♪--------------------♪--------------------♪--------------------
こんにちは、MUCHOJIです。
初めて当ブログをご訪問の方は、「はじめに」をお読みください。
-----------♪------------------♪--------------------♪-----------
こんにちは、MUCHOJIです。
初めて当ブログをご訪問の方は、「はじめに」をお読みください。
-----------♪------------------♪--------------------♪-----------
2015年9月21日
百武由紀トリオ 「無」名曲コンサート
“知られざる名曲”に目が無い3人の腕利きが集って
なにやら秘密の相談をしていると思ったら、
こんな企画が飛び出しました。
そもそもヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、各1人による
弦楽トリオ(三重奏)という編成自体が珍しい。
ならば“名曲”コンサートの逆を行く「こんな曲があったのか!」と
好奇心くすぐる演奏会を開催しようというのがこのコンサート。
「スイーツタイ“無”名曲コンサート」というタイトルが
宗次ホールの「ランチタイム名曲コンサート」をもじっていることに
気づいてにやりと笑えるのは名古屋の方だけかもしれませんが…
「無名曲」といっても知らない曲ばかりでつまらない
なんてことはありませんでした。
プログラムには誰もが知る名曲の珍しい編成での編曲も。
J.S.バッハの「ゴルトベルク変奏曲」と言えば、
まず20世紀の奇才ピアニスト、グレン・グールドの演奏を
思い浮かべる方も多いと思います。
作曲家の指示を守らない型破りで独特の演奏や、
エキセントリックな行動になど話題に事欠かなかったグールド。
彼が弾く「ゴルトベルク変奏曲」の名盤に心動かされた一人が
アゼルバイジャン生まれのヴァイオリニスト、シトコヴェツキーです。
ピアニストの母がグールドのモスクワ来演時に
世話をしていたことなどから、
子どもの頃からグールドを敬愛していたシトコヴェツキーは、
グールドの死の3年後にヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、
のための三重奏版「ゴルトベルク変奏曲」を書きます。
ピアノと異なり、長く残る余韻と絡み合う3つの弦楽器の綾が
なんともいえぬ心地良さをもたらす編曲。
天国的な美しさの「アリア」は何度聴いても心地よい。
しかし、この日のコンサートのテーマは「無名曲」。
後半に演奏された、ハンス・クラーサこそ、
まさに今回のコンサートのテーマ「無名曲」に
最も相応しい作曲家でしょう。
1899年プラハ生まれ。父親はチェコ系で弁護士、
母親はユダヤ系のドイツ人。
この出生こそが後の彼の人生を決定付けることになります。
ベルリンに留学したり、そこで出会った師匠、
フランスの作曲家であるルーセルの影響を受けて、
パリにもしばしば赴き、フランス音楽のエッセンスを吸収します。
プラハに戻り、児童合唱のためのオペラ「ブルンジバル」を書き
一目置かれる存在に。
しかしこのオペラの完成直後、1942年8月にナチスに拘束され、
チェコとドイツの国境に程近い、
テレジン強制収容所に送られてしまうのです。
意に沿わない前衛芸術やユダヤ人芸術家の作品を
「退廃芸術」として取り締まったナチス。
しかし、テレジンの収容所に収容された多数の芸術家たちは
過酷な環境の中にあっても人間としての尊厳を守るべく、
創作活動を続けていたそうです。
なんとナチス当局は、こうした芸術家たちの活動を
「収容所が以下に文化的な場所であるか」をPRするための
プロパガンダに利用し黙認していたそう。
芸術活動と政治は常に強く結びついているもの。
それを強く感じさせられる話です。
皮肉なことに、クラーサにとってこの収容所で過ごした約2年間が、
もっとも生産的な時期でした。
当日演奏された弦楽三重奏曲のための1曲「舞曲」も
その時代に書かれた作品のひとつ。
異様なほどのハイテンションな音楽は、
もしかしたら狂気に脅かされた人間の躁状態を反映しているのかも、
と思えるくらい。
クラーサはこの作品を書いた直後、
1944年10月にアウシュヴィッツへ移送され、
ガス室でその生涯を閉じたと伝えられています。
まさに時代に翻弄された作曲家。
別の時代に生まれていれば、
より多くの優れた作品を世に送り出したのか、
あるいは、限られた時間であったからこそ、
名曲を生み出すことができたのか。
歴史に「もし」は存在しないけれども、
こうしたエピソードを持つ作品を聴くときには、
それを考えずにはいられません。
----------
2015年9月21日 @宗次ホール
百武由紀 弦楽トリオ スイーツタイ「無」名曲コンサート
ヴィオラ:百武由紀
ヴァイオリン:平光真彌
チェロ:荒井結子
シューベルト(1797-1828):弦楽三重奏曲 第1番 変ロ長調 D471 (未完)
J.S.バッハ(1685-1750)/D.シトコヴェツキー編:ゴルトベルク変奏曲 BWV988より <抜粋>
クラーサ(1899-1944):弦楽三重奏のための舞曲
ドホナーニ(1877-1960):弦楽三重奏のためのセレナーデ ハ長調 Op.10
0 件のコメント:
コメントを投稿