2016年1月26日火曜日

数年後にまた聴きたい 成長し続けるシューマン・クァルテット

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こんにちは、MUCHOJIです。
初めて当ブログをご訪問の方は、「はじめに」をお読みください。
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20141127
シューマン・クァルテット、満足度の高い好演でした。


シューマン・クァルテットは、
第一ヴァイオリン/エリック・シューマン(長男)、
第二ヴァイオリン/ケン・シューマン(次男)、
チェロ/マーク・シューマン(三男)の三兄弟が中心となって
2007年にケルンで結成された弦楽四重奏団。



ヴィオラは前回宗次ホールに出演した際は、
日本人の後藤彩子さんでしたが、今回は新メンバー。
エストニア出身のリザ・ランダルさん。


2014年大阪国際室内楽コンクール第2部門で第2位となった
ノトス・クァルテット(ピアノ四重奏)の創立メンバーで、
シューマン・カルテットの新ヴィオラ奏者として引き抜かれたそう。


そういえば、大阪国際室内楽コンクールに行った時に耳にしたのですが、
ノトス・クァルテットはコンクールへのエントリー直前に
リザ・ランダルさんが引き抜かれたので新メンバーを探さなければならず、
コンクールに出場できるかも危うかったとか。
室内楽の世界は狭い。


過去の録音からは長男エリック・シューマンが突出してうまいという
感じを受けていましたが、今回聴いてまず驚いたのが、
それぞれの奏者の楽器がものすごくよく鳴っていること。


細部まで徹底して音色を工夫していることがわかり、
それでいてくどくなく、非常に清潔感のある演奏。

音楽に真摯に向き合っていることがわかります。


新メンバーのヴィオラ リザ・ランダルさんのヴィオラが
これまたとてもよく響いて、ヴィオラが活躍するショスタコーヴィチ1番は
もちろん、「あれ?モーツァルトって弦楽四重奏曲でも
こんなに素敵にヴィオラ書いていたんだ...」と
モーツァルトの弦楽四重奏曲の良さを再認識しました。


たしかにモーツァルトはプライベートではヴァイオリンより
ヴィオラを好み、カルテットでもヴィオラを担当していました。


まだ若手のシューマン・クァルテットがベートーヴェンの大作 弦楽四重奏曲第14番に
どのように取り組むのか、とても興味がありました。


1826年の春先、ベートーヴェンがその死まで1年を切った頃に書きあげられた作品。

12番、第15番、第13番と来て、この第14番という順番で書かれています。

この第14番では7楽章という前代未聞の異形の弦楽四重奏曲に至り、
しかも全ての楽章はほぼ間を置かず連続して演奏されます。


一見脈絡の無さそうな音楽展開も、晩年になって研究を重ねた対位法に基づいて
細部に至るまで吟味された音が配されて、
その有様は数ある弦楽四重奏曲の中でも孤高の存在と評されています。


作曲者が自信作として世に送り出したことは書簡から読み取ることができます。

そして、死後行われた初演時に居合わせたシューベルトは、感極まって、
「この曲の後で作曲家は何が書けようか?」と口走ったといわれています。


ちなみに、ベートーヴェンはこの曲を、
甥のカールを軍士官に採用するよう取り計らった
シュトゥッターハイム男爵に献呈しています。


実は本来すでにほかの友人に献呈されていたにもかかわらず、
ベートーヴェンはこの世を去る2週間前に、
「自らの死後、誰が彼の面倒をみるのか」と心配し、
ある種溺愛していた甥のカールを守るために、
シュトゥッターハイム男爵へとこの曲を献呈することに変更したのです。


ベートーヴェンにとって最晩年の会心の作を献じるほどの恩義。
それが甥の就職に関することだったということには、
彼の人間らしさが如実に現れている気がします。


シューマン・クァルテットが真摯に音楽に向き合う姿勢は、
14番の演奏でも変わらず。丁寧でいて大きな音楽。
妙な小細工は一切なく、ひたすら真面目に。
「いま」のシューマン・クァルテットの音楽。

数年後に、同じ演奏を聴いたら絶対に違ったものになっているでしょう。

さらに大きくなった彼らを聴く機会にまた巡り会いたい、
そう思わせるクァルテットでした。





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20141127日  @宗次ホール
シューマン・クァルテット

第1ヴァイオリン:エリック・シューマン
第2ヴァイオリン:ケン・シューマン
ヴィオラ:リザ・ランダル
チェロ:マーク・シューマン




モーツァルト:弦楽四重奏曲 21 ニ長調 K.575
ショスタコーヴィチ:弦楽四重奏曲 第1番 ハ長調 作品49
ベートーヴェン:弦楽四重奏曲 14 嬰ハ短調 作品131





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