2016年1月31日日曜日

ミルトン・バビットの生誕100年記念コンサート


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こんにちは、MUCHOJIです。
初めて当ブログをご訪問の方は、「はじめに」をお読みください。
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2016年1月29
20世紀アメリカの現代音楽を代表する作曲家・理論家の
ミルトン・バビットの生誕100年を記念した
6日間に渡るシリーズコンサート最終夜。
会場は7割超のお客さんの入り。
現代音楽でこんなにお客さんが入るなんてさすが。

プログラムは、ブラームス、シェーンベルク、
ストラヴィンスキーと来て、
最後にバビットのピアノ協奏曲第2番。
昨日までの5日間のコンサートと比べると、
これでもずいぶん聴きやすいプログラム構成 (^_^;)

ブラームスの作品が含まれているのは、
シェーンベルクはブラームスを敬愛していたから。

そしてシェーンベルクの作品がプログラムに含まれているのは、
もちろん、12音技法を確立したシェーンベルクは
バビットにとって最も尊敬する人物のひとりだから。

また、バビットはストラヴィンスキーの初期の作品を愛しており、
さらに12音技法を用いたストラヴィンスキーの「垂直(配列)」
に感銘をうけていました。

という理由でできたこのプログラム。

プログラム1曲目は、ブラームス作曲
コラール前奏曲より 第8曲一輪のばらが咲いて
ブラームスの死の前年に書かれた作品122(遺作)の
11のコラール前奏曲」の1曲。

作曲されたのは、1896年5月20日にブラームスが
生涯に渡って敬愛していたクラーラシューマンが他界したあと。

彼女が亡くなったあと、ブラームスは
この世ではすべてが空しいと語り
心身ともに弱ってしまいます

その後に彼が作曲できたのは、
この「11コラール前奏曲」のみなのです。

とは言うものの、実際には11曲のうちのいくつかは、
ブラームスがハンブルクでオルガンを弾いていた1850年代に
構想がすでになされていたと推測できなくもない。

第8曲は、おだやかで心を慰めるような美しい音楽。
もし1896年に作曲されていたならば、
バビットが生まれるわずか20年前ということ。
その後の音楽界にわずか20年ほどの短い期間に
いかにラディカルな潮流がいくつも生まれてきたかを
考えるととても面白いです。

プログラム2曲目はシェーンベルク作曲
管弦楽のための5つの小品。
1909年に書かれ、のち1949年に小管弦楽版が書かれました。
シェーンベルクが無調の時代に突入する頃の作品。

調性には則っていない一方、
叙情的な美しさがいっぱいに詰められた作品で
各曲のタイトルにも「予感」「過ぎ去りしもの」「色彩」といったとても
ロマンティックなタイトルが並びます。

最も有名な第3曲「色彩(湖畔の夏の朝)」は、
音色が穏やかなオスティナート風に変化していく様が
プリズムのような曲。
ジュリアード・オーケストラは、
光の加減で色が変化するオパールを想起させる演奏で
なかなかの好演だったと思います。

休憩を挟んで3曲目はストラヴィンスキーのヴァリエーションズ。
ストラヴィンスキーが1963-64年にかけて作曲した
十二音技法を用いた作品。
ストラヴィンスキーはシェーンベルクが
亡くなって初めて十二音技法の作品を書いているという
ところが面白い。
自分の生涯のライバルに、十二音技法を用いていることを
見られたくなかったのか。 

ここまでの3つのプログラムはいずれもとても聴きやすい音楽でしたが、
最後は曲者。バビットのピアノ協奏曲第2番。
ストラヴィンスキーのときと異なるピアノに入れ替え。
ピアノの天井は外してしまい、
反響板代わりの透明なアクリル板がピアノの奥に設置されます。



 
舞台に登場したピアニストはまず、演奏開始前に楽譜がすべて揃っているか
一枚一枚丁寧に確認します。

そうそう、この曲1枚でも楽譜が飛んでいたりしたら大変ですから。
で、どんなだったかと言いますと、
演奏時間が25分以上もあるので インテリぶって(?)
現代音楽を聴きに来たニューヨーカーの皆さんも
さすがに飽きて物音をたてたり、
寝てしま人が続出したり、という有様

この曲を生演奏で聴くのは初めてですが、
いささか抑揚にかける音楽のような気がしました。
演奏のエッジが足りなかったからかもしれません。
1曲の中での起承転結のような流れを敢えて作らず、
聴き手の細部への関心を常に引き続け、
最後までその状態が続くので
楽曲全体の把握がしにくい曲。

でも、20代の子が多くを占めている若きオーケストラで
この曲を最後まで弾ききるというのはものすごい挑戦。
終演後は、惜しみない拍手が贈られました。


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2016年1月29日 @リンカーンセンター
ミルトン・バビット生誕100年記念コンサート(第6夜)
指揮:Jeffrey Milarsky
ピアノ:Conor Hanick
管弦楽:Juilliard Orchestra


ブラームス:コラール前奏曲「一輪のバラは咲いて」
BRAHMS (arr. Leinsdorf) Chorale-Prelude, Op. 122, No. 8,, Es ist ein Rosentsprungen (ca.1896)

シェーンベルク:管弦楽のための5つの小品
SCHOENBERG Five Pieces for Orchestra (1909/49)

ストラヴィンスキー:ヴァリエーション
STRAVINSKY Variations (Aldous Huxley in Memoriam) (1963-64)

バビット:ピアノ協奏曲第2番
BABBITT Piano Concerto No. 2 (1998)

2016年1月29日金曜日

苦難を乗り越え片手で紡ぐ魂の音 左手のピアニスト


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2015年9月13
苦難を乗り越え片手で紡ぐ魂の音
左手のピアニスト 智内威雄

智内威雄さんは、音大卒業後ドイツに渡り、
数々の国際コンクールに入賞。

華々しい活動をスタートしようとした矢先、
脳が体の一部を制御できなくなる難病
「局所性ジストニア」を発症、
右手を思うように動かすことができず、
演奏活動停止を余儀なくされます。

日常生活には支障はなくとも、
両手のピアノ演奏は諦めざるを得なかった智内さんは、
2003年から「左手のピアニスト」として活動を再開。

驚異的なテクニックと豊かな音楽性で新境地を切り拓き、
ハンディキャップを持っているからこそ気づいた音楽の力や、
再発見した左手のための歴史的な作品を
「心に響く命の音」として私たちに届けています。

その活動は各種テレビ番組でも取り上げられ
話題の人となりました。

この日のメインは作曲家、川上統さんが智内さんと
大蔵流狂言方の善竹隆司さんのために書き下ろした
「宮沢賢治の夜(朗読と左手ピアノのための)」。

宮沢賢治と同時代に生きたロシアの作曲家プロコフィエフを
思わせるようなモダンな響きと朗読により、
宮沢賢治の物語が紡がれました。

照明を落とした舞台上に浮かび上がるアーティストたち。
小さなホールの天井から音が星になって降ってくるよう。
 
大蔵流狂言方の善竹隆司さんの語りも
真に迫るものがあり、皆前のめりになって聴いていました。

プロコフィエフらしいちょっとシニカル&ラディカルな
響きのが垣間見える音楽に、
宮澤賢治自身が作曲した「星めぐりの歌」が
引用されているのも面白い。

智内さんさんの魅力はそのお人柄にもあります。
ステージで演奏している時の真剣な姿と、
気さくで、良い意味で力の抜けた、MCの時のギャップが
激しく、思わずほっこり。


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2015年9月13日  @宗次ホール
左手のピアニスト 智内威雄

ピアノ:智 威雄 
善竹 隆司

川上 組曲宮沢賢治の夜
と左手ピアノのための) 


【Soka University のコンサートホールがすごい!】

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