2016年1月11日月曜日

新年に聴きたい ブラームスのピアノ三重奏曲全曲

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こんにちは、MUCHOJIです。
初めて当ブログをご訪問の方は、「はじめに」をお読みください。
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誰しも特定の季節に聴きたくなる音楽があると思います。

年末だったらベートーヴェンの「第九」交響曲? 
チャイコフスキーの「くるみ割り人形」?
お正月だったらヨハン・シュトラウス親子の華麗なワルツの数々?

私が新年に聴きたくなるのは、ブラームスのピアノ三重奏曲全曲。

ブラームスは生涯に3曲のピアノ三重奏曲を書いていますが、
年をとってから改定を加えていたことからも、
彼の生涯がすべて凝縮されて詰め込まれたような、3曲だと思います。

聴きながらブラームスになりきって、過去に思いを巡らします。

それはまるでふかーい水底に静かに沈んでいくようで、その沈みゆく自分の周りに、
喜び、悲しみ、後悔、懺悔、葛藤、救い、など
ブラームスが人生に感じたあらゆる感情が断片的に浮かんでは消えていく、
そんな音楽体験ができる3曲だと思います。

ブラームスのピアノ三重奏曲には、もちろん優れた音源がたくさんありますが、
中でも最近、「秀逸!」と思ったのは、
「ハンブルク・トリオ」のブラームスピアノ三重奏曲全曲録音。

ハンブルク・トリオは2013年結成の比較的新しいピアノ・トリオ。

ドイツ、ハンブルクを拠点にベルリン、カッセル、マインツなど、
ドイツ各地で活動していますが、
ブラームスのピアノ三重奏曲全曲演奏会が新聞などで高い評価を受け、
今では各地の音楽祭などで大人気だそう。

とはいっても日本では無名。正直、私は初耳でした。

彼らは2015年6月に初来日しましたが、私が聴いたのは、
6月7日、名古屋の宗次ホール公演。
この際、全3曲を収録したCDが販売されました。

もちろん生演奏の臨場感はたまりませんが、このCDがまたとてもイイ! というわけで、
2016年の新年はこのCDを聴くことから始めることにしました。

宗次ホールは、毎日のように様々な演奏家からの沢山のサンプル音源が
送られてくるところだそうですが、聴いてみて耳に止まるものは、
実はあまり多くないそう。

その中で、企画担当者が思わぬ掘り出し物!と興奮したのが、
ハンブルク・トリオが送ってきたブラームスのピアノ三重奏曲第1番の音源。

私もその音源を聴いたとき、驚きました。

音楽の喜びに満ち溢れ、湧き上がるロマンに呑みこまれ、 思わず息をのむような演奏…

後で分かったことですが、なんとその演奏は彼らにとって初舞台のライブ録音とのこと。
「え、ライブ?しかも初の?」とにわかには信じがたい完成度なのです。

その音源を聴いてから、そのコンサートの開催を心待ちにしていました。

6月7日、当日最初に演奏されたのは、ブラームスの円熟期に書かれ、
「1音符たりとも過不足無く、すべてが聴き手に理解しやすく書かれている」
と言われる簡潔明瞭な第2番。
ハンブルク・トリオのキレの良い演奏は、より作品にみずみずしさを与えていました。

次に1886年に書かれ、ブラームスの後期の作品に属する第3番。
老成した巨匠が、饒舌を控えた書法を用いながら、
豊かな叙情性をたっぷり盛り込んだ作品を、豊かな音楽性で表現する見事な演奏。

最後に、シューマン夫妻のもとに入り浸り、
夫人クララへの思慕を深めていた20歳の頃にスケッチに取り掛かり、
58歳になってから大改作を経て出版された第1番。

厳しい自己批判が故に、19歳以前の作品を全て 自らの手で破棄し、
作品を書き直すと初版を破棄していたブラームスですが、
この曲は珍しく初版が残っています。

改作に臨んだものの、若き青春の思い出の込められた作品は、
捨てるに忍びなかったのでしょうか。

ハンブルク・トリオの演奏は、この初々しい感情の残る楽想と、
何かを達観したかのような巨匠の熟達した構築性と溢れるロマンティシズムとが
見事に調和した作品を、生き生きと鮮やかに映し出す名演でした。


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2015年6月7日 @宗次ホール
ハンブルク・トリオ ブラームス ピアノ三重奏曲全曲演奏会

ヴァイオリン:塩貝みつる
チェロ:ヴィタウタス・ゾンデキス
ピアノ:エバーハルト・ハーゼンフラッツ




       

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