こんにちは、MUCHOJIです。
初めて当ブログをご訪問の方は、
「はじめに」をお読みください。
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【ミュージック・フォー・チェンジ:禁じられた国々】
クロノス・クァルテット
@Bing Concert Hall (スタンフォード大学)
サンフランシスコを拠点に
世界各地で活躍する
クロノス・クァルテットを
聴きに、スタンフォード大学に
行ってきました。
サンフランシスコで聴いてみたい!
とずーっと思っていた弦楽四重奏団。
クロノス・クァルテットといえば、
その卓越した音楽性と腕前で、
クラシック音楽の古典のみならず、
現代の若手作曲家や
他ジャンルの作曲家と一緒に活動したり、
現代の政治や社会を反映した
挑戦的な作品を演奏したりすることで有名。
スタンフォード大学には
Bing Concert Hallという有名なホールがあります。
遠くからでも目を引くかっこいいデザイン。
円柱の外側に直方体をかぶせたような
ユニークな形です。
このBing Concert Hallは
とても贅沢に空間が使われていて
居心地が良く
気持ち良いホールです。
ホール内にたどり着くまでに、
テラス、ロビー、竹などが植えられた中庭、回廊、
と何重にも空間があるので
外の音はホール内では完全に遮断されていて、
音楽のみに集中できます。
日本のホールは
遮音の設備がきちんとしているところが
多いと思いますが、
アメリカの大きな都市のホールは
とくに古いホールに多いですが、
遮音が不十分なことがあり、
よく救急車や消防車、街の音が
普通に音楽演奏中に割り込んでくるのです(笑)
たとえばニューヨークのカーネギーホールだと、
救急車のサイレンや車のクラクションが
演奏中にも聞こえてきて、それはそれで、
ニューヨークにいるんだなという感じがして
面白くもありますが。
開場前に少し早めに着いて、
大学構内も散歩してみました。
スタンフォード大学は
サンフランシスコからは
少し離れた郊外にあるので、
土地をゆったり使えるのでしょう。
広大な中庭があったり、
空間をゆったり使った
修道院風の建物が並んでいます。
広いので校内の移動は車か自転車で。
さて、今日のプログラムは
かなり刺激的でした。
「MUSIC FOR CHANGE:禁じられた国々」
と題したプログラム。
2017年にトランプ大統領が、
イスラム教7か国の人々の
アメリカ合衆国へのアクセスを
厳しく制限する大統領令に署名しました。
クロノス・クァルテットの
本日のプログラムは、
この大統領令への挑戦的な反応。
入国が禁じられた7カ国の出身の作曲家
あるいはその7カ国に関わる作品を
取り上げたものです。
そもそも弦楽四重奏団の結成まもなくの
45年前から、クロノス・クァルテットは、
ジョージ・クラムの
戦争反対を掲げた作品
『黒い天使たち Black Angeles』を
演奏したり、
冷戦時代を扱うアルバム『Howl, USA』
をリリースしたり、などなど、
その時代時代の瞬間を反映する作品を
積極的に取り上げてきた団体。
常に新しい分野を求めて
進化し続けている弦楽四重奏団だと思います。
今日は委嘱作品が多かったです。
作品が出来上がるまでに、
クロノス・クァルテットが、
MySpaceなどで見つけて、
自分たちが惚れ込んだ作曲家やバンドに
個人的にemailを送るところから始め、
何度も彼らとやり取りをし、
お互いのCDを交換し合ったりして
強い絆をつくり、作品を依頼する…
というプロセスがあることを知り、
新しい音楽を生み出すことへの
熱意を感じました。
作品は、日本人の私には
あまり馴染みのない国々の
初めて聴く曲ばかりでしたが、
どの曲にも
その国固有のメロディーが
モティーフとして使われているので、
繰り返されるうちに、
中東やアフリカの国々それぞれに
特徴あるメロディーや音階が
存在することが理解できました。
さらに、中国・インド・コーカサス地方の
音楽に共通する要素もあって、
かつてシルクロードを通じて
音楽も運ばれていたのだろうな、
と感じられる部分がたくさんありました。
曲と曲の間は、
イスラムの国々の都市で録られたと
思われるテープが流され、
街中の車の行き交う音、クラクション
サイレン、コーランを唱える声などが
入り混じったテープから
音楽へと自然につながっています。
弦楽四重奏とテープのみならず、
トライアングル、タンバリン、ゴングなどを
使っている作品もありました。
途中に休憩もなく、
ほぼ切れ目なく
すべての曲が連続して演奏されていたので、
終わったときは、
音楽で頭も心も満腹状態でした。
日本でこうしたプログラムを
弦楽四重奏の公演で行うのは
なかなか大変だと思いますが、
アメリカの、
とくにスタンフォード大学のような
知識人が集う場所では
関心を持つ人が多いようで、
開場は賑わっていました。
テーマも演奏も会場の雰囲気も
ちょっと尖っていて
とにかくかっこよかった!
弦楽四重奏の公演では
日本でもアメリカでもシニアのお客様が
多いと思いますが、
今日は30代40代くらいの聴き手もたくさん。
素晴らしい音響の会場で
意欲的な作品の数々を聴くことができ、
刺激的な体験でした。
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2018年10月20日
@ Bing Concert Hall, Stanford University
Kronos Quartet
Music For Change: The Banned Countries