点は、
分析をする際のグループ化が音楽的に意味のある方法で
行われないことが多い点。
たとえば、ピッチクラス集合論の分析では、
この譜面の例のように、丸でグループ化して、
それぞれの集合の関係性を分析します。
しかし、よくみると、不思議な音の選び方をしていることがあります。
特に5小節目にある4つの音からなる集合。
これは、旋律や和音を無視して、
分析者が望む結論を導くために音を選んでいるように見えます。
もっとわかりやすく、国語で説明すると、
「ここではきものをぬいでください」という文章があったとすると、
⒈ ここで、はきものを、ぬいでください。
⒉ ここでは、きものを、ぬいでください。
のどちらかになりますよね。
3.ここ、ではきものをぬ、いでください。
とは言わないでしょう。
上述の第5小節目のグループ化は、
この、意味や文脈を無視したグループ化と同じことをしているわけです。
調性音楽は、旋律・和声といった調性音楽固有の
音楽的な性質に基づいて音楽的意味のあるグループ化を行っています。
無調音楽でも無調固有の音楽的性質に基づいて
音楽的に意味のあるグループ化を行うべき、というのが私の主張です。
つまり、無調音楽の中にも音楽的に意味のある区切りを見つける、
ということが目的となります。
では、どうやって?
その方法として提案できるのが、
① 暗意/実現モデル (Narmour 1990; Narmour 1992)
② ポジション探索 (Butler and Brown 1981; Butler 1983; Butler 1989)
の2つを組み合わせる方法です。
この理論の詳細についての説明は別の機会に譲りますが、
この理論はどちらも調性に基づく理論です。
なぜ無調音楽になぜ適用するのか?
と考えられる方もいらっしゃるかもしれません。
でも、たとえ無調音楽が調性音楽とは異なるものを
生み出そうとして作られたとしても、
嫌い嫌いは好きのうち、と同じで、
調性音楽を意識せざるを得ないのです。
だから、調性音楽が耳で聴いてわかるもので音楽的性質を
つくっているならば、それと同じように、
耳で聴いてわかるものから無調固有の音楽的性質を見つけられるはず、
と仮定しました。
① 暗意/実現モデル (Narmour 1990; Narmour 1992) の詳細を
ここでは説明するのは難しいのですが、端的に言うと、
暗意/実現モデルは「音楽的に意味のある区切り」になりやすい場所と
なりにくい場所を見つける、区切りのパターン検索として使うことができます。
暗意/実現モデルのみを使って無調音楽を分析した場合にも、
ある程度音楽的に意味のある区切りは見つけることができます。
しかし、そこが区切りであるという根拠が弱かったり、
区切りであると断定しにくかったりする部分も多いです。
そこでもうひとつの、ポジション探索を行うことで、
そこが区切りであることの裏付けを強くできるのでは、と考えました。
ポジション探索の考え方は、調性音楽の長調・短調だけが持つ特徴*1を
手掛かりに一種の「区切り」を見つける方法です。
ポジション探索の考え方によれば、
すべての長調と短調だけがもつ特徴に基づいて、
人間は音楽を聴いているときに、
自分が今何調を聴いているのかを判定しています。
それは、一つの音階の中に現れる特定の距離が出現する頻度です。
ハ長調の中に異なる距離(音程)が何回ずつ出てくるかを
数え挙げてみましょう。
ドとレの間はド#がありますから、距離(音程)は2です。
ミとファの間は黒鍵がありませんから、距離(ステップ)は1です。
ドとミの間は距離(ステップ)は4です。
レとファの間は距離(ステップ)3です。
ドとファの間は距離(ステップ)5です。
最後、最も大きいファとシの間の距離(ステップ)は6です。
このそれぞれが何回ずつ出てくるかを数え上げると、
じつはすべて出現する回数が異なります。
特に、距離1はたったの2回、距離6は1回しか現れないので、
もしこの距離(音程)が曲の中で出てきたら、
それは調を判定する手がかりになるわけです。
この、ポジション探索を暗意/実現モデルと組み合わせて使うと、
無調音楽の分析においても音楽的に意味のある区切りを見つけることが
できるのですが、その分析例はまた別の機会に書きたいと思います。
*1:厳密には、長調・短調のピッチクラス集合7-35以外に
もう一つこの特徴を持つ集合がある。
テーマは数学と音楽との関係について。
JASS ニューヨーク日本人理系勉強会
ニューヨークに来て以来、いつも感じていたのは、
私の研究は音楽研究者の方と話している時よりも、
理系の研究者の方と話している時の方が、
興味を持って頂きやすいということ。
数学を応用した音楽理論を、理系研究者の方々が
どのように感じてくださるのか興味があったので、
発表の機会を頂けたことに感謝です。
導入でピュタゴラス音律の話をしたあと、
十二音技法とピッチクラス集合論について説明させていただきました。
そして音楽を数学的に作曲したり、分析したりする例を紹介しました。
後半ではピッチクラス集合論の問題点とその解決方法を提案しました。
先週発表した内容は、私の博士論文以外ではほとんど公開していないので、
そのエッセンスだけ、このブログで紹介しようと思います。
ここから先の内容は、口頭発表以外では、
今のところほぼこのブログでだけで公開するお話しです。
ピッチクラス集合論は、数学の集合論を応用し、
音を数字に変換し、数字の組み合わせによって音楽を分析します。
ドは0、ド#は1、レは2…といった形ですね。
その利点は、作品が持つ様々なコンテクストを考慮に入れることよりも、
音程そのものに内在する意味の解読に重きを置くことより、
伝統的な音楽分析の慣習に捉われない方法で
作品の構造を明らかにできることです。
この特性により、調性音楽で書かれていない音楽(無調音楽)をも
分析することができます。
無調音楽は、調性音楽に存在する調の中心が曖昧であったり、
存在しなかったりすることから、
それまでの伝統的な分析方法では分析することが困難です。
こうした無調音楽を分析するには、新しい方法が必要でしたが、
そのひとつとして登場したのがピッチクラス集合論です。
しかし、ピッチクラス集合論や変換理論、
といった数学を応用した音楽理論の問題点は、
分析をする際のグループ化が音楽的に意味のある方法で
行われないことが多い点。
たとえば、ピッチクラス集合論の分析では、
この譜面の例のように、丸でグループ化して、
それぞれの集合の関係性を分析します。
しかし、よくみると、不思議な音の選び方をしていることがあります。
特に5小節目にある4つの音からなる集合。
これは、旋律や和音を無視して、
分析者が望む結論を導くために音を選んでいるように見えます。
もっとわかりやすく、国語で説明すると、
「ここではきものをぬいでください」という文章があったとすると、
⒈ ここで、はきものを、ぬいでください。
⒉ ここでは、きものを、ぬいでください。
のどちらかになりますよね。
3.ここ、ではきものをぬ、いでください。
とは言わないでしょう。
上述の第5小節目のグループ化は、
この、意味や文脈を無視したグループ化と同じことをしているわけです。
調性音楽は、旋律・和声といった調性音楽固有の
音楽的な性質に基づいて音楽的意味のあるグループ化を行っています。
無調音楽でも無調固有の音楽的性質に基づいて
音楽的に意味のあるグループ化を行うべき、というのが私の主張です。
つまり、無調音楽の中にも音楽的に意味のある区切りを見つける、
ということが目的となります。
では、どうやって?
その方法として提案できるのが、
① 暗意/実現モデル (Narmour 1990; Narmour 1992)
② ポジション探索 (Butler and Brown 1981; Butler 1983; Butler 1989)
の2つを組み合わせる方法です。
この理論の詳細についての説明は別の機会に譲りますが、
この理論はどちらも調性に基づく理論です。
なぜ無調音楽になぜ適用するのか?
と考えられる方もいらっしゃるかもしれません。
でも、たとえ無調音楽が調性音楽とは異なるものを
生み出そうとして作られたとしても、
嫌い嫌いは好きのうち、と同じで、
調性音楽を意識せざるを得ないのです。
だから、調性音楽が耳で聴いてわかるもので音楽的性質を
つくっているならば、それと同じように、
耳で聴いてわかるものから無調固有の音楽的性質を見つけられるはず、
と仮定しました。
① 暗意/実現モデル (Narmour 1990; Narmour 1992) の詳細を
ここでは説明するのは難しいのですが、端的に言うと、
暗意/実現モデルは「音楽的に意味のある区切り」になりやすい場所と
なりにくい場所を見つける、区切りのパターン検索として使うことができます。
暗意/実現モデルのみを使って無調音楽を分析した場合にも、
ある程度音楽的に意味のある区切りは見つけることができます。
しかし、そこが区切りであるという根拠が弱かったり、
区切りであると断定しにくかったりする部分も多いです。
そこでもうひとつの、ポジション探索を行うことで、
そこが区切りであることの裏付けを強くできるのでは、と考えました。
ポジション探索の考え方は、調性音楽の長調・短調だけが持つ特徴*1を
手掛かりに一種の「区切り」を見つける方法です。
ポジション探索の考え方によれば、
すべての長調と短調だけがもつ特徴に基づいて、
人間は音楽を聴いているときに、
自分が今何調を聴いているのかを判定しています。
それは、一つの音階の中に現れる特定の距離が出現する頻度です。
ハ長調の中に異なる距離(音程)が何回ずつ出てくるかを
数え挙げてみましょう。
ドとレの間はド#がありますから、距離(音程)は2です。
ミとファの間は黒鍵がありませんから、距離(ステップ)は1です。
ドとミの間は距離(ステップ)は4です。
レとファの間は距離(ステップ)3です。
ドとファの間は距離(ステップ)5です。
最後、最も大きいファとシの間の距離(ステップ)は6です。
このそれぞれが何回ずつ出てくるかを数え上げると、
じつはすべて出現する回数が異なります。
特に、距離1はたったの2回、距離6は1回しか現れないので、
もしこの距離(音程)が曲の中で出てきたら、
それは調を判定する手がかりになるわけです。
この、ポジション探索を暗意/実現モデルと組み合わせて使うと、
無調音楽の分析においても音楽的に意味のある区切りを見つけることが
できるのですが、その分析例はまた別の機会に書きたいと思います。
*1:厳密には、長調・短調のピッチクラス集合7-35以外に
もう一つこの特徴を持つ集合がある。
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