2016年1月28日木曜日

漆原朝子(ヴァイオリン)&ベリー・スナイダー(ピアノ)


♪--------------------♪--------------------♪--------------------
こんにちは、MUCHOJIです。
初めて当ブログをご訪問の方は、「はじめに」をお読みください。
-----------♪------------------♪--------------------♪-----------
  
2015年7月6日
漆原朝子(ヴァイオリン)&ベリー・スナイダー(ピアノ)

漆原朝子さんは10代から天才少女として頭角を現し、
巨匠ルドルフ・ゼルキンが自ら選んだ生涯最後の共演者。

若い頃から活躍していただけあって、
「昔、朝子さんの演奏を聴いてすごく良かったからまた聴きたくてね
という常連さんもちらほら。

朝子さんといえば、いぶし銀のような音色と言われ、
ベートーヴェン全曲演奏会のような活動を通じて
正統派の深い音楽を追求することで高い評価を得てきました。

朝子さんのどこか悲哀を感じさせる音色は
ヴァイオリンが美しく泣(鳴)いているよう。

私はシューマンのソナタ3曲が収録されているCDを聴いて
彼女の世界に惹き込まれました。

今回は全国11箇所を回るリサイタルツアーで、
共演歴の長いベリー・スナイダーさん(ピアノ)と。

スナイダーさんは初めての共演の時に
「とても繊細な方で、調弦のAの音をすごく丁寧に、
思い入れのある美しい音でくださって、
その瞬間にすっと空気が変わります。
それは今でも変わりません。」と
朝子さんが絶大な信頼を置くピアニスト。

平日の午後だからこその低価格で聴ける、
名手の手によるコンサート。
宗次ホールのギフト券を購入するとおまけでついてくる
プレゼントチケット2枚で無料で聴けてしまうのもすごい。
それを使うのにこのコンサート狙って来た音楽愛好家も
たくさんいました。

前半は、イギリスの作曲家エルガーの作品。

エドワード・エルガーといえば「威風堂々」「愛の挨拶」など、
クラシック音楽に詳しくない方でも必ずどこかで
耳にしたことのあるような名旋律で大成功を収めました。

しかし、それ以外の曲となると極端に演奏される機会が
少ないのが現状。

まず最初に演奏された「朝の歌」は本来、
ピアノとヴァイオリンのための2つの小品(作品15)の中の1曲。
ではもう1曲はもちろん「夜の歌」なのです。

ピアノの伴奏のリズムパターンはほとんど「愛の挨拶」と
同じですが、メロディーはもっと憂いや陰りを帯びた
ちょっと大人っぽい雰囲気。
朝子さんの憂いを帯びた音色のヴァイオリンにぴったり。

それもそのはず、「朝の歌」は「愛の挨拶」の約10年後、
18の作品。

エルガーは売れっ子になるまで、
音楽教室でレッスンをして生計を立てていました。

この「朝の歌」と同時期に書かれた「エニグマ変奏曲」
によって一躍脚光を浴びます。

エルガーの下積み時代における最後の作品でもあるわけです。

エルガーはヴァイオリンとピアノのための美しい小品を
多く残しましたが、1891年に書かれた「ラ・カプリシューズ」
もその一つ。

「気まぐれな女」という意味ですが、
曲を聴けば、そこに愛情が込められているのがわかるでしょう。

揺れる女心を表現しつつ、そんな気まぐれが可愛くて仕方ない
というような愛情たっぷりの小品。

いずれにしても、非凡なメロディーメーカーの才を持った
エルガーの魅力が、十分感じ取れる作品たちでした。

当日、私がもっとも楽しみにしていたのは、
エルガーのヴァイオリンソナタ。

1918年に作曲された、エルガー唯一のヴァイオリンソナタ。
世はストラヴィンスキーやベルクに代表される
前衛的な作品の全盛期でしたが、
エルガーは昔を懐古しながら、
敢えてブラームスやフランクのような古典的で
ロマンティックな作風で書き上げました。

しかし、ソナタ完成前に献呈予定だったエルガーの良き理解者、
マリー・ヨシュアが亡くなったことから、
第2楽章の表情豊かな中間部の旋律を、
どこか淋しさを感じさせる回想のように第3楽章に挿入。

まばゆいほどに躍動的で開放感に満ちた第3楽章の中に、
一瞬の陰りとロマンティックな薫りを残します。

漆原さんのしっとりしたヴァイオリンと常にやさしく寄り添う
スナイダーさんのピアノ。

あまり知られていない曲ですが、
素朴さと愛らしさ、わずかな湿り気、
そうしたこの作品の魅力が300席の小さなホールの隅々にまで
広がって行くのが肌で感じられました。


----------
2015年7月6日  @宗次ホール
漆原朝子(ヴァイオリン)&ベリー・スナイダー(ピアノ)

エドワード・エルガー
 朝の歌
 ラ・カプリシューズ
 ヴァイオリンソナタ ホ短調 Op.82
リヒャルト・シュトラウス
 歌劇「薔薇の騎士」より ワルツ (プシホダ編)
  ヴァイオリンソナタ 変ホ長調 作品18

2016年1月27日水曜日

知られざる名曲発掘 スイーツタイ「無」名曲コンサート


♪--------------------♪--------------------♪--------------------
こんにちは、MUCHOJIです。
初めて当ブログをご訪問の方は、「はじめに」をお読みください。
-----------♪------------------♪--------------------♪-----------

2015年9月21
百武由紀トリオ 「無」名曲コンサート

 “知られざる名曲に目が無い3人の腕利きが集って
なにやら秘密の相談をしていると思ったら、
こんな企画が飛び出しました。
そもそもヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、各1人による
弦楽トリオ(三重奏)という編成自体が珍しい。

ならば名曲コンサートの逆を行く「こんな曲があったのか!」と
好奇心くすぐる演奏会を開催しようというのがこのコンサート。

「スイーツタイ名曲コンサート」というタイトルが
宗次ホールの「ランチタイム名曲コンサート」をもじっていることに
気づいてにやりと笑えるのは名古屋の方だけかもしれませんが

「無名曲」といっても知らない曲ばかりでつまらない
なんてことはありませんでした。

プログラムには誰もが知る名曲の珍しい編成での編曲も。
J.S.バッハの「ゴルトベルク変奏曲」と言えば、
まず20世紀の奇才ピアニスト、グレン・グールドの演奏を
思い浮かべる方も多いと思います。

作曲家の指示を守らない型破りで独特の演奏や、
エキセントリックな行動になど話題に事欠かなかったグールド。

彼が弾く「ゴルトベルク変奏曲」の名盤に心動かされた一人が
アゼルバイジャン生まれのヴァイオリニスト、シトコヴェツキーです。

ピアニストの母がグールドのモスクワ来演時に
世話をしていたことなどから、
子どもの頃からグールドを敬愛していたシトコヴェツキーは、
グールドの死の3年後にヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、
のための三重奏版「ゴルトベルク変奏曲」を書きます。

ピアノと異なり、長く残る余韻と絡み合う3つの弦楽器の綾が
なんともいえぬ心地良さをもたらす編曲。
天国的な美しさの「アリア」は何度聴いても心地よい。

しかし、この日のコンサートのテーマは「無名曲」。
後半に演奏された、ハンス・クラーサこそ、
まさに今回のコンサートのテーマ「無名曲」に
最も相応しい作曲家でしょう。

1899年プラハ生まれ。父親はチェコ系で弁護士、
母親はユダヤ系のドイツ人。
この出生こそが後の彼の人生を決定付けることになります。

ベルリンに留学したり、そこで出会った師匠、
フランスの作曲家であるルーセルの影響を受けて、
パリにもしばしば赴き、フランス音楽のエッセンスを吸収します。

プラハに戻り、児童合唱のためのオペラ「ブルンジバル」を書き
一目置かれる存在に。

しかしこのオペラの完成直後、1942年8月にナチスに拘束され、
チェコとドイツの国境に程近い、
テレジン強制収容所に送られてしまうのです。

意に沿わない前衛芸術やユダヤ人芸術家の作品を
「退廃芸術」として取り締まったナチス。

しかし、テレジンの収容所に収容された多数の芸術家たちは
過酷な環境の中にあっても人間としての尊厳を守るべく、
創作活動を続けていたそうです。

なんとナチス当局は、こうした芸術家たちの活動を
「収容所が以下に文化的な場所であるか」をPRするための
プロパガンダに利用し黙認していたそう。

芸術活動と政治は常に強く結びついているもの。
それを強く感じさせられる話です。

皮肉なことに、クラーサにとってこの収容所で過ごした約2年間が、
もっとも生産的な時期でした。

当日演奏された弦楽三重奏曲のための1曲「舞曲」も
その時代に書かれた作品のひとつ。

異様なほどのハイテンションな音楽は、
もしかしたら狂気に脅かされた人間の躁状態を反映しているのかも、
と思えるくらい。

クラーサはこの作品を書いた直後、
194410月にアウシュヴィッツへ移送され、
ガス室でその生涯を閉じたと伝えられています。

まさに時代に翻弄された作曲家。
別の時代に生まれていれば、
より多くの優れた作品を世に送り出したのか、
あるいは、限られた時間であったからこそ、
名曲を生み出すことができたのか。

歴史に「もし」は存在しないけれども、
こうしたエピソードを持つ作品を聴くときには、
それを考えずにはいられません。




----------
2015年9月21日  @宗次ホール
百武由紀 弦楽トリオ スイーツタイ「無」名曲コンサート 

ヴィオラ:百武由紀
ヴァイオリン:平光真彌
チェロ:荒井結子


シューベルト(1797-1828):弦楽三重奏曲 第1番 変ロ長調 471 (未完)
J.S.バッハ(1685-1750)/D.シトコヴェツキー編:ゴルトベルク変奏曲 BWV988より <抜粋>
クラーサ(1899-1944):弦楽三重奏のための舞曲
ドホナーニ(1877-1960):弦楽三重奏のためのセレナーデ ハ長調 Op.10


2016年1月26日火曜日

数年後にまた聴きたい 成長し続けるシューマン・クァルテット

♪--------------------♪--------------------♪--------------------
こんにちは、MUCHOJIです。
初めて当ブログをご訪問の方は、「はじめに」をお読みください。
-----------♪------------------♪--------------------♪-----------

20141127
シューマン・クァルテット、満足度の高い好演でした。


シューマン・クァルテットは、
第一ヴァイオリン/エリック・シューマン(長男)、
第二ヴァイオリン/ケン・シューマン(次男)、
チェロ/マーク・シューマン(三男)の三兄弟が中心となって
2007年にケルンで結成された弦楽四重奏団。



ヴィオラは前回宗次ホールに出演した際は、
日本人の後藤彩子さんでしたが、今回は新メンバー。
エストニア出身のリザ・ランダルさん。


2014年大阪国際室内楽コンクール第2部門で第2位となった
ノトス・クァルテット(ピアノ四重奏)の創立メンバーで、
シューマン・カルテットの新ヴィオラ奏者として引き抜かれたそう。


そういえば、大阪国際室内楽コンクールに行った時に耳にしたのですが、
ノトス・クァルテットはコンクールへのエントリー直前に
リザ・ランダルさんが引き抜かれたので新メンバーを探さなければならず、
コンクールに出場できるかも危うかったとか。
室内楽の世界は狭い。


過去の録音からは長男エリック・シューマンが突出してうまいという
感じを受けていましたが、今回聴いてまず驚いたのが、
それぞれの奏者の楽器がものすごくよく鳴っていること。


細部まで徹底して音色を工夫していることがわかり、
それでいてくどくなく、非常に清潔感のある演奏。

音楽に真摯に向き合っていることがわかります。


新メンバーのヴィオラ リザ・ランダルさんのヴィオラが
これまたとてもよく響いて、ヴィオラが活躍するショスタコーヴィチ1番は
もちろん、「あれ?モーツァルトって弦楽四重奏曲でも
こんなに素敵にヴィオラ書いていたんだ...」と
モーツァルトの弦楽四重奏曲の良さを再認識しました。


たしかにモーツァルトはプライベートではヴァイオリンより
ヴィオラを好み、カルテットでもヴィオラを担当していました。


まだ若手のシューマン・クァルテットがベートーヴェンの大作 弦楽四重奏曲第14番に
どのように取り組むのか、とても興味がありました。


1826年の春先、ベートーヴェンがその死まで1年を切った頃に書きあげられた作品。

12番、第15番、第13番と来て、この第14番という順番で書かれています。

この第14番では7楽章という前代未聞の異形の弦楽四重奏曲に至り、
しかも全ての楽章はほぼ間を置かず連続して演奏されます。


一見脈絡の無さそうな音楽展開も、晩年になって研究を重ねた対位法に基づいて
細部に至るまで吟味された音が配されて、
その有様は数ある弦楽四重奏曲の中でも孤高の存在と評されています。


作曲者が自信作として世に送り出したことは書簡から読み取ることができます。

そして、死後行われた初演時に居合わせたシューベルトは、感極まって、
「この曲の後で作曲家は何が書けようか?」と口走ったといわれています。


ちなみに、ベートーヴェンはこの曲を、
甥のカールを軍士官に採用するよう取り計らった
シュトゥッターハイム男爵に献呈しています。


実は本来すでにほかの友人に献呈されていたにもかかわらず、
ベートーヴェンはこの世を去る2週間前に、
「自らの死後、誰が彼の面倒をみるのか」と心配し、
ある種溺愛していた甥のカールを守るために、
シュトゥッターハイム男爵へとこの曲を献呈することに変更したのです。


ベートーヴェンにとって最晩年の会心の作を献じるほどの恩義。
それが甥の就職に関することだったということには、
彼の人間らしさが如実に現れている気がします。


シューマン・クァルテットが真摯に音楽に向き合う姿勢は、
14番の演奏でも変わらず。丁寧でいて大きな音楽。
妙な小細工は一切なく、ひたすら真面目に。
「いま」のシューマン・クァルテットの音楽。

数年後に、同じ演奏を聴いたら絶対に違ったものになっているでしょう。

さらに大きくなった彼らを聴く機会にまた巡り会いたい、
そう思わせるクァルテットでした。





---------
20141127日  @宗次ホール
シューマン・クァルテット

第1ヴァイオリン:エリック・シューマン
第2ヴァイオリン:ケン・シューマン
ヴィオラ:リザ・ランダル
チェロ:マーク・シューマン




モーツァルト:弦楽四重奏曲 21 ニ長調 K.575
ショスタコーヴィチ:弦楽四重奏曲 第1番 ハ長調 作品49
ベートーヴェン:弦楽四重奏曲 14 嬰ハ短調 作品131





【Soka University のコンサートホールがすごい!】

♪--------------------♪--------------------♪ こんにちは、MUCHOJIです。 初めて当ブログをご訪問の方は、 「 はじめに 」をお読みください。 -----------♪------------------♪---...