2016年2月22日月曜日

ちょっと中性的?! 中国人チェロ奏者 イークン・シュウ Yi Qun Xu


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こんにちは、MUCHOJIです。
初めて当ブログをご訪問の方は、「はじめに」をお読みください。
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2016年2月19日
イークン・シュウYi Qun Xuチェロリサイタル

昨日聴講した、エッシャー弦楽四重奏団によるマスタークラスの受講団体の中で、
ジュリアード音楽院の弦楽四重奏団でチェロを弾いていた
イークン・シュウYi Qun Xuさん。
その翌日にリサイタルがあったので聴いてきました。

中国生まれで、アントニオ・ヤニグロ国際チェロコンクール第1位(2008年)
ASTA国際ソロコンクール第1位(2010年)などを受賞。
いまはジュリアード音楽院の学部生で、オライオン弦楽四重奏団メンバーの、
ティモシー・エディの元でチェロを勉強中。

しかし弦楽四重奏のマスタークラスで
ヤナーチェクの「クロイツェル・ソナタ」を弾いて、
翌日にソロリサイタルってハードな学生生活。 

まだ二十歳前後の若い中国人の女の子だけど、
マスタークラスのときにすごく芯の強そうなところがとっても印象的でした。
外見を含めてとても個性的なんですよ、これが。 
妙に惹かれて聴きに行ったら、いい意味で驚かされました。

黒のパンツスーツ。 化粧っ気ゼロ。
ボーイッシュなショートカットを七三分けにしてハードムースで固めた子が出てきて
チェロを弾くわけです。
身体の線は細いから女の子ってわかるけど、とても中性的。 
男の子になりたかったのかな。
余談ですが、チェロを弾くときのフォームは「女性を抱くように」というのが
理想的だと言われていたりします。
男性チェリストが休憩するときにチェロの肩に手を回すしぐさは
ほんとうに恋人を慈しんでいるみたい。

曲目は、ベートーヴェンのチェロソナタ 第4番 作品102-1
チャイコフスキーの「ロココ風の主題による変奏曲 作品33」
休憩を挟んでブラームスのチェロソナタ 第2番 ヘ長調 作品99

ベートーヴェンのチェロソナタ 第4番は、
会場に行く途中に寄った郵便局で手間取ったせいで第3楽章からしか聴けず。
アメリカの郵便局ほどいらいらするところはありません。
たった1通の配達記録付きの郵便物を送るのに、
40分以上列を作って待たされるんだから。

チャイコフスキーのロココ風の主題による変奏曲は、
弾き込んだ安定感がまだなくて、高音域の音程が不安定な部分も見られたけど、
プログラム後半のブラームスのチェロソナタ 第2番の演奏にびっくり。

華奢で中性的な雰囲気の子が出てきたのに、
そのチェロから奏でられる音楽は、
チェロであることを忘れてしまうような、
肉声で語るような濃厚などっしりしたブラームス。 

チェロソナタ第2番は、ブラームスがお気に入りの避暑地のひとつ、
アルプスの景観も美しいスイス・トゥーン湖畔ホーフシュテッテンで書かれた曲。
トゥーン湖畔に滞在するようになったのは、1886年以降なので
50歳後半、ブラームス後期の作品。

ブラームスはそもそも彼にトゥーン湖畔を勧めた、
ベルンに住む詩人ヴィトマンを週末毎に訪ね、室内楽に興じていました。

ブラームスのチェロソナタの面白いところは、聴き比べてみると
若いころに都会で書かれた第1番の方がどこか田舎くさくて、
晩年に田舎で書かれた第2番の方が、都会的な雰囲気を持っていること。

第2番は、全般的に内面的で重々しい雰囲気の作品の多いブラームスにあって、
珍しく軽快で明るい性格を持つという作品。
といっても内容的な深さに欠けるということではなく、
晩年に向かう老成した巨匠による書法はますます洗練されて、
結果的には伝統的な形式にこだわらず、かなり自由な表現で書かれています。

ブラームスの音楽を多くの若い演奏家が苦手とするのは、
彼の内面性が大人にならないと理解し難いようなものであることと、
一見明るさに溢れていてもその奥にある一筋縄ではいかない
彼の心の内を感じ取る難しさが理由のような気がします。

だからたまに若手演奏家のブラームスの良い演奏に出会えるととても嬉しい。

イークン・シュウさんの演奏は、
この演奏にすべてをかけているような集中力と緊張感に満ちていて、
思わず手を握りしめて聴いてしまいました。

やたら技術力が高いけど音楽的には面白味に欠ける中国人若手演奏家
も少なくないのですが、彼女は自分の表現方法を
(特定の作品については)すでに持っています。

若い演奏家の演奏っていいなと思うのは、
若いならではの必死さが音楽をとてもいい方向に持っていっている瞬間に出会えるとき。

聴衆はせいぜい30人くらいしかいなかったのですが、
終わった瞬間「ブラボー!」があちこちから飛び出しました。 

その瞬間にほろりとこぼれた笑顔にまだ初々しい少女の面影があって
ほっこり。

きっと数ヶ月、数年単位で彼女の音楽は劇的に変わっていくと思うので、
またいつか彼女の演奏を聴いてみたいです。


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2016年2月19日 
イークン・シュウ チェロリサイタル 
@ジュリアード音楽院 Morse Recital Hall 

ベートーヴェン:チェロソナタ 第4番 作品102-1 
チャイコフスキー:ロココの主題による変奏曲 作品33 
ブラームス:チェロソナタ 第2番 ヘ長調 作品99


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