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2018年10月30日火曜日

【禁じられた国々】クロノス・クァルテット

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2018年10月20日
【ミュージック・フォー・チェンジ:禁じられた国々】
クロノス・クァルテット
 @Bing Concert Hall (スタンフォード大学)

サンフランシスコを拠点に
世界各地で活躍する
クロノス・クァルテットを
聴きに、スタンフォード大学に
行ってきました。

サンフランシスコで聴いてみたい!
とずーっと思っていた弦楽四重奏団。



クロノス・クァルテットといえば、
その卓越した音楽性と腕前で、
クラシック音楽の古典のみならず、
現代の若手作曲家や
他ジャンルの作曲家と一緒に活動したり、
現代の政治や社会を反映した
挑戦的な作品を演奏したりすることで有名。

スタンフォード大学には
Bing Concert Hallという有名なホールがあります。



遠くからでも目を引くかっこいいデザイン。
円柱の外側に直方体をかぶせたような
ユニークな形です。 



このBing Concert Hallは
とても贅沢に空間が使われていて
居心地が良く
気持ち良いホールです。

ホール内にたどり着くまでに、
テラス、ロビー、竹などが植えられた中庭、回廊、
と何重にも空間があるので
外の音はホール内では完全に遮断されていて、
音楽のみに集中できます。

日本のホールは
遮音の設備がきちんとしているところが
多いと思いますが、
アメリカの大きな都市のホールは
とくに古いホールに多いですが、
遮音が不十分なことがあり、
よく救急車や消防車、街の音が
普通に音楽演奏中に割り込んでくるのです(笑)
たとえばニューヨークのカーネギーホールだと、
救急車のサイレンや車のクラクションが
演奏中にも聞こえてきて、それはそれで、
ニューヨークにいるんだなという感じがして
面白くもありますが。



開場前に少し早めに着いて、
大学構内も散歩してみました。
スタンフォード大学は
サンフランシスコからは
少し離れた郊外にあるので、
土地をゆったり使えるのでしょう。
広大な中庭があったり、
空間をゆったり使った
修道院風の建物が並んでいます。
広いので校内の移動は車か自転車で。



さて、今日のプログラムは
かなり刺激的でした。
「MUSIC FOR CHANGE:禁じられた国々」
と題したプログラム。 

2017年にトランプ大統領が、
イスラム教7か国の人々の
アメリカ合衆国へのアクセスを
厳しく制限する大統領令に署名しました。 

クロノス・クァルテットの
本日のプログラムは、
この大統領令への挑戦的な反応。 

入国が禁じられた7カ国の出身の作曲家
あるいはその7カ国に関わる作品を
取り上げたものです。

そもそも弦楽四重奏団の結成まもなくの
45年前から、クロノス・クァルテットは、
ジョージ・クラムの
戦争反対を掲げた作品
『黒い天使たち Black Angeles』を
演奏したり、
冷戦時代を扱うアルバム『Howl, USA』
をリリースしたり、などなど、
その時代時代の瞬間を反映する作品を
積極的に取り上げてきた団体。 

常に新しい分野を求めて
進化し続けている弦楽四重奏団だと思います。



今日は委嘱作品が多かったです。
作品が出来上がるまでに、
クロノス・クァルテットが、
MySpaceなどで見つけて、
自分たちが惚れ込んだ作曲家やバンドに
個人的にemailを送るところから始め、
何度も彼らとやり取りをし、
お互いのCDを交換し合ったりして
強い絆をつくり、作品を依頼する…
というプロセスがあることを知り、
新しい音楽を生み出すことへの
熱意を感じました。 

作品は、日本人の私には
あまり馴染みのない国々の
初めて聴く曲ばかりでしたが、
どの曲にも
その国固有のメロディーが
モティーフとして使われているので、
繰り返されるうちに、
中東やアフリカの国々それぞれに
特徴あるメロディーや音階が
存在することが理解できました。

さらに、中国・インド・コーカサス地方の
音楽に共通する要素もあって、
かつてシルクロードを通じて
音楽も運ばれていたのだろうな、
と感じられる部分がたくさんありました。 

曲と曲の間は、
イスラムの国々の都市で録られたと
思われるテープが流され、
街中の車の行き交う音、クラクション
サイレン、コーランを唱える声などが
入り混じったテープから
音楽へと自然につながっています。

弦楽四重奏とテープのみならず、
トライアングル、タンバリン、ゴングなどを
使っている作品もありました。

途中に休憩もなく、
ほぼ切れ目なく
すべての曲が連続して演奏されていたので、
終わったときは、
音楽で頭も心も満腹状態でした。 


日本でこうしたプログラムを
弦楽四重奏の公演で行うのは
なかなか大変だと思いますが、
アメリカの、
とくにスタンフォード大学のような
知識人が集う場所では
関心を持つ人が多いようで、
開場は賑わっていました。
テーマも演奏も会場の雰囲気も
ちょっと尖っていて
とにかくかっこよかった!


弦楽四重奏の公演では
日本でもアメリカでもシニアのお客様が
多いと思いますが、
今日は30代40代くらいの聴き手もたくさん。

素晴らしい音響の会場で
意欲的な作品の数々を聴くことができ、
刺激的な体験でした。


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2018年10月20日 
@ Bing Concert Hall, Stanford University
Kronos Quartet

Music For Change: The Banned Countries



2018年4月27日金曜日

【サンフランシスコで室内楽】ヴァン・カイック弦楽四重奏団


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2018年4月15日
ヴァン・カイック弦楽四重奏団
@サンフランシスコ州立大学
McKenna Theater, San Francisco State University


ブログを大変ご無沙汰して
しまいました。
その間に、
ニューヨークからロサンゼルスへ、
さらにサンフランシスコに
引っ越していました。 

ニューヨークでもロサンゼルスでも
まだ書ききれていない印象深いコンサートが
たくさんあるのですが、
今日はサンフランシスコのコンサートを
紹介したいと思います。



週末にサンフランシスコ州立大学の室内楽ホールで、
弦楽四重奏を聴いてきました。


当日の演奏は、フランスの弦楽四重奏団
ヴァン・カイック弦楽四重奏団。

2015年に
ウィグモアホール国際弦楽四重奏コンクールで優勝。
目覚ましい活躍を見せる弦楽四重奏団のひとつ。
サンフランシスコでの今回の演奏は、
彼らにとって西海岸初の演奏会です。






曲目は、

メンデルスゾーン:弦楽四重奏曲 第4番
 ホ短調 作品44-2
西村 朗:弦楽四重奏曲 第2番「光の波」
ドビュッシー:弦楽四重奏曲 ト長調 作品10 



ヴァン・カイックQの演奏は、
2014年の大阪国際室内楽コンクールで
聴いたことがあります。
チェロはその後新しいメンバーに交代したようです。
4年越しの再会にワクワクです。

2014年のコンクールの際は、
西村先生の同作品が課題曲に含まれていました。
本選では同じ曲を1日に6回くらい聴いた気がします。
朝から晩まで若手弦楽四重奏団たちの真剣勝負に
聴き入る…とても贅沢な時間でした。

音の振動がしびれのように伝わる冒頭を聴いた瞬間、
コンクールのときのものすごい緊張感が鮮やかに
蘇ってきました。





現代曲が苦手な方には、
現代曲を1日に何回も聴くというのは
苦行のように聞こえるかもしれませんが、
現代曲すべてが聴きにくいわけではありません。

まず、西村先生のこの作品は、
海外で受けいれられやすい特徴、
キャッチーな要素を多く備えていると思います。

難易度の高いあらゆる技術が
散りばめられているので、
コンクールの課題曲にもふさわしく、
かつ、聴き手もその独特の世界に
引き込まれる曲です。 

箏や三味線を彷彿とさせる和の音色や、
時代劇のワンシーンかと思うような効果音などが、
たくさん含まれていて、
想像力を掻き立てられる作品です。



こうした作品はCDやストリーミングで
聴くのではなく、
会場で見てこそ
楽しめる曲だと思います。

というのは、パートの受け渡しや、
個々のパートがそろって全体をつくる過程が
目に見てわかるためです。



特にそれがよくわかるのが、
この曲に使われている 「ホケット」という奏法。 
バリ島のケチャにヒントを得たそうです。

「ホケット」というのは、
ガムランに見られるように、
複数の演奏者がお互いに他の奏者を補うような形で
ひとつまたは複数の、リズムやメロディーラインを
編み出す奏法です。

この作品では、隅々まで計算された音楽の中に、
ときどき武満 徹やバルトークを
思い起こさせるフレーズも
ひょっこり顔をのぞかせます。


ヴァン・カイックQの演奏は、
落ち着いた余裕があって、
当然、4年前の演奏とは違うものでした。 

コンクールの手に汗握る雰囲気も好きでしたが、
同じ弦楽四重奏団による、
好きな音楽をお客様とシェアしたい、
という今日の雰囲気もとても心地よかったです。



同じアーティストさんの演奏を
何度も聴く機会は
意外に思いがけないところで
やってくることがあります。
なつかしい思い出とともに蘇る演奏。
聴き比べの醍醐味だと思います。

会場のお客様は、パリを拠点に活躍する
弦楽四重奏団による
ドビュッシーの弦楽四重奏の演奏が
ひときわ気にいったようです。
こじんまりとした、
あたたかい雰囲気の会場でした。
 




サンフランシスコ州立大学の
このコンサートシリーズは、
モリソン室内楽センターが主催してくださるおかげで
演奏会はすべて無料で提供されています。

過去のシリーズを見てみると、
過去にこのブログでご紹介させていただいた
ホルショフスキ・トリオも。
毎回演奏会とマスタークラスがセットで
開催されています。

日本ではこうした弦楽四重奏による
マスタークラス&演奏会は
まだまだ少ないですが
アメリカでは、弦楽四重奏団が
各地の大学に呼ばれたり
レジデントを務めることで
後進の指導や
クラシック音楽の普及に
大きく貢献しています。

弦楽四重奏団の
収入源のひとつであり、
さらにローカル・コミュニティも
その恩恵に預かっています。

サンフランシスコ州立大学は
市内の端の方にあるので
ダウンタウンと違って駐車スペースを
比較的見つけやすく助かります。
(駐車スペースの確保はSFの悩みの種)


近くで室内楽が定期的に
演奏されている場所を
早速発見できて、
サンフランシスコ音楽ライフは
幸先が良いかもしれません :)



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2018年4月15日 
@ San Francisco State University, Creative Arts Building, McKenna Theatre 
ヴァン・カイック弦楽四重奏団 
The Van Kuijk String Quartet 

メンデルスゾーン:弦楽四重奏曲 第4番 ホ短調 作品44-2 
西村 朗:弦楽四重奏曲 第2番「光の波」 
ドビュッシー:弦楽四重奏曲 ト長調 作品10



● Link

2016年6月9日木曜日

カタコンベで聴く瞑想の音楽 アタッカ弦楽四重奏団 ハイドン「十字架上のキリストの七つの言葉」


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6月8日 アタッカ弦楽四重奏団
    @Crypt Chapel of The Church of the Intercession 

今日は配慮が行き渡らず反省の1日でした。 

クラシックコンサート予習講座 室内楽の楽しみ方
  〜アタッカ弦楽四重奏団を聴く〜」にお越しいただいた方、
ありがとうございました。

アタッカ弦楽四重奏団のコンサートのチケットが完売してしまい、
来られなかった方には申し訳ございません。

コンサートが良かっただけに余計に反省の1日でした。
次回はチケットの残席なども随時チェックするようにしたいと思います。

さて、予習講座では、ハイドンの時代の楽器と現代の楽器の違いや、
演奏法の違い、演奏曲目の「十字架上のキリストの七つの言葉」
などについて解説しました。

それから徒歩移動して、コンサート会場のある教会へ。



アッパーマンハッタン、West 155th Streetの高台の上の広くて美しい墓地の傍にある
Crypt Chapel of The Church of the Intercession 
薔薇が美しく咲く庭の横の回廊を通って奥に行くと、右手に立派なチャペルがあります。



でも今日の目的地はチャペルではなく… 

普段は入れない、地下のカタコンベです。
墓地を左手に見ながら地下への階段を下っていくと…

薄暗い、蝋燭に照らされたとっても雰囲気ある空間が!!!


狭い空間ですが、とてもよく反響します。

このカタコンベでハイドンの「十字架上のキリストの七つの言葉」って
ぴったりすぎてぞくぞくします。

十字架に磔にされたイエス・キリストが遺したと言われる七つの言葉。
とても有名な内容ですが、その七つの言葉に音楽をつけたのは音楽史上、
4人の作曲家しかいません。

古くはシュッツ、ハイドン、デュボアときて、現在も存命のグヴァイドゥーリナ。
その中でもハイドンの「十字架上のキリストの七つの言葉」が最も有名。

構成は次の通り。

イントロダクション Ⅰ
第1ソナタ 「父よ!彼らの罪を赦したまえ」 Largo
第2ソナタ 「あなたは今日、私と共に楽園にいる」 Grave e cantabile
第3ソナタ 「ギュナイ(女の方)、これがあなたの息子です」 Grave
第4ソナタ 「わが神よ!何故私を見捨てたのですか?」 Largo
イントロダクションⅡ
第5ソナタ 「渇く!」 Adagio
第6ソナタ 「果たされた!」 Lento
第7ソナタ 「父よ!あなたの手に私の霊を委ねます」 Largo
地震  Presto e con tutta la forza



ニ短調という、レクイエムに多く使われる調性を用いていて、
またすべてが緩徐楽章(ゆるやかなゆったりとした曲調)で書かれていることからも、
一般的に瞑想的な音楽だと言われています。

ただし... 今日聴いたアタッカ弦楽四重奏団バージョン
(チェロのアンドリュー・イーさんと他のメンバーによる編曲)は、
その演奏スタイルにもよるのでしょう、「瞑想的」というより、
うちに秘めた激しさが猛烈な勢いで溢れ出す、とてつもなく壮大で
ドラマティックな音楽でした。

七つの言葉が発せられた状況、ストーリーが目に浮かぶ音楽。

たとえば、罪無きイエスが人々の代わりに神に捨てられるソナタⅣ
イエスにとって神に捨てられるということが、どれほど恐ろしいことか、
音楽がそれを容易に想像させてくれました。

また、最初の第一の言葉と第七の言葉で、
イエスは、聖なる神のことを「わが神」ではなく「父よ」と呼びかけるのですが、
特に最後の、自分の肉体の死がまもなくやってくることに気づいていたイエスが、
自分を御父にゆだねます、と言うときの「父よ」という呼びかけは、
幼児の父親に対する呼びかけにも似た純粋なものではなかっただろうか、と思えるほど。

そういった、イエスの少し人間らしい心の動きも音楽が見事に描いていました。 
作曲者ハイドンの偉大さを感じるのはもちろん、それを素晴らしい形でアレンジした
アタッカ弦楽四重奏団の音楽に圧倒されました。





黒の衣装で登場したアタッカ弦楽四重奏団。雰囲気たっぷり。

狭い空間なので音の振動がびりびりと伝わってきて、すごい迫力でした。
特に、最後の「地震」は、とても4人で演奏しているとは思えない、
まるでオーケストラのような壮大な響き。

一方で、繊細なピアニッシモも美しい。
ソナタⅦの消え入りそうなピチカートで告げられるイエス・キリストの
死の瞬間には、神々しい光が見えた気がします。

本日参加できなかった方へ。
とても素敵な場所なので、また別の機会にご一緒できますように。

クラシックコンサート予習講座は、
おすすめのコンサートがある際に随時企画していきますので、
興味のある方はぜひご参加いただければ幸いです。


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2016年6月8日 
アタッカ弦楽四重奏団 @Crypt Chapel of The Church of the Intercession 

ハイドン:十字架上のキリストの七つの言葉 



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2016年2月26日金曜日

北欧のイケメンクァルテット デンマーク弦楽四重奏団 Danish String Quartet


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2016年2月21日
デンマーク弦楽四重奏団Danish String Quartet 


リンカーンセンターでCMSのウィンターシーズンの目玉として開催されていた
「ベートーヴェン弦楽四重奏」シリーズの大トリは、デンマーク弦楽四重奏団。 
前日までチケット完売になっていましたが、
予想通り(というか先日CMSに寄ったときに問い合わせておいただけなのだが)
当日になったらチケットあったよ! 

デンマーク弦楽四重奏団のメンバーといえば、黒のタイトなスーツに身を包み、
シャギーな金髪をスタイリッシュに逆立てたヘアースタイルのイケメンズ。
形容するならば、ブルックリンのアングラのブティック店員...

完売というから若い女性にもさぞかし人気があるのだろうと思ったら、
室内楽界ではそんなこと起きないらしい。
やっぱりジャンルが弦楽四重奏だから右をみても左をみても圧倒的にお客さんはシニア。
うーん、ニューヨークの室内楽事情を知ることができました。
しかしベートーヴェンの後期の弦楽四重奏曲だけを取り上げた公演で
約950人収容可能な会場が満席になるなんて思っていませんでした。

隣の席の夫妻によれば、室内楽コンサートはたいてい退屈しているシニアでいっぱいになるのだそう。
ほとんどがリタイヤした先生とか暇を持て余したミドルクラスの方々とのこと。

デンマーク弦楽四重奏団といえば、北欧の素朴な民謡の旋律を弦楽四重奏で演奏し、
Dacapo Recordsから発売している録音がとても特徴的です。

Youtube: Arlige brudefolk and Sonderho Bridal Trilogy - part I -



CDにはPart I〜Part IIIまで収録されているのですが、
島国であるデンマークの中の2つの島の伝統的な婚礼音楽をもとに
弦楽四重奏に編曲しています。
憂いを帯びた美しい旋律と、ノン・ヴィブラートの素朴な、透き通る音色の
アンサンブルが心地よいです。 

CD情報:Wood Works: Danish String Quartet 


でも、今日は北欧の音楽ではなくて、ベートーヴェン弦楽四重奏曲、
しかも最晩年の作品です。

曲目は、

ベートーヴェン:
 弦楽四重奏曲 第14番 嬰ハ短調 作品131  
 弦楽四重奏曲 第16番 ヘ長調 作品135  
 弦楽四重奏曲 第13番 変ロ長調 作品130  第6楽章フィナーレ:アレグロ 

消化しきれないほどの内容の濃いプログラムです。
ベートーヴェンといえば、交響曲第9番が最後の作品と思われがちですが、
実はその後まだ3年の時間がベートーヴェンに残されていて、
その3年がとてつもなく難解で不可思議で深い作品を生み出しています。

彼は弦楽四重奏曲に没頭するのですが、ひたすら心の内面を掘り下げていく、
個人的なダイアリーのような音楽が展開されます。

難解だと言われることも多々あって、クラシック音楽初心者には、
敬遠されがちですが、でもこれらを聴かずに死ぬのは絶対もったいないです! 

私も学生の時には聴いても何がいいのかよくわからなかったのですが...
自分が死んだ時のお葬式に流してほしい曲の候補リストに載せたい!
というほどの愛好家もいます。

デンマーク弦楽四重奏団のメンバーも若いころは理解できなかったと言っていたっけ。

ちなみにベートーヴェンの死後行われた弦楽四重奏曲第14番の初演時に居合わせた
シューベルトは感極まって「この曲の後で作曲家は何が書けようか?」
と口走ったとされています。 

弦楽四重奏曲第14番はとても精神的に深い曲である一方、
ベートーヴェンの人間臭さを感じさせるエピソードが残っています。

ベートーヴェンは第14番を、甥のカールを軍士官に採用するよう取り計らった
シュトゥッターハイム男爵に献呈しています。

実は本来すでにほかの友人に献呈されていたにもかかわらず、
ベートーヴェンはこの世を去る2週間前に、
「自らの死後、誰が彼の面倒をみるのか」と心配し、ある種溺愛していた
甥のカールのためにシュトゥッターハイム男爵へとこの曲を献呈することにしたのです。

甥の就職のために自分の会心の作の献呈先すら変えてしまうとは、
彼の人間らしさが如実に現れている気がします。 

第16番は死の3ヶ月前に完成された弦楽四重奏曲。
(厳密に言えば、第13番の大フーガに変わる終楽章がこの後に作曲されていますが、
まとまった1曲としては第16番が最後。)

謎に満ちた音楽で、断片的な旋律が、一見脈絡なく即興的にめまぐるしく変化したり、
本当にこれが死を目前にした人間の書いたものなのだろうか、
と疑問符が浮かぶほど躍動感に溢れたスケルツォが現れたり。

特に第4楽章は不可思議。
「ようやくついた決心」という標題のついた序奏に始まるのですが、
この序奏の重々しいモチーフは「Muss es sein?(そうでなければならないか?)」
と付記されており、この問いに対する快活な第1主題は
「Es muss sein! (そうでなくては!)」と力強く応答します。
この問答が意味することが何か、というのはずっと議論の的になっていますが、
単に「借金を返すべきか?」「返さねば?」といった他愛も無い日常のメモ書き
という説あり、いやいや哲学的な命題を意味しているのだという説ありで、
様々な憶測を呼んでいて面白いです。 

弦楽四重奏曲 第13番 変ロ長調 作品130  第6楽章フィナーレ:アレグロ
は、第13番のフィナーレはベートーヴェン自身によって「大フーガ」に代わり
差し替えられたフィナーレですが、これだけを演奏するとアンコールのよう。

デンマーク弦楽四重奏団は曲によって第1ヴァイオリンと第2ヴァイオリンが
交代して演奏。これクァルテットを招聘するホールスタッフには結構重要な情報。
なぜなら演奏者は椅子や譜面台の高さを自分用に合わせているので、
ステージマネーシャーは曲ごとに椅子や譜面台を入れ替えないといけないから。

デンマーク弦楽四重奏にいたっては椅子の種類も好みが全員バラバラらしく、
全員違う椅子を使ってます。
ピアノ椅子を使う人からオーケストラ椅子を使う人、
客席用の椅子と思われるピンクの座面の椅子を使うヴァイオリニストまで(笑) 

昔とある弦楽四重奏団の来日時に、ツアー中に別のホールで
第1・第2ヴァイオリン奏者が入れ替わることを知らなかったので転換に失敗した
という情報をあらかじめ入手していたから、椅子の転換はバッチリと思っていたら
当日演奏された曲が予定されていた曲と違った、
なんて予期せぬ事態が発生したことがあったっけ…

リハーサルでは全部演奏しないことも多いから転換にしても演奏曲目にしても
演奏家とホールスタッフとのコミュニケーションは大事です。 

さて、デンマーク弦楽四重奏団の演奏は、結構ミスは多かったものの、
音色が個性的にもかかわらず4人の奏者の中でアンサンブルとしての
音色の統一感があってよかったです。

アレックス・ロスの過去のレビューには、デンマーク弦楽四重奏団は、
「手に負えない激しいエネルギーrampaging energy」を備えたクァルテット
と書いてあったので結構激しい演奏を予想していました。

たしかにとても推進力のありエネルギッシュな音楽だったけど、
彼らの演奏するベートーヴェンは、音楽の流れが、
絵付け職人が絵筆でなめらかに線を描いていくように
どこまでも引き延ばされていく感じ。
ノン・ヴィブラートの強烈な響きも刺々しさがなくて、
常に4つの楽器が美しい旋律を朗々と歌っていきます。
そしてその歌の響きが美しくブレンドするようにというのを
とても注意深く意識しているように聴こえました。

ベートーヴェンの後期の弦楽四重奏は、
その美しい響きをとことん強調して演奏するクァルテットもいれば、
その心理的な激しさを表現するために攻撃的な演奏をするクァルテットもいるけど、
デンマーク弦楽四重奏団の演奏は、思考を重ねた結果、
余計なものを排除したシンプルさを追求しているような気がしました。
でもそのシンプルさの中に、空気感が存在したり光が差し込む余裕があって、
音楽の流れがとても明るくて綺麗。
クライマックスも鳥が舞い上がったかと思うと急速に滑空するような
線のとても美しい流れ。 

ルックスもいいし日本人は北欧音楽好きだから、
デンマーク民謡の弦楽四重奏アレンジを入れたプログラムは日本でも受けそうですね。


● Link

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2016年2月24日水曜日

ジュリアード弦楽四重奏団 チェリスト ジョエル・クロスニック最終シーズン


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2016年2月22日
ジュリアード弦楽四重奏団withアストリッド・シュウィーン(チェロ)

From Juilliard School website

さて、私はちょっと姑息な手を使って、未だ美術館やコンサートを学生の身分で
享受しているわけですが、そうするとたまにコンサートでは
意外な席に座る羽目になることがあります。 

2月22日のジュリアード弦楽四重奏団のコンサートで、
ラストミニッツでチケットを買いに来た自称 “学生”に充てがわれた席は、
最前列センター。
奏者椅子の裏側が見える席なんてかなり久しぶり。 
というわけで奏者の動きがつぶさに見える場所で聴くことになりました。

本日の席からの眺め...


曲目は、 

モーツァルト:弦楽四重奏曲 ハ長調 K.465「不協和音」
ワーニック:弦楽四重奏曲 第9番 (ニューヨーク初演)
シューベルト:弦楽五重奏曲 ハ長調 D956 (チェロ/共演:アストリッド・シュウィーン) 

ジュリアード弦楽四重奏団、登場しただけで会場大盛り上がり。
なにしろ場所はジュリアード弦楽四重奏団のホームグラウンドともいうべき
ウェストサイド65丁目。
しかもこのカルテットで最古参、42年間チェロを務めたジョエル・クロスニックが
今シーズン退団するわけで、彼がメンバーとして演奏する機会は
もう残り数える程なわけです。 

ところが、前半のモーツァルトの弦楽四重奏曲「不協和音」の演奏が終わったところで
会場の1階中央で怒鳴り声が…
ダブルブッキングらしいトラブルが起きたようで約10分間に渡り係員との押し問答が。 
こういうときにどう対応するかでホールの力量がわかるわけですが、
昨日は警備員がやってきてやっと収まった次第。
その様子を心配そ〜に舞台袖からのぞいている舞台スタッフ… 

このあとワーニックによる現代曲が演奏される予定で、
プログラム後半には演奏に小一時間かかるシューベルトの大作 弦楽五重奏曲が
控えているのですが。どちらかが席を譲ったら済むことじゃないかなと思うのですが、
座席というのは特定の人たちにとってはとても重要なのでしょう。 

やっと落ち着いて次はワーニックの弦楽四重奏曲第9番。
リチャード・ワーニックRichard Wernickは1934年ボストン生まれの作曲家。
今年の6月の日本公演でも日本初演されるようです。 

本人による解説によれば、
音楽に精通していないほとんどの聴衆は彼の作品を、
それがとても半音階的という理由で、セリエル・ミュージックや十二音技法による
音楽と勘違いするようですが、そこにはセリエリズムも12音技法もなく、
彼はそうした作曲方法をとったことは一度もないそう。

彼自身は半音階の和音テクスチュアにとても魅力を感じているけれども、
その音楽はとても美学的な意味で「新古典主義的」とのこと。 

ワーニックの弦楽四重奏曲第9番は2つの楽章に分かれていて、
どちらも、いとも簡単にかりそめの価値や利益を促す、
あきれるほどに簡略化されたポピュリズム的なカルチャーへの反応だそう。

「Assertive, Aggressive」と付けられた第1楽章は、その名の通り、
独断的で攻撃的で揺らぎない強さがあります。

冒頭のトーン・クラスターから展開する複数の鋭いモティーフによって作られた楽章で、
かなり高度に展開された、ソナタ形式とも考えられうる構造を持っています。

 「“per una selva oscura…”」と付けられた第2楽章は、悲歌のようなもので、
第1楽章の記憶を思い起こさせながらも、果てしなく続く繰り返される
音の鼓動によって、喪失感をもたらします。
そして最後にチェロのソロが希望をほとばしらせて閉じられます。
2本の異なる弦の上で同じ音を弦を交互に変えて延々と弾いていく奏法が
オスティナートのように続いていくのですが、
弾く弦の違いによる音色の差異が生まれとても耳に残ります。
現代音楽にしてはとても聴きやすい曲。 

クロスニックは見た目とってもおじいちゃんになってしまったのですが、
どの曲でも独特のかすれのある音色が際立って
かつての彼の演奏が容易に思い起こされます。

ワーニックの作品は、ヴァイオリン2人がパート譜で演奏しているのに対して、
ヴィオラとチェロはスコアで演奏。
譜面がめくりやすいようにクロスニックは楽譜にピンクの付箋を貼っていたりして
なんだか可愛いらしい。

そしていよいよ後半のシューベルトの弦楽五重奏曲 ハ長調 D956
共演はチェリストのアストリッド・シュウィーン。 

シューベルトの生涯最後の室内楽作品であるとともに、
彼の弦楽五重奏としては唯一の作品。
死のわずか3ヶ月前に書かれた傑作です。

弦楽五重奏曲には、弦楽四重奏にヴィオラを加える「ヴィオラ型」と、
弦楽四重奏にチェロを加える「チェロ型」の2タイプあり、
モーツァルトやベートーヴェンはヴィオラ型を好み、
ボッケリーニやシューベルトはチェロ型を好みました。

ちなみにブラームスは若い頃にチェロ型を試みようとして不完全に終わり、
後年になってヴィオラ型で2曲の弦楽五重奏曲を残しています。

内声の充実を求めたヴィオラ型、厚く深みのある響きを求めたチェロ型。
作曲家によって好みが異なるのはとても興味深いです。

シューベルトのハ長調の作品といえば、交響曲「グレイト」が有名ですが、
「グレイト」に屈託のない明るさとか、華やかさに満ちているのに対して、
この弦楽五重奏曲は、心が引き裂かれるような切なく美しいメロディーが
連ねられているとても内面的な音楽。

全曲を通すと1時間近くかかるのですが、
ジュリアード弦楽四重奏団とアストリッド・シュウィーンによる演奏は、
まったく長さを感じさせない集中力と躍動感に溢れた演奏。

終楽章の最後はジェットコースターのようにスリリングな勢いに身を任せてしまって、
お客さんも思わず笑っちゃうほど。

終演後は聴衆すべてがスタンディングオベーション。 

でもコンサートはそれだけで終わらず。
終演後、42年間このカルテットに所属し今シーズンで退任するチェリスト
ジョエル・クロスニックを表彰してジュリアード音楽院からゴールドメダルが
贈られるというイベントが。 



後任は、その直前にジュリアード弦楽四重奏団と一緒に
シューベルトの弦楽五重奏曲ハ長調D956を演奏した、
アストリッド・シュウィーンAstrid Schweenと発表されました。

映画「25年目の弦楽四重奏」では歳をとったチェリストが
ベートーヴェンの弦楽四重奏曲 第14番を演奏する途中で
若い女性チェリストに交代するけど、ジュリアード弦楽四重奏団は、
その直前に一緒に演奏していたチェリストが後任ですよ!という発表で、
ドラマティックでなおかつ粋な演出。

アストリッド・シュウィーン。ジュリアード弦楽四重奏団初の女性奏者で、
初のアフリカン・アメリカンでもあります。

とてもチャーミングな笑顔でスピーチするクロスニック。 

会場にはロバート・マン(95歳?!)、ジョエル・スミルノフ、
サミュエル・ローズらジュリアード弦楽四重奏団の旧メンバーの姿も。

もちろんクロスニックの現在・過去の生徒もたくさん来ていて
あたたかい拍手を贈っていました。
いかにクロスニックが愛されているかが伝わってきました。 

今年の6月に予定されている日本公演はクロスニックのラストアピアランスだそうです。


---------- 
2016年2月22日 ジュリアード弦楽四重奏団  @リンカーンセンター Alice Tully Hall 
第1ヴァイオリン:ジョセフ・リン 
第2ヴァイオリン:ロナルド・コープス 
ヴィオラ:ロジャー・タッピング 
チェロ:ジョエル・クロスニック  

モーツァルト:弦楽四重奏曲 ハ長調 K.465「不協和音」 
ワーニック:弦楽四重奏曲 第9番 (ニューヨーク初演) 
シューベルト:弦楽五重奏曲 ハ長調 D956 (チェロ/共演:アストリッド・シュウィーン)


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2016年2月19日金曜日

弦楽四重奏の楽しみ方 エッシャー弦楽四重奏団 マスタークラス


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2016年2月18日
エッシャー弦楽四重奏団 マスタークラス 

from Escher Quartet website

ニューヨークを拠点に活動するエッシャー弦楽四重奏団による
マスタークラスがチェンバー・ミュージック・ソサイエティ
The Chamber Music Society of Lincoln Center(CMS)で行われたので
どんな人が聴講しに来るのか、
という興味もあってちょっと覗いてみました。

場所はジュリアード音楽院に隣接するビルの10階ローズ・スタジオ。 
100人ほど収容可能なこじんまりとした会場に入ると、
おおぉ… アジア人がいない。平均年齢めちゃくちゃ高い。 

知り合いの弦楽四重奏メンバーが、
弦楽四重奏のコンサート開いてもお客さんがシニア世代ばかりでね… 
とよくつぶやいているのを聞くけれど、まさにそう。
学生ひとりもいません。

人種の多様性を少しだけ広げ、平均年齢を少し下げるのに貢献してみました。 

ざっと眺めてみるとお客さんには、上品なユダヤ人の方々多し。

さらによく見ると、他の室内楽のコンサートに行ってもよく見かける
同じ面々がちらほら。 

どこに行っても同じ室内楽ファンに出会ってしまう、というのは
ニューヨークでも、東京でも、名古屋でも同じなのかも。
コアな室内楽ファンの人数というのは都市の大きさに関わらず、
ある一定数に留まるのかな? 

さて、今日のマスタークラスの講師はエッシャー弦楽四重奏団
2005年結成のニューヨークを拠点に活動するアメリカの弦楽四重奏団。
ツェムリンスキーの弦楽四重奏を全曲録音(2012-14年)したときに
話題になったのでご存知の方も多いかも。

ツアーの記録を見る限りでは、北米とヨーロッパツアーが中心で、
日本にはもしかしてまだ来演したことがないかも?

会場のCMSのレジデント・アーティストということで、
このマスタークラスが実現したもよう。 

ウェブサイトを見るとトップページの写真はなぜか
中国系の食料雑貨店の前で撮影されたもので
お店の名前が入っててなんだか宣伝っぽい? 

さて、本日の受講団体は2団体。
どちらも学部生によって結成されたとても若い弦楽四重奏団。

ジュリアード音楽院で学ぶ弦楽四重奏団と、
ノースカロライナ大学の音楽学校North Carolina School of the Arts
で学ぶ弦楽四重奏団です。 

ジュリアード音楽院の学生が先に受講することになっていましたが、
順番を入れ替えて、
先にノースカロライナ大学の学生による弦楽四重奏団が
受講することになりました。 

クァルテット名がないようなので、
ここでは仮にノースカロライナ大学のクァルテットをNCQ、
ジュリアード音楽院のクァルテットをJQとします。(長いので。) 

NCQが持ってきたのは、なんと20世紀イギリスを代表する作曲家、
ベンジャミン・ブリテンの弦楽四重奏曲 第1番 ニ長調 作品25。
極めてレアです。

2013年にブリテンの生誕100年記念によってブリテンが一躍注目を浴びるまで、
生演奏に触れる機会はあまりなかったと思います。

エッシャー弦楽四重奏団ですら、
数年前まで弾いてみようと思うことがなかったという。 

第二次世界大戦中に、
反戦家だったブリテンは兵役を逃れて
イギリスからアメリカに渡っていたのですが、
その間に書かれた作品(1941年)。

一度聴いたら忘れられないほどの印象的な冒頭に始まるのですが、
しばらく聴いていると洒落たタッチというか、
軽妙な雰囲気も多くて、ジョークみたい。

コープランドとかアイヴスといった、
20世紀アメリカを代表する現代作曲家の影響を受けているのでは、
という部分もあります。 

この曲のもっとも難しいのは、高音で極度の緊張を要求する、その冒頭部分。
ほぼ全員が二十歳の学生で構成された弦楽四重奏団が取り上げるには、
技術の面でも表現力の面でもかなりハードルが高い曲です。 
エッシャーQはブリテンを録音してないので、ベルチャQの録音をご参考にどうぞ。
BRITTEN, B.: String Quartet No.1 in D Major, Op.25

そのほかの部分も、幅広い音色の違いやコントラストを要求します。
思ったとおり、エッシャーQによる指導は、
テクスチュアの違いやカラーの表現方法を中心としたもの。
「ベルベット」「氷」「瞑想」「動揺」とか、
わかりやすい具体的な表現でイメージが伝わるように指導。 

アメリカっぽいなと思ったのは、常に褒めながら音楽作りをしていくところ。
「better… much better…great!」などと繰り返し褒めながら少しずつ直して、
だんだん音色が変わっていきます。 

短い時間で習得するのは難しい課題ですが、
マスタークラスが終わることには、
色彩がとても豊かになって、
複雑なテクスチュアの曲だということが随分わかるように聴こえてきました。
化学変化のよう。

若い弦楽四重奏団は単に多様な音色の出し方を知らないだけなので、
それを教えてもらうだけで、
平坦な音楽が色彩豊かな音楽に変わっていきます。
逆に言えば、受講者が結構高いレベルの弦楽四重奏団だと、
そうでない弦楽四重奏団ほど劇的に変わるわけではないので、
聴講者にとっては違いを聴き分けるのがちょっと難しいよね、という感じ。
後半に演奏したJQの方は後者にあたるかも。

面白いなと思ったのは、エッシャーQの第1ヴァイオリンのアダムさんが
「ソロ演奏ではある部分で第1ポジションを選ぶか第2ポジションを選ぶか、
といったポジションの違いは個人の出したい音に依っているけれども、
弦楽四重奏では、グループ全体の音色のために決めなければならない時がある」
と言っていたこと。

実際、ヴィオラの子がポジションを変えて演奏したら
とたんに音色が他のメンバーとマッチしたので、
会場が一気に湧きました。 


2団体目のJQが受講曲に選んだのは、
レオシュ・ヤナーチェクの弦楽四重奏 第1番 「クロイツェル・ソナタ」。 
チェコの中でもボヘミアよりもより東のモラヴィア地方に生まれたヤナーチェク。
そのせいか、彼の音楽は、
ボヘミアのスメタナやドヴォルザークとはちょっと違って、
野趣とでも言うべき民族色がくっきりと現れています。

弦楽四重奏曲第1番は、ベートーヴェンのヴァイオリンソナタ
「クロイツェル」を物語の重要な小道具として用いたトルストイの小説
「クロイツェル・ソナタ」のあらすじを、なぞるように作曲されたもの。

1923年の作。同時代の作曲家の一歩も二歩も先を行く、
あまりにも現代的な響きを持つ特異な作品です。 

トルストイの原作では、猜疑心深い老人が、
ベートーヴェンの「クロイツェル・ソナタ」を自分の若い妻と、
ヴァイオリニストが親密な雰囲気で演奏し談笑しているのを見て
不倫の仲にあると思い込み、殺害するに至る心理が
モノローグとして語られます。
そして「恋愛の原動力となる性欲は人間生活の悪」とする持論が展開されます。

けれども、ヤナーチェクは結婚に縛られ殺されてしまった物語のヒロインに
むしろ同情と共感を寄せていました。
そしてこの物語の悲劇的な結末に対するトルストイに
疑問を投げかけるかのように、この作品を書きます。
したがって、このような心理的で特異な音楽が生まれたのです。

実際、この曲の背景には、当時すでに60歳を過ぎていたヤナーチェク自身が
夫のある身である38歳年下の女性、カミラ・シュテッスロヴァーに
熱烈な恋慕を寄せていたという事情があります。
彼が生涯に彼女に送った手紙は720通以上とか。
その彼女への恋文が、有名な弦楽四重奏曲 第2番「内緒の手紙」となるわけ。

曲の内容はともあれ、
まず、 JQの演奏は正直二十歳の子たちとは思えない
かなりレベルの高いものでした。
経歴を見ると、すでに国際コンクール受賞歴を持っている子もいるし、
皆スカラシップやフェローシップを受けていて、
楽器もG.P.マッジーニやらP.グァダニーニやら、
名器を貸与され使用している子がほとんど。
ソロでも今後の活躍が期待できそう。 

そして見た目にも興味深くて、
第1ヴァイオリンとヴィオラはアフリカン・アメリカン、
第2ヴァイオリンは白人、チェロは中国人。

3人はスーツなのに第2ヴァイオリンの白人の女の子は
一人だけ真っ赤なセーターを着て登場。
そしてヴィオラのアフリカン・アメリカンの男の子は
ドレッドヘアーです!!!

うーん、こうした若い弦楽四重奏団が今後アメリカには増えていくんだろうな、
と思うととても興味深いです。 

さて、エッシャーQのメンバーも、
まずJQの演奏が期待以上に良かったらしく
「すごく上手いよ! でもこの曲は決してアグレッシブに弾くべきじゃないんだよ」
と言って、さらに完成度の高いものにすべく、
極めて具体的なプロとしての様々なテクニックを伝授していきます。 

弓の使い方ひとつでキレのよい音楽になり、客席にも大きなどよめきが。
指導に対する反応も早くて、即座に音色が変化していくので、
エッシャーQも教えがいがあるというもの。 

楽譜の版についても、アドバイスが。
JQが使っていた版は、ボヘミア弦楽四重奏団の第2ヴァイオリン奏者だった
ヨゼフ・スークの解釈が加えられた版だったよう。

1975年以降、スメタナ弦楽四重奏団のヴィオラ奏者、
ミラン・シュカンパが原典に還ろうと研究を重ねた
新校訂版を用いる団体も増えてきています。

新校訂版も見てみると、ヴァイオリンの解釈が変わるよ、
と勧めるエッシャーQ。
校訂者の演奏上の書き込みは解釈の妨げになる場合もある
と伝えたかったようです。

カルテットの音楽作りの裏側をつぶさに観察できる点で、
こうしたマスタークラスは演奏以上に面白いなと思います。

弦楽四重奏曲は一般的に長いし、聴き方や楽しみ方がわからない、
という場合には、マスタークラスを覗いてみると、
どうやって音楽を作っていくのかがわかり、
楽しむ方法のきっかけが見つかるのではと思います。 

さて、エッシャー弦楽四重奏団は、
この冬リンカーンセンターで開催されている
ベートーヴェンの弦楽四重奏曲演奏会シリーズに出演することになっていて
明日2月19日はリンカーンセンターのAlice Tully Hallで
ベートーヴェンの弦楽四重奏曲の後期の大作たち、作品132、130、133を
演奏することになっています。

そしてその2日後には、デンマーク弦楽四重奏団が
ベートーヴェンの弦楽四重奏曲 作品131、135、130(抜粋)を、
同じベートーヴェン弦楽四重奏曲演奏会シリーズのトリで演奏する予定。
が、どちらも完売。
ベートーヴェンの後期の弦楽四重奏曲は人気が高い...



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エッシャー弦楽四重奏団によるマスタークラス 
@リンカーンセンター チェンバー・ミュージック・ソサイエティー(CMS) 

受講者
ノースカロライナ大学  
第1ヴァイオリン: Avital Mazor  
第2ヴァイオリン:Bennett Astrove  
ヴィオラ:Peter Ayuso  
チェロ:Gustavo Antoniacomi 

受講曲 ブリテン:弦楽四重奏曲 第1番 ニ長調 作品25


ジュリアード音楽院  
第1ヴァイオリン:Randall Goosby  
第2ヴァイオリン:Mariella Haubs  
ヴィオラ:Jameel Martin  
チェロ:Yi Qun Xu

受講曲 ヤナーチェク:弦楽四重奏曲 第1番 「クロイツェル・ソナタ」



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2016年2月13日土曜日

清潔感が心地よい! ドーヴァー・クァルテット


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2016年2月11日
ドーヴァー・クァルテット 

from Dover Quartet website


おそらくニューヨークにいる音楽愛好家は、
同じ日の同じ時刻に2つ以上行きたいコンサートがある、という
嬉しくも悲しい発見をすることが結構頻繁に起こるのではと思います。 

2月11日はホーリー・トリニティー教会Horry Trinity Churchで
ジュリアード弦楽四重奏団のコンサートが、
同じ時刻にリンカーンセンターの
デイヴィッド・ルーベンシュタイン・アトリウムDavid Rubenstein Atriumで
ドーヴァー・クァルテットノコンサートがあり、
どちらに行こうか迷いながらも、
初聴のドーヴァー・クァルテットの方に行ってきました。
こちらは無料だったし、ジュリアード弦楽四重奏団の演奏は来週も機会があるので。

リンカーンセンターの
デイヴィッド・ルーベンシュタイン・アトリウムDavid Rubenstein Atriumでは
毎週木曜日の夜7時30分から無料のコンサートが開かれています。

ヒップホップ、ポップス、ラテン、ロック、ソウル、カントリー、
ジャズ、ワールドミュージック、クラシック、などなど
ジャンルは様々なのですが、
クラシックも結構良いプログラムのものがたまに見つかります。

壁一面が緑に覆われた「緑の壁」の雰囲気がよくて
コンサートがなくてもたまに休憩しにくるだけでも気持ちいスペースです。
そもそもここはリンカーンセンターのディスカウントチケットなどを扱う場所。
そこにカフェなどの休憩スペースが作られていてくつろげるようになっています。




 2月11日のアトリウム・コンサートは、
アメリカの若手弦楽四重奏団ドーヴァー・クァルテット。

プログラムにショスタコーヴィチの弦楽四重奏曲が含まれていたりして、
ニューヨークはクラシック音楽の敷居が低くて本当にすごいと思います。
本格的な弦楽四重奏のプログラムが無料で楽しめるコンサートです。

ちなみに来年には以前紹介したミンゲット・クァルテット
コンサートも予定されていて、
若手だけでなく北米ツアー中の中堅まで無料で聴けてしまうお得さ。

ドーヴァー・クァルテットは、
ハイレベルな戦いとなった第11回バンフ国際コンクール(2013)の覇者。
私はコンクールおたくではないので、
それぞれのコンクールの目指すところには詳しくはありませんが、
バンフ大会は、優勝クァルテットがその時点でもっとも成熟した
クァルテットとは限らない、ともいわれるコンクールだそう。
20代前半から30代まで出場しているので、結成まもないクァルテットから
プロとして活躍しているクァルテットまで出場します。
何を基準にするのか審査が難しそう。

第11回のバンフ大会では、
まだ20代前半の結成間もない若手弦楽四重奏団の優勝に、
ある人は異議を唱え、別の人はこれからの彼らの成長に期待を込めたそう。

たしかにその時のファイナル出場クァルテットをみると、
アタッカ・クァルテットや、シューマン・クァルテット、など
すでにここでも紹介した、ユニークで、自分たちだけの音楽を持った
クァルテットが並びます。

コンクールに結果はつきものですが、ハイレベルなコンクールでは、
技術力の高さは無論のこと、もはや音楽の好みのレベルで審査をしなければ
ならないのでは...
審査員の苦労が窺えます。 

昨日のドーヴァー・クァルテットの演奏は、
とても真面目できっちりとした清潔感のある音楽を奏でる
クァルテットという印象。

さわやかで気持ち良く聴けますが、逆にいえば、
強烈な個性は感じられないので、
歌心に満ちたクァルテットとか、「なにこれ、おもしろいじゃん」
という驚きをもたらしてくれるようなクァルテットが好みの私には、
優美な流れとか、ひとひねりがあればなもっと好きになるかも
という感じがしました。
でも、これは完全に好みの問題です。

ひたすらに音楽にまっすぐに向き合い優等生っぽいところが、
このクァルテットの持ち味で良いところなのかも。
気持ち良く聴けます。そして安定した技術力。

前半に演奏されたのは、シューマンの弦楽四重奏曲 第1番 作品41-1。
1840年の9月に裁判の末、当代きっての女流ピアニスト、
クララと結ばれたロベルト・シューマンが
充実した創作活動を展開していた頃の作品。

特に1842年には、シューマンは3曲の弦楽四重奏曲、
ピアノ五重奏曲、ピアノ四重奏曲をほとんど一気に書き上げた、
もっとも実りある1年です。

同年に書き上げられた3曲の弦楽四重奏曲の中の第1番は、
いかにもロマンティックで、
一見とりとめもなく見える甘美なメロディーを基調に、
音楽の明暗が劇的に変化する曲。

人間の美しい部分もドロドロした部分もすべて正直に音楽で語ってしまう
シューマンらしい作品だと思います。

この作品を聴くと、いつもあちこちにベートーヴェンが
隠れているような気がします。

たとえば、第3楽章の冒頭。
ベートーヴェンの「第九」交響曲のアダージョにそっくりです。

そして終楽章には、バクパイプを思わせる低音の持続音の上に
カデンツ風の華やかなメロディーが2回繰り返し演奏されますが、
ここを聴くと、どうしてもベートーヴェンの弦楽四重奏曲 作品132の第2楽章を
連想してしまいます。

個人的には終楽章がもっとも好きなのですが、その理由は、
終楽章には、第3楽章のテーマを裏返しにして作られた
コラールが数小節だけ登場するから。

儚い美しさをほんのわずかな時間だけ聴かせて名残惜しく思わせる、
シューマンが憎らしくなるほどの美しさです。 

後半に演奏されたのは、ショスタコーヴィチの弦楽四重奏曲 第2番 作品68。
ドミトリー・ショスタコーヴィチはベートーヴェンに匹敵する、
15曲もの弦楽四重奏曲を残しています。

ソビエト連邦体制下のロシアという特殊な環境で、
常に当局の顔色を伺いながら書かざるを得なかった交響曲に対して、
弦楽四重奏曲では、本音のショスタコーヴィチを聴くことができると言われます。

第2番が書かれたのは1944年。第2次世界大戦の最中のこと。

第1楽章は無骨なメロディーが複雑に展開され、
第2楽章は独白のような悲劇的なメロディーが、
まるでそれが書かれた戦時中の重苦しい雰囲気を反映しているかのよう。
第3楽章は不穏な空気を醸し出すワルツ。
第4楽章は光と影が交錯する変奏曲形式。

この曲はイ長調で書かれていながら、
前半に演奏されたシューマンのイ短調よりも暗く聴こえてしまうという
不思議な作品。 

ドーヴァー・クァルテットの演奏は、
シューマンもショスタコーヴィチも、
心がざわめくような音色ではなく、ひたすらきちんと美しい。

どちらの曲も演奏によってはひどく心をかき乱されるので、
こうして落ち着いて演奏が聴けてしまうというのはある意味すごいことかも。

ひとりだけiPadに投影した楽譜を足元のBluetooth操作ペダルで
譜めくりして演奏していたヴィオラの女の子ミレーナさん。

しいていえば、彼女のヴィオラは少し野生的な音色をもっていて、
他の3人の男の子の真面目さの中に色をつけていました。
ショスタコーヴィチはヴィオラが活躍するところが多かったので
殊に耳に残りました。




 ---------- 
ドーヴァー・クァルテット  @リンカーンセンター
                  デイヴィッド・ルーベンシュタイン・アトリウム
第1ヴァイオリン:ジョエル・リンク Joel Link 
第2ヴァイオリン:ブライアン・リー Bryan Lee 
ヴィオラ:ミレーナ・パハロ-ファン・デ・シュタット Milena Pajaro-van de Stadt 
チェロ:カムデン・ショウ Camden Show 

シューマン:弦楽四重奏曲 第1番 イ短調 作品41-1 
ショスタコーヴィチ:弦楽四重奏曲 第2番 イ長調 作品68 



 ● Link 
 Dover Quartet


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2016年2月4日木曜日

ニューヨーク生まれの気鋭の弦楽四重奏団 アタッカ・カルテット


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2016年2月2日
アタッカ・カルテット リサイタル
コシチュシコ・ファンデーション The Kosciuszko Foundation


from Attacca Quartet website


ニューヨークを拠点に活躍する弦楽四重奏団アタッカ・カルテットが
ニューヨークにあるポーランド系の財団でコンサートを行うので、
どんな場所だろう、と興味を惹かれて行って来ました。

場所はEast 65th Streetにある、コシチュシュコ・ファンデーション。
タデウシュ・コシチュシュコは
ポーランド・リトアニア共和国の将軍にして政治家、
アメリカ合衆国の軍人で、1794年の蜂起の指導者として
ポーランドとリトアニアでは国民的英雄だそう。

Kosciuszko」なんで名前読めないし覚えられないよ、
と思っていたら、こんなエピソードがあるそうで

アメリカ独立戦争のときのフィラデルフィアでの逸話。
ジョージ・ワシントンが、「君のそのコシチュシュコっていう苗字は
僕らには発音しにくいよ」と言ったところ、コシチュシュコは、
「僕の姓が言いにくいって? 君のワシントン(Wa-shing-ton)も
僕のコシチュシコ(Koś-ciu-szko)も
どっちもたったの3音節なのにかい?」と言ったそう。

大抵の人が読めなかったり、うまく発音できないのも納得。






リサイタルはこじんまりとしたサロン風のホールで開催。
壁には主にポーランドの作家たちによる絵画がところ狭しと並び
美術館かギャラリーのよう。
2階がホールですが、1階にもスタインウェイの1865年製の
素敵なパーラーグランドピアノが置いてありました。


1曲目はハイドン作曲 弦楽四重奏曲 作品74-1
第2アポーニー四重奏からの1曲。
作品74の3曲はロンドンのハノーヴァー・スクエアの
パブリック向けのコンサートシリーズのために書かれたせいか、
ハイドンのほかの弦楽四重奏とはかなり趣が異なり
いずれも特徴的な曲が多いですが、
作品74-1はその中でも半音階的な転調が殊に耳に新鮮。
そして、第4楽章の印象的なドローン。
スコットランドのバグパイプをつい思い浮かべてしまいます。

2曲目は存命の作曲家、リチャード・ウィルソンさんの作品。
ハイドンでは、当時の演奏スタイルを考慮に入れた音楽を奏でたい
というアタッカ・カルテットは、バロックとモダンの間の
ハイブリッドな弓を使っていましたが、この曲ではモダン弓に持ち替え。
ウィルソンさんご本人による慇懃なご挨拶(その結果お客さんは大爆笑)と、
曲目解説の後に演奏が始まります。
1982年に書かれたこの曲はかなりシリアスな内容で、
亡くなった友人へのエレジー(悲歌)の性格が強い曲。
無調ですが、そのわりにとても聴きやすい。
この曲が基本的には「歌」である点、
そして短2度とか、増4度といったわかりやすい
不協和な響きを6度や7度と組み合わせて重ねている点で、
とても古典的な手法に則った無調作品といえるのでは。

最後はグリーグ作曲 弦楽四重奏曲 ト短調。
エンタメ性が高いせいか、意外に生演奏に出会える確率が低い曲。
板張りの床を持つ小さなホールなので、
床を這って伝わる音の波がものすごい迫力。

いつも思うのですが、チェロのアンドリューさんの
表情(顔芸)がとても目を引きます。
ピアニストや指揮者の顔芸についてはいろいろ研究があるようですが、
弦楽器奏者の顔芸の研究ってあるのでしょうか?

アンコールはアタッカ・カルテットのアルバムにも収録されている
ジョン・アダムズ作曲 Toot Nipple でした。


-----------
アタッカ・カルテット  @コシチュシュコ・ファンデーション
第1ヴァイオリン:エイミー・シュローダー
第2ヴァイオリン:徳永慶子
ヴィオラ:ネイサン・シュラム
チェロ:アンドリュー・イー

ハイドン:弦楽四重奏曲 ト長調 作品74-1
リチャード・ウィルソン:弦楽四重奏曲 第3番
グリーグ:弦楽四重奏曲 ト短調





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