2016年8月29日月曜日

カタコンベで現代音楽!メシアン作曲《アーメンの幻影》


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こんにちは、MUCHOJIです。
初めて当ブログをご訪問の方は、「はじめに」をお読みください。
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カタコンベで現代音楽!

8月25日  Christina & Michelle Naughton
メシアン:2台のピアノのための作品《アーメンの幻影》  
@Crypt Chapel of The Church of the Intercession

「クラシックコンサート予習講座〜現代音楽の楽しみ方」に
お越しいただいた方、 ありがとうございました!

予習講座でメシアンとその作品の特徴について
30分ほどお勉強したあと、コンサート会場へ。

アッパーマンハッタン、West 155th Streetの高台の上の
広くて美しい墓地の傍にある Crypt Chapel of The Church of the Intercession



このコンサートシリーズ、ワインとチーズ、フルーツ、スナックなどを手に
おしゃべりを楽しんだ後で、コンサートを聴くスタイル。
ワインとチーズも教会の中庭の回廊でいただきます。
暗くてすでに雰囲気たっぷり。 



ニューヨークでも日本と同じようにクラシック音楽のコンサートでは、
シニアのお客様が中心ですが、The Crypt Sessionsのシリーズは
お客さんのほとんどが、普段はSoHo, NoLItaで見かけるような
20〜30代のお洒落な若い方々。

演奏される曲目は、宗教曲であったり、現代曲であったり、と
決して聴きやすい音楽ではないのに、これだけ若いお客さんが集まるのは、
やはりこの場の特別感でしょうか。リピーターも多いです。 

さて、ずらりと並ぶお墓の脇を通って、
いよいよ地下のカタコンベに移動します。

今日のピアノの配置はこんな感じ。



天井を外したピアノが、両脇の客席に挟まれるように中央に。
地下であることに加え、当日は夕方に夕立がありました。
湿気がすごくて調律師さんの苦労が忍ばれます… 
そもそもピアノを運び入れるのには地上からの急な階段しかない...!

プログラムノートも麻の紐で結ばれた巻き物になっていて、凝っています。 

本日の曲目は、メシアン作曲《アーメンの幻影》。
2台ピアノのための作品です。

作曲者のオリヴィエ・メシアンは、20世紀、フランスの作曲家。
フランス、アヴィニヨン生まれで、
父ピエールはシェイクスピアの全作品を仏訳した英語教師、
母セシル・ソーヴァージュは女流詩人と、芸術家気質の家に育ちます。

こどもの頃にクリスマスプレンゼントで、
ドビュッシーのオペラ《ペレアスとメリザンド》を贈られて
それをぼろぼろになるまで勉強したことは、
彼の作曲家としての人生を決めるきっかけになったと言われています。

《アーメンの幻影》は、ドイツ軍の占領下の真っ只中、
1943年のパリで初演された作品。
1941〜42年のドイツのゲルリッツでの捕虜生活から解放されてから
初めて書いた作品です。

ちなみに捕虜生活の中で書き上げたのが、
あの有名な《世の(時の)終わりのための四重奏曲》。

2台ピアノの作品ですが、2人のピアニストの掛け合いが
まるでお互いに挑みかかるように激しく、圧倒的な流れの音楽。 

第1ピアノは、彼の2番目の奥さんでピアニストのイヴォンヌ・ロリオが、
第2ピアノはメシアン自身の演奏で初演されました。 

曲は7楽章構成。 メシアンは情熱的・献身的なローマカトリック教徒。
彼の作品は全てその信仰と関連しています。

パリ高等音楽院を卒業してから、60年以上、
パリのサントリニティー教会でオルガニストを務めたことに
深い喜びを感じていたそう。

1 創造のアーメン
   /  "Amen de la création" 
2 星たちと環のある惑星のアーメン
   /  "Amen des étoiles, de la planète à l'anneau" 
3 イエスの苦しみのアーメン
   /  "Amen de l'agonie de Jésus" 
4 願望のアーメン
   /  "Amen du désir" 
5 天使たち、聖人たち、鳥たちの歌のアーメン
   /  "Amen des anges, des saints, du chant des oiseaux" 
6 審判のアーメン
   /  "Amen du jugement" 
7 成就のアーメン
   /  "Amen de la consommation"  


それぞれの楽章のストーリーが、
絵のように音に描写されている曲なのですが、
カタコンベの薄暗い空間の中で聴くといっそうその世界に惹き込まれます。



1. 創造のアーメン
[「創造の主題」が暗黒の深淵から、着実に厳粛に聖歌のように生起する。光が徐々に差し込んで広がっていき、鐘の音のような和音がクレッシェンドしながら鳴り響き、光の中で輝いている。] 

低音のくぐもった響きの中から、徐々に中・高音が現れて、
暗い闇の中に光が差してきます。

ぼんやりとした音が渦巻く暗い世界から徐々に音楽が明確になっていく様が、
何かが徐々に姿を現していくようで、まさに「創造」の音楽。


2. 星たちと環のある惑星のアーメン
[止まることない宇宙の回転、猛烈なエネルギ-のダンス。複数の環を持つ土星、他の惑星、止まることなく回転している星星が、全て創造主に対して賛同のアーメンを叫んでいる。]

一般的に私たちがイメージする、キラキラ輝く「星」のイメージとは
随分異なります。

シャープで重量感のあるモティーフが執拗に繰り返され、
むしろ宇宙の中で、巨大なエネルギーをもつ星たちが、
爆発を繰り返しながら回転を続けていく様を現したような音楽。

ゴツゴツした厳つい低音の響きに対して、
雪の結晶のように輝く音が散りばめられた高音が対照的。

モティーフの対位法的な展開が宇宙の「秩序」のようなものを
形作っているように聴こえます。


3. イエスの苦しみのアーメン
苦痛に満ちた突き刺さるような旋律と不協和な響きが
イエスの苦しみを表しています。

イエスの血と汗のしたたり、と言われるバスの単音の響きは
寒気がするほど。

そして終盤の突然の沈黙。会場が恐ろしいほどに静まり返ります。


4. 願望のアーメン
[神に捧げた愛が、魂から湧き起こるアーメンを喚起する。神との結合への欲望。調和的なパラダイスの深い優しさと静けさ、栄光に満ちた成就への激しく情熱的な人間の願望]

うっとりと夢の中でまどろんでいるような部分と、
2人のピアニストがお互いに挑みかかるように前のめりになって奏する
激しい部分とが対照的。


5. 天使たち、聖人たち、鳥たちの歌のアーメン
[透きとおるように、力むことなく、ピュアな歌によって、神への賞賛のアーメンを天使と聖人が唱える。ナイチンゲール、ブラックバードなど、鳥たちの愉悦的な歌声のコーラス] 

ユニゾンで聖歌を思わせるメロディーが歌われたあとに、
「創造の主題」が奏でられます。

ナイチンゲールのさえずり、ブラックバードのはばたき、などが
色彩豊かに聴こえて、とても描写的な音楽。

鳥の専門家でもあり、77種類もの鳥が登場する《鳥のカタログ》を
作曲したメシアンの得意とする作曲法の一つを感じられる楽章です。


 6. 審判のアーメン
[最も短い楽章。"Let it beは審判の形になる。神の愛を拒否したものに対するこの判決の厳しさは、リズミカルな厳格さ、透明性と全体的な明晰さをもって演奏される]

重苦しく、法廷で打ち鳴らされる槌のような無慈悲な響きの
和音の繰り返しに、戦慄を覚えます。

判決の峻厳さを表した音楽。


7. 成就のアーメン
[キリストにおいて約束された世界が成就した至福の時。神の最後の"Let it be"。「創造の主題」に回帰して、子供のような歓喜の波が次か次へと変形していく]

生気と輝きに満ちた「創造の主題」が繰り返し奏されますが、
ここでは、面食らってしまうほどに、調性的。

これまでの楽章に現れてきた、不協和な響き、厳つい和音、
断続的でシャープな旋律、と打って変って
調性的にメロディアスに演奏することは、
歓喜の歌を表すのにとても効果的だと思いますが、
あまりにも喜びに満ちていて、裏読みしたくなるほど。 

講座に参加してくださった方が、
「最後の調性的なところはとても明解でしたが、
実は、神の世界ってそんなに単純ではないかも…」
とおっしゃっていたのが印象的でした。

その明るさの裏には何かあるかも… なるほど、
そういう解釈もあるかもしれません。

こうしてお互いの気づいた点を話したり共有できるのが、
講座を開いたり何人かで一緒の音楽を聴きにいく醍醐味だと思います。

会場の雰囲気と相まって、まさしく、日本では絶対味わえない経験。
2台のピアノの上を極彩色の音が飛び跳ねているようで、
でも、その中に、近寄りがたい怖さ、超越的な存在を感じさせるものがありました。



ユニークな空間と、素晴らしい音響、雰囲気たっぷりの音楽。
隠れ家的な場所で、ニューヨークならではの体験をしたい方には
おすすめのコンサートシリーズです。




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2016年8月25日 
 Christina & Michelle Naughton 
@Crypt Chapel of The Church of the Intercession 

メシアン:2台のピアノのための作品《アーメンの幻影》  



● Link
  The Crypt Sessions: Christina & Michelle Naughton

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2016年8月16日火曜日

第3回講座「ハイドン&モーツァルト」の模様 / 第4回講座「ベートーヴェン」のご案内

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こんにちは、MUCHOJIです。
初めて当ブログをご訪問の方は、「はじめに」をお読みください。
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マンハッタンの片隅でこじんまりと開催する音楽の勉強会。
第3回の音楽史&音楽理論 講座を開催しました。
真夏日にもかかわらず、お越しくださった皆様、ありがとうございます。
テーマは古典派の代表的な作曲家、ハイドンさんとモーツァルトさん。

様々な音源を聴きながら、茶目っ気たっぷりのハイドンに親しみを感じたり、
モーツァルトは本当に神童だったのかな?と考えてみたり。 

モーツァルトが若いころにイギリス、イタリア、ドイツ、フランスなど
様々な国を旅行し、これらの国々で用いられていた多くの様式や習慣を
吸収したのに対して、ほぼ生涯に渡ってハンガリーの貴族の家に仕え 、
ウィーン周辺の伝統にみずからの規範を見出したハイドン。

私たちがクラシック音楽、という言葉からイメージするような
「古典派(クラシック) 」音楽のルールや形式を、
ハイドンは、ほとんと同じ地で過ごしながら作り上げたということに
改めて驚きを覚えます。

今回は、ピリオド奏法とモダン奏法で、
ハイドンとモーツァルトの様々な作品の聴き比べもしました。

ピリオド奏法とは、端的にいえば、使用する楽器の点でも、奏法の点でも、
作曲された当時の流儀にたち返ろうというスタイル。

ヨーロッパでは、はっきりとは特定できませんが、
1930年代からそうした運動の傾向はあったそうで、
1980年代には著名なオーケストラでもピリオド奏法が
取り入れられる傾向が見られるように なりました。

今回の講座では、わかりやすいように、
20世紀後半のいわゆる「巨匠スタイル」の奏法の音源と、
ピリオド奏法の音源を聴き比べましたが、
参加者の方々のコメントがとても興味深かったです。

巨匠スタイルの演奏はゴージャスで
「高級ハムのCMに使われてそう(笑)」とか。

この日は真夏日だったので、
「夏にはピリオド奏法の軽快でさっぱりした演奏がいいけど、
秋の夜長に一人で聴くなら巨匠スタイルかな… 」とか。

ピリオド奏法による演奏は、
当時使われていた楽器を再現した楽器を使っていることも多いので、
見た目にも楽しめますし、
楽器の制約が生み出される音楽とどのように関わっていたのかを
想像することもできます。

さまざまな分野の専門家である参加者の方も多いので、
講座が終わった後もみなさんでつきぬ音楽談義を続けられるのも
楽しみのひとつです。

次回の第4回、8月27日(土)はいよいよベートーヴェン。
講座は全8回なのに、一人で1回分を占めてしまうベートーヴェン!
でもそれくらいしても足りないほど、
彼の音楽史に残した業績は大きいのです。

モーツァルトがハイドンから少なからず影響を受けたように、
ベートーヴェンからもハイドンに多くを学んでいます。 

お金はなく、しかし大望を抱いてボンの街からウィーンに向かっていた
ベートーヴェンの出納簿の記入事項のひとつに、
「ハイドンと私のためのコーヒー用」として
25グロッシェンの支出の記録があります。

この記述は、2人の出会いを想像させるロマンを
十二分に備えていますよね。 

第九交響曲だけじゃない、
みなさんの知らないベートーヴェンについても
いろいろ取り上げていこうと思いますので、
興味のある方はぜひお越しいただければ幸いです。

美術と音楽の関わりに興味をお持ちの方は、
8月20日(土)の特別講座「音楽×美術 〜様式史からたどる二つの芸術」 
もお楽しみに。

音楽と美術の2つの分野が、どのように発展し、
相互に関わってきたのかを、
美術史がご専門の磯谷有亮さんとの対談形式でお話しいたします。

8月20日(土)の特別講座はお席が残り少なくなっておりますので、
ご興味ございましたらお早めにお問い合わせ頂ければ幸いです。
                                                                                
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♪ 音楽史&音楽理論 講座 ♪ (シリーズ講座)

 ◇講師:日比美和子

 ◇概要
クラシック音楽は一見、敷居が高そうに見えますが、
実はしくみがわかるとグッと楽しめるようになります。
この講座では、作曲家の人生や性格が伝わるエピソード、
作曲当時の社会状況や歴史的な背景、音楽を形作る音楽理論… といった、
実際の音楽の「裏側」にあるさまざまな要素・要因についてお話ししながら、
おすすめのクラシック音楽の音源を紹介していきます。
シリーズ講座ですが、1回ごともそれぞれまとまった内容でできているので、
ご都合や興味関心に合わせてお越しください。

第4回音楽講座のご案内はこちら  
 ↓

第4回:ベートーヴェン 〜古典派からロマン派へ〜


 ◇開催日
8月27日(土)

 ◇時間
14:00~15:40頃

 ◇場所
お問い合わせを頂いた方にメールでお知らせいたします。

◇会費
大人:$10

◇お申し込み方法
下記メールにてお問い合わせください。
登録フォームをお送りいたします。

お問い合わせメールアドレス:muchojiあっとyahoo.com
「あっと」を「@」に変えてメールをお送りください。



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◇全8回シリーズで予定される内容

第1回:6月5日(日)
 音楽室に肖像の無い作曲家たち 〜中世・ルネサンスの音楽〜

第2回:7月3日(日)
 ヴィヴァルディ、バッハ、ヘンデル 〜ルネサンスからバロック音楽へ〜

第3回:8月14日(日)
 ハイドン&モーツァルト 〜古典派の音楽〜

第4回:8月27日( 土)
 ベートーヴェン 〜古典派からロマン派へ〜

第5回:
 ブラームス、シューマン、メンデルスゾーン 
   〜ドイツ・ロマン派の巨匠たち〜

第6回:
 ドヴォルザーク、チャイコフスキー、ストラヴィンスキー 
   〜国民楽派とロシアの音楽〜

第7回:
 ドビュッシー、ラヴェル、サティ 
   〜フランス印象主義とその後〜

第8回:
 20世紀の音楽とアメリカの音楽 〜クラシック音楽の未来〜




※ 講義の内容は予告なく変更されることがあります。ご了承ください。


皆様のご参加をお待ちしています!




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2016年8月13日土曜日

第3回 ♪ 音楽史&音楽理論 講座 ♪ のご案内 ハイドンはいたずら好き?モーツァルトは本当に神童だった?


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こんにちは、MUCHOJIです。
初めて当ブログをご訪問の方は、「はじめに」をお読みください。
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ニューヨーク、マンハッタンの片隅でこじんまりと少人数で開催している
音楽鑑賞しながらの、クラシック音楽の勉強会。

明後日8月14日(日)に、第3回の ♪ 音楽史&音楽理論 講座 ♪ を開催します。
貴重なお休みの日にもかかわらず、足を運んでくださる皆様、
ありがとうございます!

今回のテーマは、古典派の時代。
ハイドンやモーツァルトに焦点を当てます。

ハイドンは実はいたずら好きだった!?
モーツァルトは本当に神童だった?
など、いろんな疑問に答えながら、作曲家のエピソードの紹介を交えながら、
作品の解説をします。
一緒に音楽を聴きながら、本当にそうなのか検証してみませんか?

また、古典派の時代には楽器が大きく発展しました。
現在のピアノの前身にあたるフォルテピアノや、
フルート、クラリネット... といったさまざまな管楽器が
大きく変化したのもこの時代。

改良された楽器の美しい音色に魅せられた作曲家は、
どんな曲を書いたのか?
当時の楽器が、できたこと・できなかったこと、と
実際に作られた曲を聴いてみると、「なるほど!」
と思う瞬間がたくさんあるはずです。

理論編では、ソナタ形式、ロンド形式といった古典派を代表する
形式を勉強します。
これがわかると、コンサートで聴いている曲がいつ終わるかがわかるので、
寝ていいタイミングと起きるタイミングがわかるかも!?(笑)

毎回恒例の、同じ曲の聴き比べ大会も行います。
聴き比べをすると、クラシック音楽の楽しみ方が、まさに演奏の違いにある、
ということが実感できて、楽しくなりますよ!

第3回はまだ若干お席に余裕があります。
ご都合よろしければお越しください。

さらに次のお知らせ。

8月20日(土)には、特別講座「音楽×美術 〜様式史からたどる二つの芸術」
を開催します。
音楽と美術の2つの分野が、どのように発展し、相互に関わってきたのかを、
美術史がご専門の磯谷有亮さんとの対談形式でお話しいたします。
ぜひ皆様のお越しをお待ちしています。


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♪ 音楽史&音楽理論 講座 ♪ (シリーズ講座)

 ◇講師:日比美和子

 ◇概要
クラシック音楽は一見、敷居が高そうに見えますが、
実はしくみがわかるとグッと楽しめるようになります。
この講座では、作曲家の人生や性格が伝わるエピソード、
作曲当時の社会状況や歴史的な背景、音楽を形作る音楽理論… といった、
実際の音楽の「裏側」にあるさまざまな要素・要因についてお話ししながら、
おすすめのクラシック音楽の音源を紹介していきます。
シリーズ講座ですが、1回ごともそれぞれまとまった内容でできているので、
ご都合や興味関心に合わせてお越しください。

第3回音楽講座のご案内はこちら  
 ↓

第3回:ハイドン&モーツァルト 〜古典派の音楽〜

 ◇開催日
8月14日(日)

 ◇時間
14:00~15:40頃

 ◇場所
お問い合わせを頂いた方にメールでお知らせいたします。

◇会費
大人:$10

◇お申し込み方法
下記メールにてお問い合わせください。
登録フォームをお送りいたします。

お問い合わせメールアドレス:muchojiあっとyahoo.com
「あっと」を「@」に変えてメールをお送りください。



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◇全8回シリーズで予定される内容

第1回:6月5日(日)
 音楽室に肖像の無い作曲家たち 〜中世・ルネサンスの音楽〜

第2回:7月3日(日)
 ヴィヴァルディ、バッハ、ヘンデル 〜ルネサンスからバロック音楽へ〜

第3回:8月14日(日)
 ハイドン&モーツァルト 〜古典派の音楽〜

第4回:8月27日( 土)
 ベートーヴェン 〜古典派からロマン派へ〜

第5回:
 ブラームス、シューマン、メンデルスゾーン 
   〜ドイツ・ロマン派の巨匠たち〜

第6回:
 ドヴォルザーク、チャイコフスキー、ストラヴィンスキー 
   〜国民楽派とロシアの音楽〜

第7回:
 ドビュッシー、ラヴェル、サティ 
   〜フランス印象主義とその後〜

第8回:
 20世紀の音楽とアメリカの音楽 〜クラシック音楽の未来〜




※ 講義の内容は予告なく変更されることがあります。ご了承ください。


皆様のご参加をお待ちしています!




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2016年8月8日月曜日

タングルウッド音楽祭の楽しみ方


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こんにちは、MUCHOJIです。
初めて当ブログをご訪問の方は、「はじめに」をお読みください。
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タングルウッド音楽祭。

ニューヨークから車で約2時間半、バークシャー地方にある街で、
6月下旬から9月上旬までボストン交響楽団や
ボストン・ポップスの演奏が楽しめる夏のイベントです。

コンサートホールの一番後ろは扉が開いて外につながっているので、
ホール席で聴いても、外で聴いても。

ここの醍醐味は夏ならではの芝生席!という人も多く、 みなさん
気持良い青空の下、ごろーんとしながら音楽を楽しんでいます。

せっかくなので、プレリュードコンサートはセイジ・オザワホールの芝生で、
本編はメインホールの中で聴くことにしました。

セイジ・オザワホール。



芝生で聴いていると、グースがやってきました。
鳥さんもいい音楽を聴きにきたのでしょう。
現代音楽になったら去って行きましたが… お気に召さなかったのか…(笑) 



可動式の後方扉は演奏が終わるとすぐに閉じられます。
湿気がすごいですからね… メンテナンスが大変そうなホールです。






ホール内から外の芝生席を逆に見るとこんな感じ。



この日のメインのコンサートが行われるKoussevitzky Music Shed でも、
ホールを取り囲むように芝生にみなさんお気に入りのリラックスグッズを持って
やってきます。


料理、キャンドル、花瓶にお花まで...
パーティレベルに持ってくる人もいます。
アメリカには、家にいるときの感覚をそのまま再現しようという人が
多い気がします。


メインのコンサートの最初は、ジョン・アダムズ「Harmonielehre」(初演:1985)
このタイトルにピンと来たら、音楽通さんです。

アルノルト・シェーンベルクが1911年に書いた著作「和声論Harmonielehre」
へのオマージュ作品。
だからシェーンベルクの著作と同じタイトルが付けられています。

シェーンベルクは1911年に西洋音楽の和声理論に関する著作を発表しますが、
皮肉なことに、シェーンベルク自身はその時期、
まさに和声の領域をこえて、12音技法を展開させようとしていた時でした。

12音技法は調的な中心を欠いた音楽。
シェーンベルクを敬いつつも、アダムズは調的中心を持たない音楽を
否定する作曲家、というのは面白いです。

この曲は初めて生演奏で聴きましたが、
オーケストラの中で音の波がうねっているのがわかる、
ダイナミックな作品でした。アダムズらしく打楽器が大活躍。

2曲目はショパンのピアノ協奏曲第2番。
ピアノ・ソロはイングリット・フリッター。
2000年のショパン国際ピアノコンクール第2位の
アルゼンチン生まれの女性ピアニストさん。

南米のピアニストというと、マルタ・アルゲリッチのような
情熱的な演奏(人生も!?)を想像するかもしれませんが、
イングリット・フリッターのショパンはそよ風のようで、
タングルウッドの森の中を心地よく流れて行きました。 

最後はリヒャルト・シュトラウスの交響詩
「ティル・オイゲン・シュピーゲルの愉快ないたずら」

中世の伝説的ないたずら者。
ティルが様々な人々をからかったり、いたずらをしたりして、
最後に捕まって絞首台にかけられてしまうまでのストーリーを、
さまざまな楽器のモティーフがあらわしているちょっと滑稽な曲。 



< ストーリー >

 「むかし一人の陽気な道化者がいた。―その名は、ティル・オイレンシュピーゲル。―彼はひどいいたずら者であった。―新たな行動に ―待て、偽善者よ ―跳べ、馬を市場の女たちの中へ。― 一足で7マイルも行けるという長靴をはいて逃げる。―こっそり姿を隠す。―僧衣を身につけ情熱と道徳を説く。―だが大きな足もとからならず者の姿が見える。―宗教を嘲笑したことで死におびえる。―騎士となったティルは美しい娘と丁寧な挨拶を交わす。―彼は求愛する。―きれいなバスケットは拒絶を意味した。―全人類への復讐を誓う。―俗物学者の動機。―ティルは、俗物学者に2、3の途方もない命題をだしてそこを去り、彼らを当惑させる。―遠くで顔をしかめる。―ティルの俗謡。―ティルの裁判。―ティルは他人事のように口笛を吹く。―梯子をのぼり絞首台にかけられ、呼吸はとまり、最後のもだえ。ティルの運命は終わった。」


夜のコンサートは8時に開演して10時くらいに終わるので、
終わる頃には満天の星空。
周りが森で暗いだけあって、星がとても綺麗です。 
芝生に寝そべって星空を眺めながらクラシック音楽というのもオシャレですね。
夜は冷えるので上着の持参をおすすめします。

近くにはアメリカを代表する画家、ノーマン・ロックウェル美術館があって
こちらもとても気持ちよい場所。





私たちは翌日さらに北に足を伸ばして、MassMOCA 美術館へ。
古い工場を改装したマサチューセッツ州のコンテンポラリーアートの美術館。






近くには、The Clarkというとても美しい建物の美術館もあります。

タングルウッド周辺は自然に溢れていて
リラックスしながら美術や音楽を楽しめる街がたくさんあります。

機会があればぜひ訪れて頂けたらと思います。



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2016年8月6日 
@Koussevitzky Music Shed, Tanglewood

J.アダムズ:Harmonielehre
ショパン:ピアノ協奏曲第2番 ヘ短調 Op.21
R.シュトラウス:交響詩「ティル・オイレン・シュピーゲルの愉快ないたずら」





2016年8月6日土曜日

ニューヨーク日本人理系勉強会さんで発表させて頂きました!


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こんにちは、MUCHOJIです。
初めて当ブログをご訪問の方は、「はじめに」をお読みください。
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先週ニューヨーク日本人理系勉強会さんで発表させていただきました。
テーマは数学と音楽との関係について。

JASS ニューヨーク日本人理系勉強会

ニューヨークに来て以来、いつも感じていたのは、
私の研究は音楽研究者の方と話している時よりも、
理系の研究者の方と話している時の方が、
興味を持って頂きやすいということ。

数学を応用した音楽理論を、理系研究者の方々が
どのように感じてくださるのか興味があったので、
発表の機会を頂けたことに感謝です。

導入でピュタゴラス音律の話をしたあと、
十二音技法とピッチクラス集合論について説明させていただきました。
そして音楽を数学的に作曲したり、分析したりする例を紹介しました。

後半ではピッチクラス集合論の問題点とその解決方法を提案しました。
先週発表した内容は、私の博士論文以外ではほとんど公開していないので、
そのエッセンスだけ、このブログで紹介しようと思います。

ここから先の内容は、口頭発表以外では、
今のところほぼこのブログでだけで公開するお話しです。

ピッチクラス集合論は、数学の集合論を応用し、
音を数字に変換し、数字の組み合わせによって音楽を分析します。
ドは0、ド#は1、レは2…といった形ですね。 





その利点は、作品が持つ様々なコンテクストを考慮に入れることよりも、
音程そのものに内在する意味の解読に重きを置くことより、
伝統的な音楽分析の慣習に捉われない方法で
作品の構造を明らかにできることです。

この特性により、調性音楽で書かれていない音楽(無調音楽)をも
分析することができます。

無調音楽は、調性音楽に存在する調の中心が曖昧であったり、
存在しなかったりすることから、
それまでの伝統的な分析方法では分析することが困難です。

こうした無調音楽を分析するには、新しい方法が必要でしたが、
そのひとつとして登場したのがピッチクラス集合論です。

しかし、ピッチクラス集合論や変換理論、
といった数学を応用した音楽理論の問題点は、
分析をする際のグループ化が音楽的に意味のある方法で
行われないことが多い点。 

たとえば、ピッチクラス集合論の分析では、
この譜面の例のように、丸でグループ化して、
それぞれの集合の関係性を分析します。



しかし、よくみると、不思議な音の選び方をしていることがあります。
特に5小節目にある4つの音からなる集合。

これは、旋律や和音を無視して、
分析者が望む結論を導くために音を選んでいるように見えます。

もっとわかりやすく、国語で説明すると、
 「ここではきものをぬいでください」という文章があったとすると、

⒈ ここで、はきものを、ぬいでください。
⒉ ここでは、きものを、ぬいでください。

のどちらかになりますよね。

3.ここ、ではきものをぬ、いでください。

とは言わないでしょう。
上述の第5小節目のグループ化は、
この、意味や文脈を無視したグループ化と同じことをしているわけです。

調性音楽は、旋律・和声といった調性音楽固有の
音楽的な性質に基づいて音楽的意味のあるグループ化を行っています。

無調音楽でも無調固有の音楽的性質に基づいて
音楽的に意味のあるグループ化を行うべき、というのが私の主張です。

つまり、無調音楽の中にも音楽的に意味のある区切りを見つける、
ということが目的となります。

では、どうやって?
その方法として提案できるのが、

 ① 暗意/実現モデル (Narmour 1990; Narmour 1992)
 ② ポジション探索 (Butler and Brown 1981; Butler 1983; Butler 1989)

の2つを組み合わせる方法です。
この理論の詳細についての説明は別の機会に譲りますが、
この理論はどちらも調性に基づく理論です。

なぜ無調音楽になぜ適用するのか?
と考えられる方もいらっしゃるかもしれません。

でも、たとえ無調音楽が調性音楽とは異なるものを
生み出そうとして作られたとしても、
嫌い嫌いは好きのうち、と同じで、
調性音楽を意識せざるを得ないのです。

だから、調性音楽が耳で聴いてわかるもので音楽的性質を
つくっているならば、それと同じように、
耳で聴いてわかるものから無調固有の音楽的性質を見つけられるはず、
と仮定しました。

 ① 暗意/実現モデル (Narmour 1990; Narmour 1992) の詳細を
ここでは説明するのは難しいのですが、端的に言うと、
暗意/実現モデルは「音楽的に意味のある区切り」になりやすい場所と
なりにくい場所を見つける、区切りのパターン検索として使うことができます。

暗意/実現モデルのみを使って無調音楽を分析した場合にも、
ある程度音楽的に意味のある区切りは見つけることができます。

しかし、そこが区切りであるという根拠が弱かったり、
区切りであると断定しにくかったりする部分も多いです。

そこでもうひとつの、ポジション探索を行うことで、
そこが区切りであることの裏付けを強くできるのでは、と考えました。

ポジション探索の考え方は、調性音楽の長調・短調だけが持つ特徴*1を
手掛かりに一種の「区切り」を見つける方法です。

ポジション探索の考え方によれば、
すべての長調と短調だけがもつ特徴に基づいて、
人間は音楽を聴いているときに、
自分が今何調を聴いているのかを判定しています。
それは、一つの音階の中に現れる特定の距離が出現する頻度です。

ハ長調の中に異なる距離(音程)が何回ずつ出てくるかを
数え挙げてみましょう。

ドとレの間はド#がありますから、距離(音程)は2です。
ミとファの間は黒鍵がありませんから、距離(ステップ)は1です。
ドとミの間は距離(ステップ)は4です。
レとファの間は距離(ステップ)3です。
ドとファの間は距離(ステップ)5です。
最後、最も大きいファとシの間の距離(ステップ)は6です。




このそれぞれが何回ずつ出てくるかを数え上げると、
じつはすべて出現する回数が異なります。

特に、距離1はたったの2回、距離6は1回しか現れないので、
もしこの距離(音程)が曲の中で出てきたら、
それは調を判定する手がかりになるわけです。

この、ポジション探索を暗意/実現モデルと組み合わせて使うと、
無調音楽の分析においても音楽的に意味のある区切りを見つけることが
できるのですが、その分析例はまた別の機会に書きたいと思います。





 *1:厳密には、長調・短調のピッチクラス集合7-35以外に
もう一つこの特徴を持つ集合がある。




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2016年8月1日月曜日

特別講座「音楽×美術 〜様式史からたどる二つの芸術」


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こんにちは、MUCHOJIです。
初めて当ブログをご訪問の方は、「はじめに」をお読みください。
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特別講座を開催します!

「音楽×美術 〜様式史からたどる二つの芸術」 

前回の音楽講座に来てくださった参加者の方から、
「音楽と美術が同じ時代にどういう関係にあったのかがわかると面白いですよね」
というご意見をいただきました。

様々な専門家が集まるニューヨークでは、
こうしたときにすぐに専門家さんに相談できるのが素晴らしいところ。
美術史がご専門の礒谷有亮さんが早速、スピーカーを
快く引き受けてくださったので、音楽と美術の特別企画を開催いたします!

Winslow Homer: The Studio (1867)


 ◇概要

音楽と美術。ニューヨークではどちらの芸術にも触れる機会がたくさんあります。
ですが、この二つの分野がどのように発展し、
相互に関わってきたのかを考えることはあまりないのではないでしょうか。
そこで今回は音楽史講座の特別企画として、講師二人の対談形式で、
ルネサンスから20世紀に至るまでの音楽・美術の交錯の歴史をたどります。

各時代の代表的な作品を聴く/見ることを通じて時代様式の変遷を追い、
二つの芸術分野の歴史的展開が一致していたのか、異なっていたのか、
あるいは全く別の関係を築いていたのか、
考える機会を提供できればと思います。

縦と横、両方の繋がりを関連させて見ることで、
芸術はもっと面白くなります。

これまで音楽史講座に参加されていた方はもちろん、
美術や歴史全般に興味のある方のご参加をお待ちしています。


◇講師:礒谷有亮・日比美和子


◇開催日
8月20日(土)


◇時間
14:00~15:45頃


◇場所
お問い合わせを頂いた方にメールでお知らせいたします。


 ◇会費
無料です。
ポットラック形式ですので、何か1品お持ち頂きますようお願い申し上げます。 


◇お申し込み方法
下記メールにてお問い合わせください。
お問い合わせメールアドレス:muchojiあっとyahoo.com
「あっと」を「@」に変えてメールをお送りください。


 ◇お願いと注意事項
自宅を開放して行うため、約10名の定員制となっております。
どうぞご了承ください。
お申し込みの時点で定員に達していた場合は、
その旨を返信メッセージでご連絡いたします。


では、皆様にお会いできるのを楽しみにしています!




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