2017年2月15日水曜日

【美しすぎて涙が止まらない... 】サヴァール&エスペリオンXXIによるヴェネツィアからの音楽の旅


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こんにちは、MUCHOJIです。
初めて当ブログをご訪問の方は、「はじめに」をお読みください。
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胸の奥から言いようのない感情が湧き出てきて、涙が止まらなくなる… 


ジョルジュ・サヴァールとエスペリオンXXIが演奏する、ジョン・ダウランド作曲:涙のパヴァーヌ(1604)を聴いて、そのあまりの美しさに、ぼろぼろ涙が溢れて舞台が霞んで大変なことになってしまいました。 

2月12日に開催された、古楽奏者の第一人者、ジョルディ・サヴァールと、彼のグループ、エスペリオンXXIのカーネギーホールの公演。 


美しい空間が心地よい、古楽にぴったりの大きさのZankel Hallで、忘れ去られたいにしえの音楽に耳を傾ける。贅沢なひととき。 




ヴェネツィアで発展した音楽が、ヨーロッパの各地に ヴェネツィアの音楽がヨーロッパへと与えた影響を100年にわたって俯瞰する素晴らしいプログラムでした。 

ヴェネツィアから始まってイタリア各地、イングランド、フランスの宮廷、フランスの地方、ドイツ、そして最後にサヴァールの出身であるイベリア半島までを巡る音楽の旅。 

クラシック音楽は真面目でハイソな音楽、と思っていらっしゃる方へ。

ルネサンスの音楽を聴いたら、なんて、自由で、おおらかで、洒落た音楽なんだろう、と驚かれるのではないでしょうか。

絶妙な掛け合いと間の取り方でコミカルにパーカッションが活躍する曲。
ギターがチャーミングな音色を奏でる曲。
ヴィオールが叙情的なロマンスを歌う曲…

口琴で笑いをとるアンコールまで、計算され尽くした完璧なプログラム。




さらに、コンサートの最後のサヴァールの挨拶が見事すぎて、再び涙。

要約すると、 

「今日、演奏した音楽はヴェネツィアから派生して、ヨーロッパの各地に伝播した音楽です。ヴェネツィアの音楽は音楽家たちが国を越えて各地に広がっていくことで、ヨーロッパ各地の音楽に影響を与えて、素晴らしい音楽を生み出していきました。現代でも、そして今日の演奏家たちも、様々な国から来ています。音楽にとって移住は問題ではないのです(Immigration is not a problem )。 」



最後のフレーズ  “Immigration is not a problem.”



D.トランプ反対派の多いニューヨークでこんなことをおっしゃるものだから…
会場が賛同の歓声に湧き、地響きのように聴こえました。 

悦びをもたらすだけが音楽ではない。音楽だからできる人類への貢献もあるはず。
と語るサヴァールが目指す、音楽を通した人類への貢献は可能に違いないと確信させられるような見事なスピーチでした。




最後に蛇足ですが、私がいつもしている古楽のコンサートの開演前の楽しみ方を紹介します。

私はだいたい開演の20分くらい前に到着するようにしています。その理由は、


【 楽器を見る】
古楽の楽器は木や動物の皮、内臓、毛などでできたものが多いので、急激な温度や湿度の変化に敏感です。
そのため、コンサートが始まる前から、舞台上に楽器が置いてあることが多いです。
聴き手にとってはじっくり楽器を見るチャンス。
ぜひコンサート前に舞台の近くで観察してみてください。
現代の楽器と異なる点がさまざま。
ヴィオラ・ダ・ガンバのネックの先に艶やかな女性の顔の彫り物があったり、側面に細かい幾何学紋様や植物の装飾があったり、ドラムの皮に紋様が描かれていたり…
一点一点装飾などが異なる世界に一つしかない楽器の数々を見比べてみてください。
もちろん、現代と全く異なる形の、弓の形にも注目。 


【使っている道具を見る】
楽器の近くに置いてある小物も見てみると楽しめます。
松やにを入れた小箱にも素敵な装飾があったり、小さな楽器(口琴など)を入れる楽器ケースにも、演奏家の細部に至るまでのこだわりがみられます。




バッハやモーツァルトといった、音楽室の壁にかかっている肖像画の作曲家たちよりも数百年昔の音楽は、学校教育では習いませんし、知られていないけれども魅力的な音楽に溢れています。

ルネサンスの音楽を聴くとき、いつも時間の流れる感覚が現代と異なる気がします。
というのも、やさしく語りかける音楽に夢見心地になって、時間がゆっくり流れているような錯覚にとらわれるからです。

ぜひ食わず嫌いにならずに、ゆったりと流れる心地よい時間を体験して頂ければ幸いです。

中世・ルネサンスの音楽は、私のクラシック音楽講座(不定期開催)の第1回、でも詳しく紹介していますので、もっと詳しく学んでみたい、という方はメッセージにてお問い合わせください。次回の開催日をご連絡いたします。


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2017年2月12日
ジョルディ・サヴァール& エスペリオンXXI
@Carnegie Hall, Zankel Hall


Jordi Savall, Director and Treble Viol
Philippe Pierlot, Alto and Bass Viols
Imke David, Tenor Viol
Lorenz Dufschmidt, Bass Viol
Xavier Diaz-Latorre, Theorbo and Guitar
David Mayoral, Percussion



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【知る人ぞ知る!?】 室内楽マニアが集うコンサート・ヴェニュー発見!


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知る人ぞ知る!? 新たなコンサート・ヴェニュー発見! 

夜な夜な複数の会場でクラシック音楽、オペラ、演劇、バレエなどが開催されているリンカーンセンター。 

じつはそのちょうど裏側にあたる場所に、格安で上質の室内楽が聴けるヴェニューがあることを発見しました!




そこはリンカーンセンターの裏側にある韓国系の教会。
Good Shepherd Presbyterian Church 





ジュピター・シンフォニー・チェンバー・プレイヤーズという名前で、アメリカ国内だけでなく、世界各地から一流の演奏家が集い、室内楽を演奏。

演奏メンバーは毎回異なります。
月に2〜3回コンサートが開催されていて、公演はすべて同日2回公演。
午後2時開演の部と午後7:30開演の部があります。 

メトロポリタン・オペラやニューヨークシティバレエのあるリンカーンセンターの華々しさに対して、それほど知られていないようですが、マニアックな室内楽ファンが通い詰めているコンサートシリーズです。

教えてくださったのは昔ニューヨークに住んでいた頃の知人ですが、送られてきたリンクをクリックして最初に目に飛び込んできた演奏家の名前は、日本のコンサートホールで企画制作として働いていたときに何度も来演してくださっていたヴァイオリニスト、チャン・ユジンさん。

彼女の先生のミリアム・フリード先生、そして他にも若手で優れた演奏家たちの名前がずらり。

from Yoo Jin Jang Official website

プログラムは、

 J.S.バッハ:インヴェンションより抜粋(2つのヴァイオリンのための)
モシュレス:幻想曲、変奏曲とフィナーレ Op.46
ファニー・メンデルスゾーン:弦楽四重奏曲 変ホ長調
ベートーヴェン:ピアノ三重奏曲 第6番 変ホ長調 O.70-2 





注目は、なかなか生演奏を聴けないファニー・メンデルスゾーンの弦楽四重奏曲。

450曲以上の作品を書いたと言われているファニー・メンデルスゾーン。
フェリックス・メンデルスゾーンの姉として生まれ、優れた音楽的才能を発揮します。

当時女性が作曲家・演奏家として活躍するのは簡単ではありませんでした。
実際ファニーの父も彼女が音楽家として活躍することに反対。

幸い、画家で女性の社会的な活躍に理解ある夫に恵まれたファニーは、家庭を切り盛りしたり、息子を育てたり、夫のビジネス業務を整理たり、日記をつけたりしながら、200名もの客が訪れるコンサートを企画・運営し、さらに作曲をしていました。

自分の父が1835年に亡くなると、日記をつけることをやめ、それ以降は彼女の作曲した作品が日記の代わりとなりました。 




メンデルスゾーン姉弟といえば、兄弟愛を超えているのではと疑われるほどの強い絆で結ばれていたことでも有名。

たとえば、1829年に姉のファニーは、弟のフェリックスに次のような手紙を送っています。


私はあなたの肖像画を前にしながら、愛しいあなたの名前を何度も呼び、私の傍にいるかのようにあなたのことを思っています。私は泣いています。私はこれからの生涯、毎朝、どの一瞬でも、心の底からあなたのことを愛します。そうしてもヘンゼル(夫)に悪いとは思いません。 

(ファニーからフェリックスへの手紙 1829年10月2日) 



じつは面白いことに、この日には表のリンカーンセンター Allice Tally Hallでは弟のフェリックス・メンデルスゾーンの弦楽四重奏曲第2番が演奏されていて、一方、まったく同じ時刻に教会では姉のファニー・メンデルスゾーンの弦楽四重奏曲が演奏されていました。

フェリックス・メンデルスゾーンの弦楽四重奏曲第2番といえば、フェリックスが18歳のときに書いた、姉へのラブレターの意味も込められた作品。

さすがは恋人同士より仲がいいと言われていた姉弟。
お互いが共鳴しあっているみたいですね。




演奏は見事で、特にチャン・ユジンさんと彼女の先生、ミリアム・フリード先生の音色の表現は信じられないほど幅広く、色とりどりの音色のパレットを自在に操る様は、とても一挺のヴァイオリンで弾いているとは思えないほどでした。 

第3楽章Romanzeはとろけそうに叙情的で美しく、終楽章では、弟フェリック・メンデルスゾーンの最後の弦楽四重奏曲第6番にも通ずる激しさが...




チャン・ユジンさんは2016年、第6回仙台国際音楽コンクールで優勝しているので、日本にもファンが多いと思います。

ユジンさんの 魅力は、ふんわりした愛らしい見た目を裏切る、決してお客様に媚びない選曲と、マイナーな室内楽にも真摯に取り組む超本格派であること。 

おまけに性格もとっても良い❤

演奏後、She is superb! (彼女は最高!)とお客様が口々につぶやいていました。




少し前になりますが、ユジンさんの2015年の映像を紹介します。
ステージから舞台裏に戻ってきたときのユジンさんが見られる、ちょっとほっこりするビデオです。 張り詰めた空気が一瞬だけ緩む瞬間。





Good Shepherd Presbyterian Churchの会場の客席数は100〜120程度。
集客見込みによって多少変えているようです。

室内楽を聴くなら100席程度の会場が好みなのですが、ここも演奏家との距離が近く、 とても贅沢な気分になれます。

終演後には演奏家と話をして帰られるお客様も。



チケット価格も$10から$25まで。
ニューヨークは基本的にすべての物価が日本より高いですが、コンサートチケットだけは日本より安いです。

素晴らしいアーティストたちが世界中から集まって熾烈な競争が行われている ことと、パトロン&サポーターが多いからでしょう。

聴き手にとっては大変ありがたい街です。 

Jupiter Symphony Chamber Players

スケジュールを見てみると、ときどきびっくりするくらい有名なアーティストさんの名前も見られますし、マイナーな室内楽を聴ける貴重な機会が盛りだくさん。

今後も楽しみです。


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2017年2月6日
ジュピター・シンフォニー・チェンバー・プレイヤーズ
@Good Shepherd Presbyterian Church, NY 

Fanny’s Belrin Salon 

Roman Rabinovich piano 
Miriam Fried violin 
Yoo Jin Jang violin 
Dimitri Murrath viola 
Mihai Marica cello 
Vadim Lando clarinet  

J.S.バッハ:インヴェンションより抜粋(2台ヴァイオリン) 
モシュレス:幻想曲、変奏曲とフィナーレ Op.46 
ファニー・メンデルスゾーン:弦楽四重奏曲 変ホ長調 
ベートーヴェン:ピアノ三重奏曲 第6番 変ホ長調 O.70-2


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