2016年1月14日木曜日

人間味溢れるニューヨーク生まれのホルショフスキ・トリオ

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こんにちは、MUCHOJIです。
初めて当ブログをご訪問の方は、「はじめに」をお読みください。
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ニューヨーク生まれのピアノトリオ「ホルショフスキ・トリオ」を紹介。
2011年結成直後に米国30箇所以上の演奏会に出演しています。

ホロヴィッツと並び20世紀最も偉大なピアニストのひとり
ホルショフスキ最後の弟子となった相沢吏江子(ピアノ)、
既に2度グラミー賞にノミーネートされているジェシー・ミルス(ヴァイオリン)、
ノーベル賞受賞の化学者の父を持ち、ダデラス弦楽四重奏団の創立メンバーの
ラーマン・ラマクリシュナン(チェロ)で構成されています。

ピアノの巨匠ミエチスラフ・ホルショフスキは
東京お茶の水のカザルスホールに招かれて87年に初来日。

すでに当時95才でしたが、パブロ・カザルスの生涯を通じての
かけがえのないパートナーであったことから
「ホールにカザルスの名前が付いて いるなら行かなくては」
と言って快諾したと言います。

ピアノの相沢吏江子さんは内田光子の推薦を得て何と13歳でカザルスホールにデビュー。
直後にカーネギーホールとケネディー・センターで協奏曲を弾いた天才少女。
聴いて頂きたい日本人女性ピアニストの筆頭格です。

ホルショフスキのもとで学び始めたのはカーネギーホールなどでのデビューの翌年。
ホルショフスキは96歳でした。

当時中学生の相沢さんに対して、毎回レッスンで彼女が学びたい曲が見つかると、
楽譜を事前に数種類用意し、版によって異なる記載方法などを
すべて付き合わせて一緒に解釈していこう、という
常に勉学を怠らず、音楽に対して謙虚な態度を持っていたそうです。

101歳で亡くなる、その1ヶ月前までレッスンしていたというホルショフスキ。
老いてもなお果てることなき向上心を持ち、常に謙虚に、音楽に真摯に向かう姿。

3人はホルショフスキの暖かく喜びに溢れた音楽には勿論、
このような彼の誠実で謙虚な人柄からも強いインスピレーションを受けて、
2011年にホルショフスキ未亡人の全面的な支援を受けてトリオを結成しました。

ホルショフスキ・トリオは2014年に初来日。
私は2014年2月25日名古屋の宗次ホール公演を聴きました。

面白いのは、このトリオの選曲。
ドヴォルザークのピアノ三重奏曲は、かの有名な「ドゥムキー」ではなく第3番、
ベートーヴェンは、「大公」ではなく「幽霊」という、
"Most Famous"をあえて外した"No.2"を持ってきていること。

何より、ほとんど演奏される機会に出会えない、
アメリカの作曲家レナード・バーンスタインが10代の頃に書いた、
珍しいピアノ三重奏曲がプログラムに含まれていること。

レナード・バーンスタインといえば、
ブロードウェイ・ミュージカル「ウェストサイド・ストーリー」の作曲者でおなじみ。
大指揮者ブルーノ・ワルターの代役として指揮した公演により一躍脚光を浴び、
後にニューヨーク・フィルハーモニック常任指揮者を務めるなど、
アメリカが生んだ最初の国際的指揮者でもあります。

バーンスタインが遺した数少ない室内楽作品の中でも、
まさに“知る人ぞ知る”という言葉がふさわしいこのピアノ三重奏曲は
1937年、彼がまだハーバードで学んでいた19歳の時に書かれたものです。

まず、後のバーンスタインの作品と比べると、
その不協和音の大胆な使用は耳に驚きを与えます。

一方で新古典主義的な作風でもあり、
そして彼の後の作品に特徴的なポピュラー音楽の要素もふんだんに散りばめられています。

明らかにプロコフィエフの「3つのオレンジへの恋」の影響が感じられる
モティーフを含めて、プロコフィエフ的な諧謔性、
ジャズやポップスの要素が巧みに織り込まれていて、
バーンスタインのチャーミングな面が感じられます。

プログラム前半のメイン、ベートーヴェンのピアノ三重奏曲 第5番「幽霊」。
この作品が作曲されたのは、彼がエルデーディ伯爵夫人のもとに滞在していた1808年。
同年には交響曲第5番と第6番が相次いで完成するなど、
まさに「名作の森」のまっただ中です。

神秘的、幻想的な響きの第2楽章を持ち、
この独特の雰囲気ゆえに「幽霊」の愛称で呼ばれ、親しまれています。

最初の部分のスケッチは、同じくニ短調の悲劇「マクベス」の草稿に続いて書かれており、
両者は「不穏な存在」という共通の脈絡上にあるという点がとても興味深いです。

そしてプログラム最後は、ドヴォルザークのピアノ三重奏曲 第3番。
途方もなく膨大な時間をかけて作曲された作品です。

1883年2月4日から3月31までの期間に主要部分が作曲されましたが、
その後第2楽章と第3楽章は入れ替えられます。

さらに1883年10月の初演までに徹底的に補筆が繰り返され、
第1楽章の展開部では補筆されなかったのは71小節中15小節だけだったといいます。

この作品の作曲に先立つ1882年12月14日に母を亡くしたドヴォルザーク。
悲しみを湧き起こる民族意識の高まりに織り交ぜて作曲されたことがうかがえます。

ホルショフスキ・トリオの演奏でとても面白いと思ったのは、
まず、各演奏者が驚くほど近くに寄って、密集して演奏していること。
そのせいもあるのか!? 音楽の方向性の一体感がとにかく素晴らしい!

あまり名前の知られていないトリオですが
(そもそもピアノトリオというジャンル自体クラシック音楽愛好家の中でも
人気が高いとは言えないのだが)、機会があればぜひお聴き頂きたいトリオです。

ニューヨーク生まれのホルショフスキ・トリオは
毎年年初にブルックリンのBargemusicに出演しているほか、
定期的に公演や録音を行っています。


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2014年2月25日 @宗次ホール
ホルショフスキ・トリオ

ヴァイオリン:ジェシー・ミルス
チェロ:ラーマン・ラマクリシュナン
ピアノ:相沢吏江子


ベートーヴェン:ピアノ三重奏曲 第5番 ニ長調 Op.70-1「幽霊」
バーンスタイン:ピアノ三重奏曲 Op.2
ドヴォルザーク:ピアノ三重奏曲 第3番 ヘ短調 Op.65

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